第九章:切なる祈りとともに/01
第九章:切なる祈りとともに
時系列は元に戻り、純喫茶『ノワール・エンフォーサー』。そこではいつものように遥が店を手伝っている最中だった。
「はい、お待たせしました――――っ!?」
にこやかな笑顔とともに接客をしている最中、遥は唐突に鳴り響く警鐘を――――敵の出現を感じ取る。
頭の中に鳴り響く、甲高い耳鳴りのような感覚。
それを、まさか彼女が間違うはずもない。これは本能が告げる警鐘、即ち打ち倒すべき敵が……バンディットが現れたという報せだ。
そんな感覚を感じ取ると、ハッとした遥は今まで手にしていた丸いトレイをカウンターの上に置く。
「すみません、急用を思い出しました……!」
すると遥は厨房に立っていた戒斗の両親、店のオーナーたる二人にそう告げて。とすればエプロンを脱いでそのまま店を飛び出していく。
カランコロンとベルの鳴る戸を背に、入り口のすぐそばに置いてあった自分のバイク……二〇一九年式の黒いカワサキ・ニンジャZX‐10Rに跨る。
同じく黒のフルフェイス・ヘルメットを被りながらキーを差し込み、セルモーターを回してイグニッション・スタート。そうして排気量一リッターの直列四気筒エンジンが目を覚ませば、暖機運転の時間も待たないままに遥はフルスロットルで飛び出していく。
店を飛び出し、スロットルを全開まで捻り。回転数の上がるエンジンの甲高い唸り声とともに風を切り、青い髪を靡かせながら疾走する。そんな遥の行く先は――――敢えて問うまでもなく、たったひとつだ。
「戒斗さんが戦えないのなら……私が!!」