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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-05『オペレーション・デイブレイク』
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第十一章:オペレーション・デイブレイク/03

「よおし、主役のご登場だ! 野郎ども、盛大に歓迎してやれ!!」

 崩落した屋根からセラとともに廃倉庫の中へと落下したバット・バンディット。それを出迎えたのは、薄暗い倉庫の中で息を潜めていたSTFヴァイパー・チームだった。

 そして、今の爆発も彼らの手によるものだ。

 バットの落下地点を中心に、弧を描くような陣形で待ち構えていたヴァイパー・チーム。彼らが事前に天井裏へとセットしていたC4爆薬を起爆し、屋根の一部を崩落させることで……奴を逃げ場のないこの廃倉庫の中へと叩き込んだのだ。

 飛行型のバット・バンディットにとって、閉所である廃倉庫はまさに死地も同様。そんな場所へと奴を叩き込んだのも、全て計算の内だったが……しかし、これだけが手札じゃない。

「ッ……!!」

 ウェズの号令に従い、バットを取り囲むヴァイパー・チームが一斉に動き出す。

 戒斗もまたそれに従って、携行していたスタン・グレネードの安全ピンを抜いた。

 左利きの彼の場合、逆手持ち……つまり上下を逆にした格好でピンを抜くのが手榴弾の作法だ。故に戒斗はその持ち方で安全ピンを抜くと、そのまま左手を振るってスタン・グレネードを投げつける。

 そうすれば、他の隊員が投げたスタン・グレネードも次々とバットの足元に転がり……それが奴の眼前で一気に炸裂した。

 ――――閃光、そして轟音。

 視界が白く焼け付くほどの強烈な瞬きと、鼓膜が突き破られそうなぐらいの爆音が至近距離からバット・バンディットを襲う。

 するとバットは喰らった途端に物凄い叫び声を上げ、膝を折りこそしなかったが……しかし、千鳥足を踏みながら猛烈に苦しみ出す。両手で押さえた眼と、そして耳から血を流しながら。

「撃ちまくれ! 一気に畳み掛けるぞ!!」

 そうしてバットが苦しみ始め、混乱状態に陥ったところで、ウェズや戒斗を始めとした全員が一斉射撃を始める。

 何十挺ものMCX自動ライフルが火を噴き、無防備なバット・バンディットを襲う。

 ライフル弾の豪雨を一身に浴びるバットは、両眼を押さえたまま身体中から火花を散らし、更に悶え苦しむ。加速度的に大きくなっていくバットの絶叫は、一秒ごとに奴が瀕死の状態へと追い込まれていることを暗に告げているようだった。

「お嬢ちゃん、トドメは任せたぜ!」

 そうして全員が弾倉ひとつ分を全弾叩き込んだ頃、全身を撃ち抜かれたバットが死にかけの様相でたたらを踏む中……ウェズは叫んだ。

「ええ……!!」

 そんなウェズの合図とともに、一歩引いた場所に待機していたセラが飛び出す。

 ひゅんっと風を切って飛び出したセラは、虫の息になったバット・バンディットに肉薄し。そうすれば虚空から呼び出したコンバット・ナイフを左手に逆手持ちで握り締める。

 そうすれば、握り締めたナイフの刃に激しい雷撃を纏わせた。

「この間の借り、キッチリ返してあげるわ……!!」

 バチバチと稲妻が迸るナイフを左手に握り締め、セラは不敵な笑みでそう告げると――――その刃を鋭く閃かせ、一気にバットを斬り裂いてみせた。

 ――――『ブレイク・ダウン』。

 神姫ガーネット・フェニックス、基本形態ガーネットフォームのもうひとつの必殺技だ。

 雷撃を纏わせたコンバット・ナイフで斬り裂き、相手を一刀の下に斬り伏せる必殺の一撃。それをモロに喰らったバット・バンディットは苦しみ悶えながら、更に何歩か後ろにたたらを踏むと…………。

「キィエエエエエ――――――ッ!!」

 セラの背後で、断末魔の雄叫びを上げながら――――そのまま、大爆死を遂げた。

「……借りは、返したわよ」

 内側から爆ぜるように爆死したバット・バンディットの上げた爆炎を背に、その真っ赤な炎に照らされながら……セラは振り向かぬまま、ただ一言だけを呟く。

「やったな、嬢ちゃん!」

「やるじゃねえか!」

「流石は俺たちの守護天使ガーディアン・エンジェルってか……キメてくれるぜ!!」

 そうしてセラが見事にバット・バンディットを撃破してみせれば、それを見ていたウェズやヴァイパー・チームの隊員たちは大歓声で彼女を出迎える。

『……作戦終了、皆さんお疲れ様ッス』

『ご苦労だ。さあ、帰還してくれ』

『皆、本当によくやってくれた。バット・バンディットの撃滅を以て本作戦、オペレーション・デイブレイクは完了とする。……本当に、よくやってくれた』

 そんな風にセラがSTFヴァイパーの面々に出迎えられる傍ら、少し離れていた位置からそれを眺めていた戒斗の左耳……嵌めたインカムから聞こえてくるのは南の報告と、そして有紀と石神の労いの言葉だ。

「……何事も無く、終わってくれたか」

 インカムから聞こえてくる労いの言葉や、ウェズたちに出迎えられるセラの様子を遠巻きに眺めながら、戒斗は安堵した顔でボソリとひとりごちる。

 どうやら待機して貰っていたアンジェの出番も、Vシステムの出番も無くて済みそうだ。

 まあ、出番が無くて済むならそれに越したことはない。アンジェや自分の出番がないということは、即ちイレギュラーも無く作戦が無事に終了したということだ。予定通りにコトが運び、そして終わってくれるなら……それが一番だ。

「……ん?」

『? 戒斗さん、どうかしたんスか?』

「ちょっと待て、この音は…………?」

 だが、そんな喜びと安堵も束の間――――遠くから甲高いエグゾーストノートが聞こえてきたかと思えば、一台のバイクが唐突に廃倉庫の中へと猛スピードで突っ込んできた。





(第十一章『オペレーション・デイブレイク』了)

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