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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-05『オペレーション・デイブレイク』
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第一章:揺れ動く心、不穏の気配と戸惑いと/03

 ――――その頃、篠崎邸では。

 人里離れた場所に建つ豪華絢爛な洋館。そんな館の広間にはいつものように篠崎財閥の現当主・篠崎(しのざき)十兵衛(じゅうべえ)と、その孫の篠崎(しのざき)香菜(かな)、そして篠崎(しのざき)潤一郎(じゅんいちろう)が集まっていて。例によって長テーブルの誕生日席に十兵衛が座り、その近くに潤一郎も座る中……今まさに、香菜が現状の報告を十兵衛にしている最中だった。

「先日の成果は上々ですわ、お爺様。グラスホッパーの修復作業も進行中、次の計画も既に始まっています。ひとつ気掛かりな点があるとすれば、あの新たな神姫……ジェイド・タイフーンのことですが。しかし、そちらも問題ありませんわ」

「うむ、よくやったね香菜」

 香菜の報告に、十兵衛は満足げな顔を浮かべ。その後で「香菜、次の計画とやらについて話しておくれ」と十兵衛が言うから、香菜はニコリと微笑んで説明を始めた。

「次の計画というのは、バット・バンディットの実戦テストですわ」

「ちょっと待ってくれ姉さん、僕の記憶が確かなら……バットは確か、暗闇でしか活動できない欠陥品とか言ってなかったかい?」

 香菜が説明を始めた直後、潤一郎が珍しく口を挟んできて。そんな風に怪訝な顔をして言う彼に対し、香菜は露骨に嫌そうな顔をしてこう言った。

「馬鹿とハサミは使いようという言葉がありましてよ、覚えておきなさい潤一郎」

 突き放すような調子で言う香菜に、潤一郎は「ま、姉さんは僕と違って頭が良いし、ちゃんと考えがあるんだろうけどね」と言って肩を揺らすと、また傍観者の立場へと戻っていく。

 そうして潤一郎が引っ込む中、香菜はコホンと咳払いをして。表情も声のトーンも上機嫌なものに戻すと、改めて十兵衛に説明を……バット・バンディットとやらの実戦テストに関する説明を始めた。

「バットはご存知の通り、性能こそ低いですけれど、でも暗殺用としては悪くないバンディットですわ。機動性も高いですし、より良い使い方を模索してみたいんですの」

 香菜の説明を聞き、十兵衛は「ふむ」と思案するように暫しの間、唸る。

「ふむ……面白い。構わんよ香菜、思う通りにやってみなさい」

 そうして思案をした後、十兵衛は好々爺(こうこうや)のように穏やかな笑みを浮かべながら香菜にそう言って、彼女の計画を認めていた。

「ありがとうございます、お爺様」

 香菜は許可してくれた祖父にペコリ、と恭しくお辞儀をする。

 そんな彼女に対し、潤一郎は全く別のことを問いかけていた。

「そういえば姉さん、『アルビオン・システム』の調整は出来たのかな?」

 そんな弟の問いに、香菜は不機嫌そうな顔を浮かべながら「……ええ」と頷き、

「プロトアルビオンの調整なら、とっくに完了していましてよ。折角ですわ、潤一郎も出たらどうかしら?」

「いいね、やってみるよ姉さん」

 潤一郎が爽やかな笑顔で頷くと、香菜はやれやれといった風に肩を竦め。そうすれば、テーブルの上……潤一郎の前へと黒いアタッシュケースをゴトンと置く。

 そのアタッシュケースを見て、潤一郎は子供のような笑顔を浮かべ。すぐにアタッシュケースを手に取ると、ロックを解除して開いてみせる。まるで新しいおもちゃを買って貰った子供が、包みを開くときのような……そんな無邪気そのものな顔で。

 そうして、無邪気な笑顔を浮かべる潤一郎が開いたアタッシュケース。その中には――――真っ白い、巨大な拳銃のような物が収められていた。





(第一章『揺れ動く心、不穏の気配と戸惑いと』了)

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