第十四章:Through the Fire/03
崖の上から飛び降り、遥が状況に介入してきた。
彼女は崖の上から眼下の状況を見て、二人が劣勢である事を知り。そうすれば二人に助太刀すべく、こうしてこの場に現れたのだ。
基本形態のセイレーンフォームで現れた彼女は、飛び降りた勢いを利用し……ジリジリとセラの背後に忍び寄り、今まさに彼女を背後から羽交い締めにしようとしていたコング・バンディットに対し、聖剣ウィスタリア・エッジで斬り掛かることで怯ませていた。
「! アンタ、どうしてアタシを……!?」
突然現れた蒼の流星、神姫ウィスタリア・セイレーン。
彼女の姿を目の当たりにしたセラは、彼女が自分を助けたことに気付き……驚いた様子で眼を見開く。
「誰かを助けるのに、理由なんて必要ありません。……お怪我はありませんか、ガーネット・フェニックス」
すると遥はバッと右手のウィスタリア・エッジに軽く空を切らせつつ、凛とした表情で横目の視線を投げ掛けながら、セラにそう言った。
「……ありがと、セイレーン。お陰で助かったわ」
そんな彼女に対し、セラは今まででは考えられないぐらいに素直に礼を言う。
とすれば、礼を言われた方の遥が驚き。困惑した顔で「フェニックス、貴女……少しだけ、性格変わりましたか?」と呟く。
セラはそれに「うっさい」と照れくさそうに返し、
「ただ……吹っ切れただけよ。あるヒトに目を覚まして貰ったの」
と、照れ隠しするように遥から目を逸らしつつ、続けてそう呟いた。
「……そうでしたか」
「今まで悪かったわね、セイレーン」
「いえ、分かって頂けたのなら構いません。それより、今は……!」
遥がウィスタリア・エッジを構え直す傍ら、セラもまた表情をシリアスなものに戻しつつ「ええ」と頷き、
「アンタには聞きたいことが山ほどある。でも……今は目の前の敵に集中しなくっちゃあね。だからセイレーン、アタシたちに協力してくれるかしら?」
「こちらこそ、お願いします」
互いに視線を交わさぬまま、言葉だけを交わし合い。背中を合わせるセラと遥。
そんな二人の様子を間近で見て、アンジェは嬉しそうに微笑んでいた。
「二人とも、やっぱり仲直り出来たね……!」
そうすれば、アンジェは至極嬉しそうな顔でそう言う。
「じゃあ、僕も負けていられないな……!」
とすると、アンジェは速度特化のヴァーミリオンフォームにフォームチェンジをする。遥が加勢してくれた以上、自分が速度で翻弄した方が良いと判断したが故のフォームチェンジだ。
「行くよ、二人とも!」
「アンタに合わせるわ、セイレーン!」
「承知しました……!」
横ではセラが満を持して重砲撃形態・ストライクフォームにフォームチェンジをし。尻尾状のアンカーを地面に打ち付けた彼女が猛烈な援護射撃を繰り出す中、遥とアンジェが三体のバンディットへと飛びかかっていく――――!!