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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-07『黒い勇者、その名はヴァルキュリアXG』
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第十五章:BLACK EXECUTER/01

 第十五章:BLACK EXECUTER



「へえ、面白い……!!!」

 ヴァルキュリアXGへの変身を遂げた戒斗の姿を目の当たりした潤一郎が、アルビオンシューター片手に歓喜の顔で飛び掛かってくる。

 仁王立ちのまま潤一郎を迎え撃とうとする戒斗の傍ら、スラスターを吹かし超加速を敢行したアンジェはチーター・バンディットの方の相手をしつつ「こっちは任せて!」と彼に告げる。

「今までの借り、百倍にして返させてもらう……!!」

 そうすれば戒斗と潤一郎の一対一の状況が出来上がり。ヴァルキュリアXGとプロトアルビオン、漆黒と純白のパワードスーツの対決が始まった。

「そらそらそらっ! 試させてもらうよ、君の実力!」

「フッ……!」

 飛び掛かってきた潤一郎は銃剣主体の近接攻撃を仕掛けつつ、時にシューターを発砲するトリッキーな戦い方で戒斗を翻弄しようとする。

 だが、斬撃も銃撃も戒斗の前には……ヴァルキュリアXGの漆黒の装甲、新開発のNX‐αハイパーチタニウム合金とセラミックで構成された強固な複合装甲の前には一切通じない。

 故に戒斗は避ける必要すらなく、どれだけ喰らったところで戒斗はまるで意に返さない。斬撃も銃撃も、そして格闘でさえも。プロトアルビオンの何もかもが、彼には……戦部戒斗、ヴァルキュリアXGには通じていなかった。

「そんな、通じない……!?」

「今度はこっちの番だ! トゥアッ!!」

「がぁぁぁぁぁ――――っ!?」

 自分の攻撃が一切通じないことに戦慄する潤一郎、そのガラ空きの胸に戒斗がストレートの拳を叩き付けてやれば……その常軌を逸した威力の前に、さしものプロトアルビオンも耐え切れず。胸部装甲から激しい火花を散らしながら、潤一郎が後ろに吹っ飛んでいく。

 バンッと地面に背中を叩き付けた潤一郎は、どうにか起き上がるが……そこに戒斗の追撃が、ハイキックを手始めとした格闘の猛攻が飛んできた。

「トゥアッ!!」

「ぐっ……!? 一撃が重すぎる……!?」

「この程度では済まさん! 借りを返した上で……真も返して貰う!!」

「ぐああぁぁぁぁ――――っ!?」

 ハイキックで側頭部を蹴りつけ、フラついたところにストレート、フック、アッパーカットの拳の猛攻。

 そうして装甲から火花を散らし、潤一郎がダメージを蓄積させたところで……最後に一撃。左太腿に吊るしていたHV‐250スティレット自動拳銃を抜き撃ちし、潤一郎の腹に全弾を叩き込んでやる。

 ズドンズドンズドン、と銃声がコンテナヤードに木霊し、激しく前後するスライドから熱い空薬莢が蹴り出される度に、至近距離から銃撃を喰らった潤一郎の腹部装甲からは強烈な火花が散り……強烈なダメージをプロトアルビオンに蓄積させていく。

 ――――圧倒的。

 今の戒斗の、ヴァルキュリアXGの戦いぶりはまさに圧倒的だった。

 プロトアルビオンの攻撃もまるで意に返さず、一方的なまでの攻撃で潤一郎を追い詰めていく戦いぶりは、戒斗の静かな怒りが滲み出たような猛攻で。そこには手加減も容赦も一切なく、あるのはただ圧倒的なまでの力の差だけだった。

「戒斗くん、腰のそれを使いたまえ」

 そうして戒斗が潤一郎を圧倒し、回し蹴りで彼を彼方へと吹っ飛ばした頃。ガーランドに寄りかかりながら彼の戦いを傍観していた有紀がそう、ヴァルキュリアXGの右腰にある物を目線で示しながら言う。

「これを……か? 先生、コイツは一体」

「PBV‐X1ガングニール、分かりやすい言い方をすればパイルバンカーだ。新開発の格闘戦兵装でね。詳しい仕組みは省くが……腕に付けて使いたまえ。後の使い方は、まあ敢えて説明するまでもないだろう?」

 ニヤリとして言う有紀に「……ああ、かもな」と戒斗も不敵に笑い返し。そうすれば右腰ハードポイントに吊っていた縦長のそれを右手で掴み取れば、一度それをジッと見つめてみる。

 ――――PBV‐X1、ガングニール腕部パイルバンカー。

 簡単に言えば、鉄杭を超高速で打ち出し敵に叩き付ける、一撃必殺の武器だ。SFロボットアニメなんかではよく見かける武器だが……まさか、XG用に仕立て上げてくるとは。

 戒斗はそのバンカーユニット、戦神オーディンが振るいし必殺必中の神槍の名を冠したそれを左腕、その腕甲にあるハードポイントに装着する。

「コイツがXGの切り札、か……面白い!」

 戒斗はバンッと踏み込み、左腕を……ガングニールを装着した左腕を振りかぶりながら、よろめく潤一郎の懐に飛び込む。

(これは……これは、何かマズい……!?)

 迫り来るそんな彼の姿を目の当たりにして、潤一郎はフラつきながらも本能的な危機感を覚えていた。

 だが――――回避など間に合うものか。この必殺必中の神槍を前に、逃げることなど出来るものか――――!!

「相手が悪かった、そう思え…………!!」

 懐に飛び込んだ戒斗は左の拳を潤一郎の胸に、プロトアルビオンの白い胸部装甲に叩き付ける。

「撃ち貫く……止められるものなら、止めてみろ!!」

 瞬間――――腕に取り付けたバンカーユニットが吠えた。

 火薬の撃発力と超電磁加速を併用した爆発力で、戒斗の腕のバンカーユニットから鉄杭が凄まじい勢いで飛び出す。

 その鉄杭は、一種の徹甲炸裂焼夷弾……HEIAPのようなものだった。

 撃ち出された鉄杭はまずプロトアルビオンの胸部装甲に激突し、その後信管が作動。鉄杭が丸ごと弾け飛び、強烈な爆発を生じさせた。

 ガングニールに撃ち貫かれ、プロトアルビオンは爆発しながら彼方へと吹っ飛んでいく。

 そうすれば地面に転がった頃……あまりのダメージにシステムが耐え切れず、プロトアルビオンは強制的に装着を解かれ。変身解除された潤一郎が、ボロボロの格好で砂利の地面に這いつくばる。

 彼にとって、唯一救いだったことがあるとすれば――――ガングニールの鉄杭が装甲を貫徹しなかったことか。

 PBV‐X1は本来なら標的を貫通し、その内部で炸裂することで標的を内側から粉微塵に爆破する武装だ。鉄杭の貫徹力にプロトアルビオンの装甲がギリギリ耐え抜いたことだけが、潤一郎にとって不幸中の幸いだった。

「つ、強い……強すぎる、まさか僕のアルビオンが手も足も出ないなんて……!!」

 潤一郎はボロボロの格好で這いつくばったまま、遠くに立つ戒斗を見つめながら……悔しげにそう呟く。

 戒斗は左手のバンカーユニット、一撃ごとに使い捨て故に無用の長物となったそれを外し、投げ捨てながら……黒いボディの節々から僅かな蒸気を吹き出し、そして真っ赤な眼で潤一郎を射抜きながら。這いつくばる彼に向かってこう告げる。

「これが俺と……そして、お前との覚悟の違いだ!!」

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