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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-06『グラファイトの少女』
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第九章:ヴァルキュリア・フォーメーション/03

「シーカーオープン……ロックオン! さあ、踊りなさい……!!」

 一方、セラは遥の援護を受けつつ、宙を舞う蜂型のホーネット・バンディットに対し……その両太腿のミサイルポッドを解放。今まさに、撃ち放つ無数のマイクロミサイルの洗礼を浴びせているところだった。

「――――!!」

 四方八方から襲い来る、数十発のマイクロミサイル。

 だがそれに対し、ホーネットは俊敏に飛び回ることで回避してみせる。あちらこちらに飛び回り、身体を捻って急降下。時には振り向いて指先から毒針を発射し、迫り来るミサイルを撃ち落としてみたり。

 そんな逃げ回るホーネットに、しかしセラは苛立つことはせず。今度は両手のガトリング機関砲で対空射撃を開始。同時に腕のマシンキャノン、腰の榴弾砲もブッ放す。

 しかしホーネットは、そんな機銃掃射に対しても素早く反応してみせる。

 左右に激しく、不規則に動いたり、時には大きく宙返りをしてみたり。そうしてセラの狙いを……ホーネットの行き先を予測して撃つ見越し射撃を阻害しつつ、一発たりとて掠ることもなく回避し続ける。

 時には榴弾砲、空中で破裂する近接信管がセットされていたそれが間近で炸裂し、危うく手傷を負いそうになっていたが……しかし、それもホーネットは上手く避けてみせていた。

「――――!!」

 そうして避けながら、チャンスを見計らってホーネットは急降下。セラに真上から奇襲を仕掛けてくる。

 急降下しながら、同時に指先の毒針も斉射する。

 迫り来るホーネットと、雨あられのように降り注ぐ大量の毒針。動きの鈍重な、重砲撃形態のストライクフォーム故に……セラはその場から殆ど動けず、ロクに回避行動も取れない。

 取った――――。

 身動きの取れないセラを真上から見据えながら、ホーネットは自身の勝利を確信していた。

「ふふ……っ」

 だが――――頭上のホーネットを見上げるセラの顔に、焦りの色は欠片も浮かんでおらず。寧ろそこにあるのは余裕と嘲笑、そして圧倒的な自信を秘めた不敵な笑みだけだった。

「――――!?」

 そんなセラの不敵な笑みにホーネットが不信感を抱いた瞬間――――急降下するホーネットの少し先、セラとの間。そこに降っていた毒針の雨が、何処からか飛来した光の柱に丸ごと消し飛ばされていた。

 まさか、と思いホーネットは急降下を無理矢理に止め、光の柱が……稲妻のような、それこそビームとしか表現できない何かが飛んできた方に振り返る。

「どうやら、私を忘れていたようですね」

 すると――――そこには間宮遥、神姫ウィスタリア・セイレーンが立っていて。小さく笑む彼女の右手、真っ直ぐに伸びた右手……白と金の鋭角な神姫装甲が包み込むそこには、大きな拳銃のようなものが握られていた。

 ――――聖銃ライトニング・マグナム。

 神姫ウィスタリア・セイレーンは遠距離戦形態、ライトニングフォームの武器だ。遥はそのライトニング・マグナムから放った光弾で以て毒針を迎撃し、そしてセラへの奇襲を阻止してみせたのだ。

「フッ……!」

 予想もしていなかった方向からの援護射撃にホーネットが戸惑う間にも、遥は右手を通してライトニング・マグナムに気を送り込み。そうすれば即座に引鉄(ひきがね)を引き、逃げ出そうとしていたホーネットを……雷撃を纏わせた金色の一撃で射貫いてみせる。

「ガ、ガガガ……!?」

 更に高高度へと退避しようとしていたホーネットだが、しかし遥の放ったそんな一撃を腹に喰らった途端……身体の表面を這う無数の稲妻に拘束され、ホーネットはその場から動けなくなってしまっていた。

 まるで、茨の形をした稲妻に縛られるかのように――――ホーネットは上昇も下降も出来ず、ただ空中で縛り付けられていた。

「戦ってるのはアタシ一人じゃあない。それを忘れてたアンタの負けよ」

 そうして動けなくなったホーネット……遥のライトニングフォームの必殺技『ライトニング・バスター』の一段階目である拘束攻撃を食らった頭上のホーネットを見上げながら、セラが不敵な笑みを湛えてそう言う。

 言いながら、彼女は担いだ全ての武装を真上のホーネットの方に向けてみせた。尻尾のようなアンカーを再び地面に深く突き刺し、安定させた格好で……セラの金色の瞳と、そして彼女の構えた全砲門がハチ怪人を睨み付ける。

「決めましょう、フェニックス!」

「オーケィ、ブチかますわよ!!」

 遥は金のメッシュが入った前髪越しに、金色の右眼で狙いを定めながら……右手のライトニング・マグナム、銃口部に稲妻の迸るそれに最大級の気を送り込む。

 同時に一斉射撃の構えを取ったセラもまた、両肩の重粒子加速砲をフルチャージしていた。太腿のミサイルポッドは再び開き、両手のガトリング機関砲の六銃身はゆっくりと回り始めている。

「悔いなさい、貴方自身の行いを――――!!」

「フルチャージ! 最大火力……持ってけぇぇぇぇ――――っ!!」

 そして、遥のライトニング・マグナムとセラの構えた全武装、その全ての銃口が瞬き……過剰と思えるほどの火力の暴力がホーネットを襲った。

 まずはセラのガトリング機関砲とマシンキャノン、榴弾砲とミサイルポッドがホーネットの身体をズタズタに引き裂き、焦がし。それから一瞬の間を置いて、セラの放った重粒子ビームと……遥が放った巨大な光の柱、雷撃を纏った金色の太いビームが同時にホーネットを焼き尽くす。その射線と射線をクロスさせながら、過剰なまでの威力をホーネットに叩き込んでいた。

 ――――『ライトニング・バスター』。

 ――――『アポカリプス・ナゥ』。

 神姫ウィスタリア・セイレーン、遠距離戦形態ライトニングフォームの必殺技と、そして神姫ガーネット・フェニックス、重砲撃形態ストライクフォームの必殺技だ。

 そんなものをマトモに食らってしまえば、ホーネットがそのヤワな身体で耐えられるはずもなく。まさに地獄の黙示録(アポカリプス・ナゥ)を体現するかのように圧倒的な火力の暴力を一身に受けたホーネットの身体は、二人の放ったビームに灼かれ……塵ひとつ残さぬまま、空中で消滅してしまっていた。

「上手く合わせてくれたわね、セイレーン」

「フェニックス……貴女となら、上手く戦えそうです」

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