第四章:NIGHT RAID/03
「そのテクニック……一体何処で身に着けたんだか!!」
M727を撃ちまくりながら、戒斗は時折苦戦しつつも……コフィン・バンディットを一体、また一体と的確に撃破していく。
しかも、生身でだ。一体ずつ的確に屠っていく、そんな戒斗の戦いぶりを横目に見つつ。セラは目の前のバット・バンディットと格闘戦を繰り広げながら、そんな感心の言葉を彼へと投げ掛けていた。
「気にするな……!!」
戒斗はそれに答えつつ、右手で弾倉をグリップ代わりに握り混み、M203グレネード・ランチャーを発砲する。
すると、四〇ミリの対バンディット戦用・特殊グレネード弾が腹に直撃したコフィンは……そのまま腹から大爆発。細かな肉片と赤黒い血煙を上げながら、爆炎の中へとその身を散らしていった。
「セラ、君は自分の戦いに集中しろ!」
「そうさせて貰うわ、アンタになら安心して背中を預けられる……!!」
その後もM727を撃ちまくり、弾切れになった隙はバッと懐から抜いたシグ・ザウエルP226自動拳銃を連射して補う、そんな戒斗の戦いぶりをチラリチラリと眺めつつ……セラもセラで、彼女自身の戦いを続けていく。
「って言っても――――」
回し蹴りの三連撃を喰らわせて翻弄しつつ、隙を見てバット・バンディットの腹にショットガンを突き付け……撃ち放つ。
時には左手に出現させたコンバット・ナイフで斬撃をお見舞いし、火花を散らせながら……そんな戦いの中で、セラはどうにも拍子抜けしたような気持ちになっていた。
「――――幾らなんでも、弱すぎない?」
そう、相手があまりにも弱すぎるのだ。
とてもじゃないが、これがバンディットとは思えないぐらいに弱い。セラも何だかんだと戦歴の長い、言ってしまえばベテランに類するような神姫だが……こんなに弱い敵は、こんなに歯ごたえのない敵と遭遇するのは、今までで初めてのことだ。
それこそ、戒斗に任せているコフィンの方が幾らか歯ごたえがあるぐらいには弱い。流石に飛ばれると厄介だが……それでも、こうして陸戦に徹している分には、このバット・バンディットはあまりにも弱すぎるのだ。
一応、普通の銃火器じゃあ対応が厳しいバンディットのはずだから、今こうして自分が相手をしているが……下手をすると、生身の戒斗と代わった方が戦力比的には丁度良いんじゃあないかと、セラにそう思わせてしまうぐらいには弱い敵だった。
「ま、楽に越したことはないけどね……!!」
だからといって、手を抜く理由にはならない。
故にセラは、例え相手が拍子抜けするぐらいの雑魚だとしても……一切手を抜かないまま、少しずつ着実にバット・バンディットを追い詰めていく。
左手のナイフを投げ捨て、再びショットガンを呼び出し……両手で二挺体制に移行。するとセラは一発撃ってはクルリとショットガンを回して再装填しつつ、同時にもう片方を撃ち放ち。そうしてテンポ良く、まるで円舞曲を踊るかのようにくるくると回りながら、バットへ確実にダメージを蓄積させていく。
「さあてと、そろそろキメましょうか……!!」
そうしてバット・バンディットを翻弄しつつ、ダメージが上手い具合に重くなってきた頃合いだと判断すると。セラは両手のショットガンに雷撃を纏わせ……そのまま必殺技『ノゥ・マーシィ』を、今日は二挺スタイルで豪勢にブッ放してやろうとしたのだが。
しかし、そうして彼女がショットガンに稲妻を纏わせ始めた瞬間――――遠くから、こちらに近づいてくるバイクの甲高い音色が聞こえてきた。
「アレは……まさか、美雪!?」
セラが気付くより前、猛スピードで滑り込んでくるバイクの音にいち早く気付いた戒斗が振り向くと。すると――――そこにあったのは、バイクに跨がった風谷美雪の姿だった。