第八章:深淵からの使者たち/01
第八章:深淵からの使者たち
何処かの街角、自販機の傍の路肩。そこに停めた自分のバイクに寄りかかりながら、風谷美雪は独り缶コーラをちびちびと啜っている最中だった。
「――――!」
そうして休憩がてらに停まった路肩、エンジンを切って間もない自分のバイクに寄りかかっていた美雪は……ふとした時に敵の気配を、頭の中に鳴り響く警鐘という形で感じ取っていた。
――――甲高い、耳鳴りのような感覚。
「……現れたか」
それを感じ取った途端、美雪はスッと目を細めながら呟き。とすればグイッと一気にコーラを飲み干して、空き缶をポイッと後ろに放り捨てた。
吸い込まれるような軌道で、空き缶は綺麗な放物線を描きながらゴミ箱の中へと正確に入っていく。
美雪はそんな見事なコントロールで飛び込んでいった空き缶に一瞥もくれないまま、すぐに背にしていた自分のバイク……RGV250Γに跨がり。引っ掛けていた白いフルフェイス・ヘルメットを頭に被れば、キックスターターを踏み込んでエンジンスタート。古めかしい二ストロークのエンジンが目を覚ますと、何度か空吹かしした後……スタンドを蹴っ飛ばし、フルスロットルで駆け出していく。
「待っていろ、秘密結社ネオ・フロンティア……! 貴様らの野望、この私が必ず打ち砕く…………!!」
被るヘルメットの下、低い声で呟く美雪。その翠色の双眸に復讐の炎を滾らせながら、風谷美雪は全速力でバイクを疾走させる。首元の白いスカーフを靡かせながら、己が手で仇敵を討ち倒す為に。