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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-08『忘却の果て、蒼き記憶の彼方に』
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第一章:過去への旅路/04

 そうしてバイクを走らせた先、辿り着いたのは――――遥にとっての、思い出の街。間宮遥という名を貰う前、本当の自分として、来栖(くるす)美弥(みや)として生まれ、生きて……そして、仲間たちとともに戦い抜いた街だった。

 ――――来栖(くるす)美弥(みや)

 それが、本来の彼女の名だ。今まで忘れていた、間宮遥の本名。それが来栖美弥という名だった。

 それ以外にも、遥は過去の全てを思い出している。自分がこの街で生きていたこと、嘗ての仲間たちと……神姫の力を得た仲間たちと『桜花(おうか)戦乙女(いくさおとめ)同盟(どうめい)』を結成し、バンディットと……秘密結社ネオ・フロンティアと戦っていたこと。その全てを、遥は思い出していた。

 ――――そんな皆の、大切な仲間たちの名前も、全て。

 青葉(あおば)瑠衣(るい)、神姫エメラルド・イーグル。

 北條(ほうじょう)美桜(みおん)、神姫ブロッサム・フィクサー。

 来栖(くるす)紫音(しおん)、神姫オーキッド・キャリバー。

 そして――――伊隅(いすみ)飛鷹(ひよう)、神姫クリムゾン・ラファール。

 皆、桜花戦乙女同盟の仲間として共に生き、戦い抜いてきた仲間たちだ。幼馴染で親友、そんな三人の仲間たちと、そして遥の……来栖美弥の実の母親、来栖紫音とともに結成した同盟。それこそが、桜花戦乙女同盟に他ならなかった。

 そんな皆と過ごした街、思い出の場所を……遥は、独りバイクで巡っていた。

「……瑠衣が、教えてくれたんですよね」

 最初に行った場所は、街にある広い河川敷だ。この場所で遥は瑠衣のバイク、その後ろに乗せて貰い、バイクの楽しさを教えて貰った。あの時の瑠衣の楽しそうな横顔も、暖かかった背中も……全て、今でも覚えている。

 それ以外にも、遥は色んな場所を巡った。

 街外れにあるスーパーマーケット……よく飛鷹や、桜花戦乙女同盟の皆で遊びに来た場所。同じく皆でよく遊んだ商店街や、そして……四人一緒に三年間を過ごした、国立風守(かざもり)学院。

 そんな場所をあちこち巡りながら、懐かしい思い出に浸りながら。遥は最後に、一番大事な場所に向かおうとしていた。

 ――――来栖大社。

 間宮遥が、来栖美弥が生まれ育った場所。小高い山の上にある、数千年もの長い歴史を有する由緒正しい神社。全てが始まり、そして終わった場所…………。

 遥が真に向かうべき場所であり、同時に確かめねばならないことがある場所。そんな来栖大社に行こうと、遥がそう思った時――――しかし、頭の中に鳴り響く警鐘がその邪魔をした。

 ――――警鐘。

 あまりにも慣れ親しんだ、この感覚。敵の出現を、バンディットの出現を告げるこの警鐘を感じ取ってしまえば、来栖大社へ行くのは後回しにせざるを得ない。

 ――――行かないと。この感覚が教える先で、誰かの涙がまた流されようとしているのなら。

 遥はそう思うと、来栖大社へと針路を取っていたバイクの向きを反転させ、その本能の告げる方へと……警鐘の鳴り響く方へと走り出した。

 彼女は、戦うために。誰かの涙がまた流されようとしている今、神姫として出来ることをするために――――間宮遥は、来栖美弥は駆け抜ける。誇り高き桜花戦乙女同盟の神姫として、蒼の乙女……ウィスタリア・セイレーンとして。





(第一章『過去への旅路』了)

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