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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-04『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』
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第十八章:復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン

 第十八章:復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン



「行くぞ! ……とうッ!!」

 神姫へと変身を遂げた風谷美雪、ジェイド・タイフーンとなった彼女は雄叫びとともにダンプトラックの上から飛び降りると、まずは群がってくるコフィンの残党と戦い始めた。

 美雪は武器の類を何も呼び出さないまま、さっき生身でやっていたのと同じように素手でコフィンたちと戦う。

 だが……彼女の場合、その身体そのものが武器に等しい。美雪は自身の周囲に群がった十数体のコフィン・バンディットに対し、蹴りを主体とした徒手格闘を繰り出して。研ぎ澄まされた一撃一撃を叩き込むと、ものの一分にも満たない短時間で十数体のコフィンを瞬殺してしまった。

「タアァァァァッ!! ……どうした、その程度かッ!!」

 正面に居たコフィンを正拳突きで爆散させ、それから殆ど間を置かずに最後の一体に裏拳を叩き込み、これも爆発四散させ。全てのコフィンを撃破すれば、美雪は雄々しく叫ぶ。

 すると、そんな美雪の常軌を逸した戦闘力と気迫に気圧(けお)されたのか、スコーピオンは恐怖で後ろに後ずさっていて。美雪はそんなスコーピオンをギッと睨み付けると、後ずさるサソリ怪人の方へとゆっくり歩み寄っていく。まるで、次は貴様だと言わんばかりの鬼気迫る眼付きで睨みながら。

「怖いか? そうだろうな……でも、皆はもっと怖かったんだ……!!」

 ゆっくりと、一歩ずつ歩み寄る美雪。彼女のあまりの気迫に気圧(けお)されて、恐怖に瞳を潤ませながら後ずさるスコーピオン。

「お父さんも、お母さんも、燐も……!! 誰も、何も悪いことなんてしていなかった…………!!」

 一歩ずつ、美雪は確実に距離を詰めていく。右手のタイフーン・チェンジャーから強烈な風が巻き起こる中、仇敵との距離を一歩ずつ、着実に。

「それを、お前が奪ったんだ! 私たちの幸せを……何もかも、お前が奪ったんだ!!」

 殺意に満ちた声で叫ぶ美雪を前に、遂にスコーピオンは後ずさりをやめた。

「シュ、シュ――――ッ!!」

 目の前の神姫に対しての恐怖心を必死に押さえ付けつつ、スコーピオンは尻尾を翻し、美雪に対して毒針を発射するが…………。

「とうッ!!」

 美雪は飛来したそれを、素手で簡単に弾き飛ばしてしまった。

 そんな意味不明な光景を目の当たりにして、遂にスコーピオンは恐怖に怯えた声を漏らす。まるで助けてくれと、美雪に対して命乞いをするかのように。

 だが――――彼女が、風谷美雪が。復讐の神姫が、その程度で許すはずがない。

「許さない、お前は私がこの手で殺す!! 他でもない、この私がッ!!」

 ドスの利いた声で叫んで、美雪は地を蹴ってスコーピオンへと飛びかかる。

「とうッ!!」

「シュッ!? シュー……シュルルルルッ!?」

「ふっ、たぁっ!! てりゃぁぁぁっ!!」

「シュ、シュ――――ッ!?」

 強烈な飛び蹴りでまずはご挨拶。後ろにたたらを踏んだところを更に回し蹴りの三連撃で追撃し、更に鳩尾(みぞおち)への正拳突きにアッパーカット、肘鉄から間髪入れずに顎先へと放つ痛烈な裏拳を見舞ってやる。

 更に首根っこへと鋭い横薙ぎのチョップを喰らわせて怯ませれば、醜悪な顔面には強烈なストレートをお見舞い。そのまま後頭部を押さえ付けつつ、続けて膝蹴りを顔面に見舞い……やはり後頭部を掴んだまま、もう片方の拳で顔面を何度も、何度も何度も何度も殴り付けてやる。

 それこそ、顔の原型が無くなるまでだ。スコーピオンの顔面がぐちゃぐちゃに砕けた頃、やっとこさ後頭部から手を放した美雪は、最後にダメ押しと言わんばかりにスコーピオンの首元へと両手で鋭いチョップを叩き込み……怯んだのを見て、一旦飛び退きスコーピオンとの間合いを取る。

「シュ、シュ……」

 風谷美雪の圧倒的な格闘術の前に翻弄され、もう殆ど声も出せないぐらいの大ダメージを負わされたスコーピオンが、死にかけの鳩みたいなか細い声を出しながら千鳥足を踏む。

「これで、トドメだ……!!」

 そんな風に無様を晒すスコーピオンを睨みながら、一歩飛び退いた美雪は呟いて。そうすれば、変身したときと同じ……両手を身体の下でクロスさせる構えを取った。

「サイクロン・コンバート……フルパワーッ!!」

 すると、彼女の右手……タイフーン・チェンジャーに凄まじい風が集まっていく。

 風車のような形のエナジーコアが回転し、集めた猛烈な風のエネルギーを圧縮し……やがて、それは美雪の右足へと蓄積されて――――。

「シューッ!!」

「とうッ!! 喰らえ、タイフーンシュートッ!!」

 そうすれば、美雪は破れかぶれに突撃してきたスコーピオンに対し、風のエネルギーを蓄積した右足で強烈な回し蹴りを叩き付けた。

 ――――『タイフーンシュート』。

 神姫ジェイド・タイフーンの必殺技、集めた風のエネルギーを込めた蹴りを叩き付ける、一撃必殺の必殺技。

「シュ、シュ、シュ……シュ――――――ッ!!」

 そんな必殺技の直撃を喰らったスコーピオンは、何歩も後ろにたたらを踏み。そして最後には天を仰ぎながら、ガックリと膝を折って――――大爆発の中に消えていった。

「……お父さん、お母さん。憐。…………やったよ、仇は取ったから」

 スコーピオンの起こした大爆発を背に、回し蹴りからの残心の構えを取りながら。美雪は独り、呟いていた。

 彼女の綺麗な翠色の瞳から、涙が流れることはない。美雪の涙は、既に枯れていた。





(第十八章『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』了)

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