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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-06『グラファイトの少女』
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第十一章:タイフーン・アクション/01

 第十一章:タイフーン・アクション



 ――――Vシステム、完全沈黙。

 橋の欄干にもたれかかる格好で項垂れる彼、意識を失った戒斗にトドメの一撃を喰らわそうと、真はグラファイトソード片手にゆっくりと彼の元へと歩み寄っていた。

 だが、彼女が気絶した彼の元に行き着くことはなく。真はその身体を、横から猛スピードで突っ込んできたバイクに吹っ飛ばされてしまっていた。

 現れたバイク、白ベースに青と水色のラインが入った一九九〇年式のスズキ・RGV250Γ(ガンマ)。それに跨るライダーの少女は……首元の白いスカーフを潮風に靡かせる彼女は他でもない、あの風谷美雪だった。

「戒斗さん……!? それに神姫が敵にって、これは一体どういう……!?」

 突如として乱入してきた美雪は白いフルフェイス・ヘルメットを脱ぎながら、周囲の状況を見渡しつつ……この現状に、遥たちが劣勢で、しかも神姫が敵に回っているという意味不明な現状に当惑している様子だった。

「――――美雪ちゃんっ!!」

 まさに風のように颯爽と現れた、そんな美雪に対し。潤一郎と刃を交えながら……泣きながら、アンジェが力の限りに叫ぶ。助けを求めるように、風の化身たる少女に懇願するかのように。

「お願い……! 美雪ちゃん! カイトを……カイトを助けてぇっ!!」

「っ……!!」

 何もかもをかなぐり捨てて、ただ彼を助けて欲しいと叫ぶアンジェ。自身に懇願する彼女の声を聴き、大粒の涙を流す彼女の顔を目の当たりにして……美雪はただ事ではないと知る。

 そうすれば、美雪はそんなアンジェにコクリと静かに頷き返し、長い脚を翻してバイクから降りる。

「…………色々と思うところはありますが、しかし戒斗さんとアンジェさんは私にとって紛れもなく恩人。そんなヒトたちを傷付けられて……黙って見ていられる私じゃないッ!!」

 キッと目つきを鋭くさせながら、美雪は自分に向かって歩み寄ってくる真に相対しつつ。遠くで高みの見物を決め込む香菜に……秘密結社ネオ・フロンティアの幹部、篠崎香菜に向かって叫ぶ。低く、ドスの効いた声で。

「篠崎香菜! いいや……秘密結社ネオ・フロンティア!! 私はお前たちを許さない! その野望……この私が打ち砕く!!」

「やってみなさい、ジェイド・タイフーン。貴女にやれるものならね」

「見せてやる……!!」

「……脅威判定、殲滅開始」

「――――とうッ!!」

 香菜に叫んだ後、美雪は自身に攻撃を仕掛けてくる真の刃を素手で巧みにいなしつつ、逆に彼女を蹴り飛ばして間合いを取り。するとバック宙気味に後方へと高く飛んで……何故か、大橋の欄干の上に立った。

 そうすれば、彼女は構えを取る。両手を身体の下でクロスさせる、そんな構えを。

 ――――疾風。

 彼女が構えを取った途端、美雪の周囲に猛烈な風が吹き始め……そんな風が一点に集まるようにして、彼女の右手に緑と白のガントレット『タイフーン・チェンジャー』が現れる。

「ふん……っ!!」

 チェンジャーが出現すると、美雪は構えた両腕をクロスさせたまま、バッと左方に大きく振りかぶり……勢いをつけて、両手を身体ごと右側に大きく振り返す。

 そうすれば、美雪は腕をクロスさせたままで両手を反時計回りに回し。そのまま真上に構えた両腕をバッと身体の左側に下ろした。

 立てた右腕を身体の左側に構え、右肘辺りに……手のひらを前に向けた構えを、添えるようにクロスさせた構えを取る。両手ともに、小指と薬指だけを折り曲げた格好で。

「疾風転身、タイフーン…………ッ!!」

 そうした構えを取りながら、美雪は低くドスの効いた声で叫んだ。

 すると、彼女の周囲に再び猛烈な疾風が巻き起こり。やがて風はある一点へと……右手のタイフーン・チェンジャー、その丸いエナジーコアの部分に、風車のようなそこに集まっていく。

 そんな風に猛烈な風が吹きすさぶ中、同時に美雪の身体は眩い閃光に包まれていた。

 彼女の身体が瞬いたのは、一瞬。僅かに彼女の身体が光に包まれたかと思えば、その光が収まった頃……吹き荒れていた風が収まった頃、彼女の姿は神姫のものへと変貌を遂げていた。

 ――――神姫ジェイド・タイフーン。

 緑と白の神姫装甲を煌めかせ、首元の白いマフラーを潮風に靡かせながら……荒れ狂う風とともに、彼女はそこに現れていた。激しい怒りを燃やす、復讐の神姫が。

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