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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-06『グラファイトの少女』
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第一章:刹那、尊き日々の残影/03

「――――戒斗さん、アンジェさん、おかえりなさい」

 そんなこんなで、学園から帰った戒斗とアンジェが二人を……真とセラを連れて店の戸を潜ると。カランコロンと来客を告げるベルが鳴る中、カウンターの奥に立っていた遥が……間宮(まみや)(はるか)が笑顔で戒斗たちを出迎えてくれていた。

「セラさんも、また来てくださったんですね。それと……そちらの方は、戒斗さんのお友達でしょうか?」

 まず戒斗とアンジェを出迎えた後、二人が連れてきたセラにも笑顔を向け……遥はその後でもう一人の見慣れない来客、翡翠真の方を見つめながら小さく首を傾げる。

 すると戒斗が「そんな感じだ」と頷き返し、

「翡翠真だ。それで真、彼女が間宮遥。確か前に話したことあったよな?」

 続けてそう言えば、真は「んだな」と肯定の意を返す。

「確か……記憶喪失なんだっけか? 戒斗からちょくちょく話は聞いてるよ」

「そうでしたか。改めまして……私は間宮遥と申します。よろしくお願いしますね、真さん?」

「おう、よろしくな遥さん」

 とまあ、そんな具合に初対面の二人が簡単な自己紹介を終えた後で、戒斗とアンジェは真とセラのゲスト二人をカウンター席へと(いざな)った。

 隅の方の席に着いた二人にそれぞれ遥が注文を取った後、まずは珈琲を出してやる。

「……おお、美味いな」

「でしょう? この店の珈琲は絶品なのよ。遥が淹れてくれるのは特に、ね」

「ふふっ、ありがとうございます」

 出してくれた珈琲を一口飲み、目を丸くして舌鼓を打つ真。その横で自分もカップに口を付けながら、ふふんと鼻を鳴らしてしたり顔(・・・・)をするセラと……そんな二人に微笑む遥。

 遥の淹れた、セラ曰く絶品なその珈琲に二人で口を付けつつ。真を中心に……時々アンジェやセラが横から口を挟みつつ、皆で何気ない話を始める。

 丁度……こんな風にだ。

「そういえば、真さんは戒斗さんのお友達なんですよね?」

「んだな。戒斗の奴とは中学時代からの……ま、腐れ縁って奴でな。だからアンジェちゃんのこともよーく知ってるんだぜ」

「だねー。真さんには昔から仲良くして貰ってるんだー」

「ちなみに、だ遥。真はこんな風だが……プロのカメラマン目指してるんだよ」

「戒斗さん、そうなんですか?」

「意外だろ?」

「意外って……ひでー言い方だなあオイ戒斗」

「へえ? アタシは良いと思うわよ? ねえ遥?」

「ふふっ、そうですね。私もセラさんと同意見です。プロのカメラマンさんですか……とても、真さんらしい目標じゃないでしょうか」

「そうかい? そう言って貰えると……うん、アタシ的にも嬉しいよ」

 とまあ、こんな風に皆で和気藹々と話していた。

 初対面の真のことがやっぱり気になるのか、遥が割と積極的に話題に食い付いてくる。

 一応、遥は仕事中だが……まあ店の中には他に客の気配も無いし、別に構わないだろう。

「ん……?」

 そうして皆で話している最中、窓の外に見える店の駐車場。そこに見慣れない外車が入ってきた。

 気付いた戒斗が向けた視線の先で、その蒼い外車はバックギアでゆっくりと後退しつつ、すぐ目の前の駐車スペースに停まる。

 ――――二〇二一年式、C8型のシボレー・コルベット・スティングレイ。

 店の駐車場に停まったそれは、間違いなく最新鋭のアメ車だった。

 有紀が……この店の常連にして、国連が秘密裏に結成した対バンディット特務機関P.C.C.Sの技術開発部門チーフである彼女、篠宮(しのみや)有紀(ゆき)が普段から乗り回しているC3型コルベット。あのコルベット・シリーズの最新機種に当たる一台だ。

 先代C7型までと異なり、エンジンをボンネット内ではなく車体中央、つまりシートの真後ろ辺りに搭載するミッドシップ配置をシリーズで初めて採用していたりと、中々に意欲的っで刺激的な一台だったから……アメ車党でもある戒斗はその鋭角的な、まるでステルス戦闘機のようなフォルムをよく覚えていた。

「イイ車だ……」

 店に入ってきた、そんなC8コルベットの機影を戒斗がぼうっと羨望の眼差しで眺めていると。

 すると――――その車から降りてきたのは。

「……おい、マジかよ」

「あれ、有紀さん?」

 唖然とする戒斗と、その声に気付いて振り向いたアンジェ。二人が見つめる先、窓の外に停まるC8コルベットから、白衣を翻して降りてきたのは――――あろうことか、あの篠宮(しのみや)有紀(ゆき)だった。

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