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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-08『忘却の果て、蒼き記憶の彼方に』
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第七章:青の乙女と烈火の拳、今一度羽ばたく無敵の双翼/03

「貴様が来るか! クリムゾン・ラファール!!」

「選手交代、今度は私が相手だ……!!」

 歓喜の叫びを上げるフォルネウスと、そしてモラクス目掛けて両手のラファールストライカーを撃ちまくりながら、飛鷹が二体の特級バンディットへと肉薄していく。

 両手の銃から絶え間なく放たれる光弾は、しかしその殆どが避けられてしまい、モラクスとフォルネウス、どちらにも掠ることすらしない。

 ――――だが、これでいい。

 どのみち、飛鷹自身もこんな飛び道具が通じる相手だとは思っていないのだ。遥の遠距離戦形態ライトニングフォーム、あの聖銃ライトニング・マグナムの威力ならまだしも……彼女のマグナムに比べてしまえば、このラファールストライカーなんて豆鉄砲も同然だ。その程度の低威力な代物、ハナから牽制程度の効果しか期待していない。

「はぁぁぁぁぁっ!! たぁりゃぁぁぁぁっ!!」

 そうして牽制射撃を加え、フォルネウスたちの動きを封じた後……懐に飛び込んだ飛鷹は両手のラファールストライカーを投げ捨てれば、続く三つ目の武具を両手に召喚。それで以てフォルネウスに攻撃を仕掛ける。

 ――――『ブレイクトンファー』。

 文字通り、トンファー型の武器だ。それを両手に握り締めた飛鷹はフォルネウスに肉薄し、烈火の如き勢いで猛攻撃を繰り出した。

「フンッ! フンッ! フンッ! たぁりゃぁぁぁぁっ!!」

「噂通り、中々に手ごわい……だが、この程度なら想定の範囲内!」

 飛鷹が両手のブレイクトンファーを振るい、繰り出す猛攻。

 それこそ肉眼で追いきれないほどの速さで飛鷹の両腕が繰り出す、まさに神速の殴打の前に、さしものフォルネウスも怯みはしたが……しかし、フォルネウスはそんな彼女の攻撃全てを巧みに捌いてみせる。

「今度はこっちの番ですよぉ……っ!!」

「ぐっ!?」

 そうして飛鷹の攻撃全てを捌き切れば、隙を見てフォルネウスは左腰の長剣を抜刀。抜きざまの鋭い一閃を、飛鷹はどうにか右腕のブレイクトンファーで受け止めたが……しかし威力は殺し切れず、多少後ろに吹っ飛んでしまう。

「今です、モラクス!!」

「承知……!!」

 抜刀斬りを受け止めた飛鷹との距離が離れたのを見るや否や、フォルネウスは傍らのモラクス・バンディットに指示を下す。

 フォルネウスの指示を受けたモラクスは、両手の両刃斧を振りかぶりながら、今まさに態勢を整えようとしていた飛鷹に迫る。

「セイッ! セイッ! セイッ!!」

「っ……!!」

 モラクスの強靭な両腕から繰り出される、振り下ろす両刃斧の猛攻撃。

 それを飛鷹はブレイクトンファーを巧みに用いることで防御し、斧の一撃一撃を丁寧に受け流してはいたが……しかし、その重すぎる攻撃に防戦一方を強いられ。猛攻撃を凌ぐ中で、飛鷹は段々とその身に鈍いダメージを蓄積させられてしまう。

(このままでは、マズいか……!!)

 ともすれば、流石の伊隅飛鷹にも僅かだが焦りの表情が浮かび始めていた。

 仮にこのモラクスだけならば、どうにでもしてみせる自信はある。

 しかし、相手はモラクスだけじゃない。フォルネウスも斬り込んでくるチャンスを今か今かと待ち続けているのだ。

 ――――強敵二体を前に、僅かな隙も見せられない。

 隙を見せた瞬間が、即ち敗北へと繋がってしまう。それを理解しているからこそ、飛鷹は苦い顔を浮かべていたのだ。

「覚悟するがいい、クリムゾン・ラファール!! 今日という日が……貴様の最後だ!!」

「吠えたければ吠えろ……! 私の脚は、身体は、魂は! まだ手折られてはいないぞッ!!」

 勝ち誇るモラクスに飛鷹はそれ以上の雄叫びで返し、とすれば渾身の力を込めてモラクスの両刃斧を跳ね除け、その勢いのままモラクスの腹に強烈なタックルを敢行する。

「ぬおおぉっ!?」

「隙あり! そこだぁぁぁぁっ!!」

 予想外の逆襲を喰らったモラクスは後ろに何歩もたたらを踏み、大きな隙を晒す。

 そんな隙を、まさか伊隅飛鷹が見逃すはずもなく。飛鷹はブレイクトンファーから手を放すと、すぐさまモラクスの隙だらけな懐へと飛び込み――――閃かせた右手で再びビームソードを抜刀。神速の居合斬りで以て、モラクスの赤い身体に深い傷を刻み付けた。

「ぐおおおおお――――っ!?」

 腹から凄まじい火花を散らして、モラクスが吹っ飛んでいく。

「モラクスっ!?」

 そんな光景を目の当たりにすれば、今まで余裕の態度を貫いていたフォルネウスも驚き、狼狽の声を上げる。

 斬撃を喰らい、吹っ飛んでいったモラクスは境内の端にある木に激突。木の幹に激しく背中を叩き付けたモラクスの腹には、溶断されたように赤熱化した深い刀傷が刻み付けられていた。

「貴様……よくもモラクスを!」

 モラクス・バンディットは倒されたワケではないが、しかしすぐには起き上がれないほどの深手を負っている。

 そんなモラクスを見て、怒りを露わにしたフォルネウスは鞘に納めていた長剣を再び抜刀。怒りに声を震わせながら、飛鷹に正対する。

 すると、飛鷹は剣を構えたフォルネウスを前にしつつ、ビームソードの緑の刃に空を切らせれば……スッとその場で構えを取った。

 ――――両手で(つか)を握り締めたビームソードを横に倒し、その(つか)を顔の右横に寄せた構え。

 即ち、霞構えの格好だ。

 飛鷹はビームソードを霞構えにスッと構えると、細めたサファイアの双眸で眼前のフォルネウスを睨み付け。そして、激しい闘志を滲ませた声で叫ぶ。武人と呼ぶに相応しいだけの、迫力のある声で。

「さあ来い! 次は貴様を叩き斬る! この私、伊隅飛鷹が……何度でも地獄に送り返してやろう! 天竜活心拳の……いいや、桜花戦乙女同盟の誇りに賭けてッ!!」

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