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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-09『フォーミュラ・プロジェクト』
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第三章:明日へ光を繋げるために/01

 第三章:明日へ光を繋げるために



 店を飛び出した三人が向かった先は、川沿いにある遊歩道だった。

 そんな遊歩道の傍に、遥のバイク……カワサキ・ニンジャZX‐10Rと、戒斗とアンジェを乗せたZ33型の日産・フェアレディZが滑り込んでくる。

「戒斗さん、こっちです!」

 先んじてバイクを降りて駆けていく遥に従い、Zを降りた戒斗とアンジェの二人も遊歩道へと続く階段を駆け下りていく。

 そうして降りていった先、遊歩道で三人が目の当たりにしたのは――――逃げ惑う人々と、それを襲う二体の怪人だった。

 ――――バンディット。

 遥たち神姫が打ち倒すべき敵、異形の怪人だ。今日はそれが二体同時に現れ、この遊歩道に居合わせた人々を襲っていた。

 名はそれぞれリザード・バンディットとグリズリー・バンディット。前者は赤褐色の暗い色調の身体が目を引く、爬虫類のような顔つきをした怪人だ。名前通りのリザード……トカゲということか。

 そして後者もまた、名前のままの見た目だった。

 グリズリー……熊の一種の名を冠したそのバンディットは、もう完全に二足歩行する熊といった感じの見てくれだ。身体全体を薄茶色の分厚い毛皮で覆っているからか、余計に熊そのものに見えてしまう。

 だが、同時にその風貌は普通の熊よりも更に凶暴で、そして凶悪。生理的な嫌悪感を感じさせる見た目は、熊とは一線を画した異形……まさに怪物と呼ぶに相応しいだけの気色の悪いものだった。

「遅かったか……!」

 そんな二体のバンディット、リザードとグリズリーの傍には既に何人もの人間が倒れ、血溜まりの中に沈んでいる。

 どうやら、既に犠牲者は出てしまっているようだ。喰われたのか、それとも単に襲われただけか……ズタズタに引き裂かれた遺体が幾つも、二体の怪人たちの足元に転がっていた。

 戒斗はそんな光景を見て歯噛みしつつ、すぐさまジャケットの懐に手を突っ込めば、吊るしていたショルダーホルスターから左手で自動拳銃――――愛用のシグ・ザウエルP226・マーク25を抜く。

 抜き放ったそれを連射し、戒斗は二体のバンディットを牽制する。

 幾らP.C.C.S謹製の特殊徹甲弾、NXハイパーチタニウム弾芯の対バンディット弾といえど、所詮は九ミリの拳銃弾だ。威力は心もとなく、バンディット相手には精々怯ませる程度の効果しか期待できないが……しかし、それでいい。

「よし……!」

 そうして戒斗が牽制射撃を行っている間にも、逃げ遅れていた人々はどうにかこうにか逃げ延びられていて。そうして民間人が全て逃げ切ったのを確認すると、戒斗はアンジェと遥、二人とともに怪人たちの前に躍り出る。

「行きましょう、お二人とも……!」

「うん……!」

「背中は俺に任せろ。二人は好きに暴れるといい」

 躍り出た三人は横一直線に並び立ち、遥とアンジェはそれぞれ右手と左手を胸の前に構え、輝きとともに各々のブレスを出現させ。戒斗はP226をショルダーホルスターに戻すと、代わりに懐から試作型XGドライバーを取り出す。

「ハッ……!」

 遥は両腕を斜めに広げ、気を練るように深く呼吸しながら腕を時計回りに回し……左手を腰位置に引くのと同時に、右手を斜めに構える。右手の甲にある蒼と白のセイレーン・ブレスを見せつけるように。

「ふっ……!」

 アンジェは両手を腰に引いた後に右手を前に突き出し、クルリと手首を回して握り拳を作り。そうすれば左腕と一緒に大きく振り、右手と左手を、顔の右横でグッと握り拳を作って構えた。

「さあて、ペイバック・タイムだ……!」

 戒斗は取り出したXGドライバーを腰に当て、自動的に延伸したベルトを巻き付けて身体に固定。そうすれば左手で懐から取り出した黒い認証用メモリーカートリッジをバッと正面に掲げ、ドライバーの左側面から差し込む。

 その流れのまま、左手でバックル上面の細いアームを右に倒し……続けて左手をドライバーの上に添えると、戒斗はバッと右手を天高く掲げた。

 掲げた右手を手首からクルリと捻り、手のひらを広げ。太陽を掴まんとするように構えた右手を、そのままジリジリと胸の高さまで下ろし……雄叫びとともに、バックルのアームを左に倒す。

「チェンジ・セイレーン!!」

「チェンジ・ミラージュ!!」

「着装!」

『Expansion』

 三人の雄叫びが轟き、XGドライバーから電子音が鳴り響けば。並び立った三人の身体は眩い閃光に包まれ……遥とアンジェの身体には神姫装甲が、戒斗の全身にはNX‐αハイパーチタニウムの複合装甲が現れる。

 ――――神姫ウィスタリア・セイレーン。

 ――――神姫ヴァーミリオン・ミラージュ。

 ――――XVS‐02XG、ヴァルキュリアXG.

 戒斗は言わずもがな、遥とアンジェもそれぞれ基本形態のセイレーンフォームとミラージュフォームだ。

 そうして二人は神姫の姿に、戒斗はヴァルキュリアXGにそれぞれ変身を遂げれば、遥は聖剣ウィスタリア・エッジを虚空より召喚し。アンジェは腕のアームブレードと脚のストライクエッジを煌めかせ、そして戒斗は左太腿よりスティレット自動拳銃を掴み取り、三人は各々の武器を手に二体のバンディットと正対する。

「ハァァァッ!!」

「だぁぁぁぁっ!!」

「ふっ……!」

 そうすれば、遥は圧縮した足裏のスプリング機構を解放しながら踏み込み、アンジェは両腰のスラスターを吹かして突撃していく。

 突っ込むそんな二人の背後から、戒斗はスティレットを構えて狙い定め。そうして三人は二体のバンディット……リザード・バンディットとグリズリー・バンディットとの交戦を開始した――――!!

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