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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-08『忘却の果て、蒼き記憶の彼方に』
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第二章:願いのリナシメント/02

「さあ、参りましょう――――!!」

 右手を天に掲げ、歪んだ空間から細身な長剣……聖剣ウィスタリア・エッジを召喚し、それを掴み取って構えた遥が一気に踏み込み、バンディットたちの懐へと超高速で飛び込んでいく。

 足裏のスプリング機構を瞬時に圧縮解放しての加速だ。その踏み込みの速さにバンディットたちは反応しきれず、懐への侵入を容易く許してしまう。

「ハァッ!!」

 まずは一閃。一番手近に居たクレイフィッシュ・バンディットの腹を遥はウィスタリア・エッジで斬りつける。

「ホロロロロ……ッ!?」

 腹を斬りつけられ、そこから火花を散らしながらクレイフィッシュが苦悶の声を上げ、後ろにたたらを踏む。

 そんなクレイフィッシュに向かって更に数閃の斬撃を叩き込めば、遥は振り向きざまに横一文字の一撃を放つ。

 そうすれば、遥を背中から襲おうとしていたロングホーン・バンディットは彼女のカウンターじみた一撃をモロに喰らい、逆に怯んでしまう。

「ハッ……ハァッ!!」

 怯んだロングホーンへと続けざまに何撃かの追撃を仕掛ければ、遥はバッと地を蹴って飛び上がる。

 身体のあちこちから火花を散らし、苦悶の声を漏らすロングホーン。飛び上がった遥はその肩を踏み台にしつつ更に高く飛び上がり、そうすれば上空の二体……コンドルとモス、二体の飛行型バンディットに攻撃を仕掛ける。

「遅い……ッ!!」

「ヒョロロロ――ッ!?」

 飛び上がった勢いのまま、すれ違いざまの斬撃を仕掛ければ。モスは逃げる間もなく胴体を斬りつけられ、土色の身体から火花を散らして失速する。

「フッ……!」

「キェーッ!!」

 そうしてすれ違いざまに一撃を喰らわせ、モスを叩き落とした遥は一度着地。そんな遥の背中目掛けて、空中のコンドルが両腕の翼をはためかせ……そこから放った無数の鋭い羽、いわば羽弾を遥の背中目掛けて放つ。

 だが――――その程度の攻撃で仕留められるほど、彼女は甘くない。

「見切った……!!」

 迫り来る無数の羽弾に対し、遥は振り向きざまにウィスタリア・エッジを振るい、その刃で以て羽弾を全て斬り払ってみせた。

「キュルルルル……!?」

 まるで、後ろにも目が付いてるかのような反応速度。完全に虚を突いたはずの攻撃がいとも容易く防がれてしまい、コンドルは露骨なまでに狼狽する。

「ハァッ!!」

 そんな狼狽するコンドルに対し、遥は決してその攻撃の手を緩めることはしない。

 クッと身を屈め、足裏のスプリング機構を再圧縮し……踏み込むとともに解放。その勢いに乗せて再び空中に飛び上がれば、右手のウィスタリア・エッジで以てコンドルに斬撃を叩き込む。

「キュ――――ッ!?」

 そうすれば、手痛い一撃を喰らったコンドルは途端に勢いを失い、地面に墜落してしまう。

「はぁ……っ!!」

 コンドルを撃墜した後に着地し、遥は深く息を整える。

「ホロロロロ……」

「ヒョー……ッ」

「キュルルルル……」

「グルルルル……ッ」

 そんな彼女の周囲を、五体の上級バンディットが一斉に取り囲んだ。

 ロングホーンにクレイフィッシュ、タランチュラにコンドル、そしてモス。

 五体の強敵に取り囲まれながらも、遥はその冷静さを失いはしなかったが……しかし同時に、冷静な心が自身の劣勢を感じ取ってしまう。

 ――――幾ら彼女が歴戦の神姫といえども、五体のバンディットを……しかも上級個体を一人で相手にするとあれば、どうしても苦戦は避けられない。

 例え今の彼女から記憶喪失という(かせ)が外れ、全開の実力で挑める最高のコンディションであったとしても……それでも、数的不利というのはどうしようもないぐらいに劣勢を強いられる状況なのだ。

 ――――だとしても。

 だとしても、ここで剣を折るワケにはいかない。ここで自分が諦めてしまえば……また誰かが涙を流すことになる。

 それだけは――――それだけは、耐えられない!!

「ハァァァ……ッ!!」

 遥は強くそう願えば、右手のウィスタリア・エッジを投げ捨て……胸の前に構えた右手のセイレーン・ブレス、その下部にあるエレメント・クリスタルを金色に光らせた。

 彼女の深い呼吸に呼応するように、その輝きは激しさを増し。そうすれば彼女の身体は再び一瞬の閃光に包まれる。

 そうすれば――――彼女は、また別の形態へと姿を変えていた。

「………………」

 ――――ライトニングフォーム。

 右腕を白と金の鋭角な神姫装甲で包み込み、右眼は金色に変色。そんな左右別色のオッドアイ状態になった双眸の前で揺れる前髪にもまた、右側に金のメッシュが入ったその姿こそ、彼女の……神姫ウィスタリア・セイレーンの遠距離戦形態だった。

 そんなライトニングフォームへとフォームチェンジを遂げれば、遥は虚空より新たな武器を召喚する。

 右手で強く銃把を握り締めたそれは――――聖銃ライトニング・マグナム。

 大型拳銃のようなそのライトニング・マグナムを握り締め、目の前のバンディットたち目掛けて構えながら……遥は凛とした声で言い放つ。

「覚悟してください。此処が、貴方たちの――――終着点(デッド・エンド)です」

 幾度となく背中を預けた紅蓮の乙女、彼女の言葉を借りながら……遥はその銃口と、そして金色の右眼から注ぐ鋭い視線で標的を睨み付けた。

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