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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-08『忘却の果て、蒼き記憶の彼方に』
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第八章:True Fighter/04

「アイム! モラクス! くっ……よくも同胞たちをっ!!」

「余所見など――――している場合ではっ!!」

「ぬうぅぅぅぅっ!! ウィスタリア・セイレーン! どこまでも忌々しい……!!」

 そうして飛鷹がアイムとモラクスを続けざまに撃破する中、遥はフォルネウスに猛攻を仕掛けていた。

 長剣を取り落としている今、武器のないフォルネウスは無防備だ。この最大のチャンスを生かそうと、追撃を仕掛けた遥はその攻撃の手を緩めないまま、フォルネウスへと着実にダメージを与え続けていた。

「せめて、せめて剣を取り戻さなければ……! ナベリウスっ!!」

「承知……!!」

「くっ……!?」

 そうした猛攻撃の中、フォルネウスは残ったもう一人の特級バンディット、ナベリウスに遥と戦うように指示。ナベリウスがその鉤爪で攻撃し、遥と斬り結ぶ中……フォルネウスは一時離脱。ダメージを負った身体の態勢をどうにか整え、先程の飛鷹との戦いで取り落とした剣を拾うべく飛び退いていく。

「今は……貴方の相手をしている場合では!!」

 ナベリウスが絶え間なく繰り出してくる鉤爪での攻撃を捌きながら、遥は隙を見てブレイズ・ランスで一閃。同時にライトニング・マグナムも撃ちながら飛び退くと、ナベリウスから距離を取る。

「終わらせる……!!」

 そうすると、遥はナベリウスが銃撃で怯んだ隙に気を練り、深呼吸とともに練った気を右手へ……銃把を握り締める聖銃ライトニング・マグナムへと送り込む。

「ハァァァッ…………!!」

 気を送り込むにつれて、ライトニング・マグナムの銃口ではチリチリと稲妻が迸り始めていた。

「ッ!」

 練りに練った気が最高潮に高まった瞬間、遥は銃口で稲妻の迸るライトニング・マグナム、その引鉄を引き絞る。

 そうすれば、マグナムから撃ち放たれるのは鋭い金色の一撃。雷撃を纏った、矢のような一撃は真っ直ぐに飛翔すると、怯んでいたナベリウスの身体を中心から射抜く。

「うぐっ!? こ、これは……っ!?」

 そんな稲妻を纏った金色の光弾が胸を射抜くと、即座にナベリウスの身体に無数の稲妻が這い始めた。

 まるで、茨のように黒い身体を走り回る無数の稲妻。それは僅か一秒も経たないうちにナベリウスの全身を覆い尽くし、拘束してしまう。

「う、動けん……っ!!」

 戸惑うナベリウスは必死にもがくが、しかし幾らもがこうと拘束から脱することは出来ない。

 こうなってしまえば、自慢の鉤爪も形無しだ。身動きが取れなくなったナベリウス目掛けて、遥はライトニング・マグナムを構え続けたまま……必殺の二撃目を放つ。

「悔いなさい、貴方自身の行いを――――!!」

 ナベリウス目掛けて撃ち放たれるのは、最大火力の魔弾。限界までエネルギーチャージされた聖銃ライトニング・マグナムの銃口から、金色に染まる強烈なエネルギーの奔流が……太い金色のビームが放たれる。

 ――――『ライトニング・バスター』。

 知っての通り、本来ならライトニングフォーム用の必殺技だ。

 しかし今のリナシメントフォームは、途切れぬ絆が紡いだ力であると同時に、セイレーン、ライトニング、ブレイズといった三つのフォームの力を合わせ持った究極の姿でもある。であるのならば、ライトニングフォームの必殺技が使えない道理はない。

「う、ぬおおおおぉぉぉぉ――――っ!!」

 同時に――――同じ必殺技といえども、リナシメントフォーム時に放てば、その威力は通常時の比ではない。

 万物を焼き尽くす雷撃の奔流、金色のビームの直撃を受けたナベリウスは……叫び声を上げながら、その中に消えていく。

「ぐぅ…………っ!!」

 だが、意外なことにナベリウスはまだ健在だった。

 金色のビームが突き抜けた後、ナベリウスはその稲妻の奔流に焼かれながらも、体中から煙を吹きながらも……未だそこに立っている。

 ギリギリのところで耐え切った、ということか。通常時より威力が強化されるリナシメントフォーム時の『ライトニング・バスター』を受けても尚、大ダメージを負いはしても健在な辺り……流石はソロモンの近衛騎士、特級バンディットといったところか。

