第九章:光の差す場所へ/02
一方、翡翠真を独り残して学食を駆け出していった戒斗は、そのまま大学の駐車場まで走ってきていて。不必要なまでに広い駐車場の端に停めてあった愛機Z33に飛び乗れば、差したキーを捻ってエンジンを始動させつつ……同時に左耳にスマートフォンを当て、何処かに電話を掛けていた。
『…………なによ、こんな時間に。デリカシー無いわね。こちとら授業中よ? 上手く抜け出すの大変だったんだから……』
電話の相手はセラだ。どうやら向こうは既に昼休みが終わり、丁度五限目の授業中だったのを……上手く抜け出して、電話に出てくれたらしい。
だからか、応答するセラの声は何処か不機嫌そうだ。
「方法が分かったんだよ!」
そんな不機嫌そうな声でセラが電話に出た途端、戒斗は興奮を隠そうともしない大声で彼女に叫ぶ。
『方法? 方法って何のことよ?』
話の意図が全く掴めず、首を傾げるセラ。戒斗はそんな彼女に「ああ!」と力強く頷き返し、続けてセラにこう言った。
「真がヒントをくれた……これでどうにかなる!!」
『はぁ? 真? 真って一体誰よ? それにどうにかなるって……ちょっと戒斗、マジにアンタ何の話してんのよ?』
「バンディットだよ!」
『バンディット?』
「ああ、俺たちがこの間戦った、あのコウモリ野郎だ!」
『……バット・バンディットの対処法なら、有紀が今頃考えてくれている頃だけれど。それがどうかしたの?』
「だから、分かったんだよ! アイツへの一番冴えた対処方法が!」
やはり興奮気味な調子で戒斗が言うと、セラはやっと戒斗の話を理解したらしく……今までの不機嫌な調子から一転して、電話越しにも分かるぐらいにシリアスな雰囲気に変わる。
『…………聞かせて頂戴』
そんな神妙な雰囲気で、真剣な声音になってセラが問えば。戒斗は彼女に対して大声でこう告げた。
「こんなこと、すぐにでも気付くべきだった――――コウモリ野郎は光にすこぶる弱いんだよ!!」