第八章:深淵からの使者たち/03
そんな二人と同じように、神代学園の校舎内……三年A組の教室で六限目の授業を受けていたアンジェとセラもまた、やはり敵の気配を察知していた。
(ッ、この感覚……!!)
(敵のお出ましってワケね……上等!!)
窓際烈の最後尾と、その右隣。隣同士の席に座り、黙々と授業を受けていた二人はほぼ同時に気配を察知すると、アンジェもセラもどちらからでもなく視線を向け合い……アイ・コンタクトの末に黙って頷き合う。
そうすれば二人は同時にガタッと席を立ち、
「悪いけど、アタシちょっと早退!!」
「すみません、僕も早退で!!」
一方的にそう宣言すれば、戸惑う教師の制止も聞かぬままにスクールバッグを担ぎ……驚き戸惑うクラスメイトたちの奇異の視線に見送られながら、二人揃って三年A組の教室を飛び出していく。
そうして授業中のガランとした廊下を全力疾走しながら、アンジェとセラは互いに言葉を交わす。
「アンジェ……この感覚、どう思う!?」
「うん……!! 凄く多い気がする、この感じ……!!」
「やっぱりか……戒斗の奴が初めてVシステムを装着した、あの時と同じぐらいよね!?」
「……分かんない、けど感覚は近いよ!!」
「ああもう、また大勢相手にしなくちゃいけないってワケね……」
「でも、僕たちならやれる。そうだよね、セラ?」
隣を走りながら、柔らかな……自信溢れる笑顔でそう言うアンジェ。
セラはそんな彼女の隣を全力疾走で駆けながら「当然!」と力強く頷き返す。
「アタシたちで全部平らげるわよ、アンジェ!!」
「分かった!!」
と、そうこうしている内に階段を駆け下りて……昇降口に辿り着き。上履きから外履きのローファー靴に履き替えた二人は、そのまま校舎を飛び出し校門に向かって全力疾走。そうして校門を出れば、セラのバイクが隠してある場所へと二人で向かう。
隠してあったセラ愛用の大型クルーザーバイク、二〇一五年式の真っ赤なホンダ・ゴールドウィングF6Cに二人一緒に跨がれば、ハンドルを握るセラは愛用の赤いジェット・ヘルメットを。彼女の背中にしがみつくアンジェは、セラから手渡された予備のヘルメットをそれぞれ被る。
そうして二人でヘルメットを被ったところで、イグニッション・スタート。やはり暖機運転の時間を待たないまま、二人は猛然とした勢いで飛び出していく。
(間違いなく、敵の数は多い……でも、今のアタシたちならやれる!)
(カイト、きっと君も来てくれるんだよね。だったら……一緒に戦うよ。そして守ってみせる。他の誰でもない、この僕が)