 だが――――だからといって、手加減をする遥ではない。

「ならば……次は!!」

 ナベリウスを仕留めきれなかったと見るや、遥は即座に左手の聖槍ブレイズ・ランス……その切っ先に蒼の焔を纏わせる。

 細身な槍の切っ先に宿るのは、真っ青な焔。海よりもずっと蒼い、そんな燃え盛る蒼の焔を纏わせた長槍を片手に、遥はバッと踏み込んだ。

 足裏のスプリング機構を圧縮し、即座に開放。バンッと音がするぐらいの踏み込みで急加速すれば、遥は瀕死のナベリウス目掛けて突っ込んでいく。左手に握り締めたブレイズ・ランス、蒼の焔を纏いしその切っ先を突き立てながら、真っ直ぐに。

「ハァァァァッ!!」

 回避なんて、出来るはずもない。

 凄まじい速さで突っ込んだ遥は、そのままナベリウスの懐に飛び込み――――蒼の焔を纏わせたブレイズ・ランスで、ナベリウスの胸を刺し貫いた。

「ぐおぉぉぉぉ……っ!?」

 ランスの切っ先が黒い身体を貫き、纏っていた蒼の焔が身体を内側から焼き尽くす。

 ナベリウスの叫び声が木霊する中、手応えを感じた遥はブレイズ・ランスをナベリウスの身体から引き抜き……その勢いのまま、バッと後ろに振り返る。

 そうすれば、次の瞬間――――遥のすぐ背後で、真っ青な焔が爆発のように弾けた。

「オオオォォォォ――――ッ!?」

 響き渡るのは、ナベリウスが最後に残す断末魔の叫び声。

 身体の内側を焼き尽くした蒼の焔が、身体を突き破り外部へと溢れ出て……ナベリウス・バンディットの身体を包み込む。

 そうすれば、一瞬の内にナベリウスの身体は焼き消えて。塵ひとつ残さぬまま、黒の近衛騎士ナベリウス・バンディットは……蒼い焔の中に消えていった。

「…………懺悔とともに、眠りなさい」

 燃え盛る真っ青な焔を背に、遥は残心する。槍を振り抜いたままの構えで、残心しながら……遥は慈悲深くも聞こえる声でそう、呟いていた。

 ――――『ハートブレイク・ブレイズ』。

 こちらも先程のライトニング・バスターと同じく、リナシメントフォームの必殺技ではなく……本来はブレイズフォームの必殺技だ。

 当然、その威力は通常のブレイズフォーム時とは比べものにならないほど強力。例えライトニング・バスターを耐え切ったナベリウスといえども……この一撃の前には、無力だったらしい。

「ぐぬぬぬぬ……! おのれ、おのれおのれおのれッ!! ナベリウスまで……よくも、よくもぉっ!!」

 そうして遥がナベリウスを撃破した頃、長剣を回収したフォルネウスは戻って来ていて。真っ青な焔の中に同胞が消えていくのを見たフォルネウスは、怒りを露わに叫びながら長剣を構える。

「残るは貴様だけだ! 覚悟しろ、ネオ・フロンティア!!」

 とすれば、飛鷹もまた遥の下に合流してきていて。二人並び立ちながら、彼女は力強い声でそう叫び返す。

「決着を付けましょう。……飛鷹、合わせてください」

「おうとも! お前の好きに暴れてみせろッ!!」

「行きます――――!!」

 モラクス、アイム、ナベリウス。三体の特級バンディットは撃破した。

 残るは指揮官役のフォルネウス・バンディットのみ。間宮遥と伊隅飛鷹、ウィスタリア・セイレーンとクリムゾン・ラファールはそれぞれの武器と拳を構え直すと、残る最後の強敵に向かって飛び込んでいく――――!!

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