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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-04『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』
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第七章:少女は風に誘われて/09

「おっ、来た来た」

「二人とも、お待たせっ」

 そうして席に通されたセラと美雪が、ひとまず適当な注文をした後。五分ぐらい経ってから、戒斗とアンジェが店の奥から顔を出してきた。

 最初から私服の戒斗はともかくとして、アンジェも今は私服姿だ。

 グレーのTシャツの上から、肘下で袖を折った黒いジャケットを羽織り。下はデニム生地のショートパンツに、四〇デニールぐらいの黒タイツ。履き物は焦げ茶色の革のロングブーツといった出で立ち。そんな風な格好で、アンジェは美雪たちの前に姿を現していた。

 二人より早く帰ってきたということもあって、アンジェは一旦自分の家に帰り、私服に着替えて店に戻ってきている。だからこその私服姿の出で立ちというワケだった。

 ――――閑話休題。

「二人とも、隣良いかな?」

「はいっ! それにしてもアンジェさん……その服、すっごく似合ってますね」

「えへへ、そうかな?」

「とっても良いと思いますっ! アンジェさんらしくて、その……とっても素敵ですっ!」

「んふふー、ありがと美雪ちゃんっ。実はね、前にカイトが買ってくれた服なんだー」

「そうなんですか?」

「うんっ。カイトが選んでくれて、凄く似合ってるからって……気付いたら、僕が知らない内に買っててくれたんだ。あの時は嬉しかったなぁ、ホントに……」

「なんつーか……戒斗らしいわよね、そういうのって」

「あ、セラも分かる?」

「何となく、だけれどね。確かにやりそうだわ、うんうん」

「……セラ、それどういう意味だ?」

「どうって、言葉通りの意味よ? アンタらしいなって思っただけ」

「ま……そうかもな」

 アンジェは美雪の隣の席に座り、戒斗はそんな彼女の座る椅子、背もたれに小さく寄りかかる形で寄り添い。そうしながら、皆で他愛のない会話を交わしていた。

「戒斗さんらしいですね。……お待たせしました。カップが熱くなっていますので、気を付けてくださいね」

 そうしていると、遥も二人が注文した品を……二人分の珈琲と、後はセラが奢るからと言って注文した、二人分のサンドイッチ盛り合わせの皿をそれぞれ出しながら、自分も話に加わってくる。

「ん、あんがと遥」

「ありがとうございます。……わぁ、凄く美味しいですね……!」

「でしょう? 遥の淹れてくれる珈琲はホントに絶品だからね。実はアタシもお気に入りなのよ」

「ふふっ、ありがとうございます♪」

 初めて飲む、この店の珈琲に舌鼓を打つ美雪と、横で小さく鼻を鳴らしながら同様に珈琲を飲むセラ。そんな二人を笑顔で見つめつつ、遥は嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

 そうして遥も加わりつつ、皆で色んな話を交わし合った。

 例えば、アンジェが戒斗の影響で特撮マニアになってしまったことや、そこから広がって……昔、子供の頃にアンジェを守ってくれた戒斗の昔話も。

 基本はアンジェが楽しそうに思い出話を話す傍らで、セラが珈琲を啜りながら相槌を打ち、遥も同じように笑顔で頷き。話すアンジェの背後で戒斗が小さく肩を竦め、そんな皆の様子を見つめつつ……美雪が笑ったり、驚いたり。

 店も普段より空いていたから、遥も時折接客に出て行く程度で。美雪はセラやアンジェ、戒斗や遥に囲まれながら……それこそ何時間も、楽しいひとときを過ごしていた。

 そんな楽しい会話の中、美雪は至極楽しそうに微笑んでいた。年相応の少女のように、曇りひとつない純真無垢な笑顔を。

 そうして笑顔を浮かべながら、美雪は同時に思っていた。昨日の出来事は辛かったけれど、でもお陰でこんなに良いヒトたちに……楽しいヒトたちに出逢えた。だから、あの出来事も……決して悪いことばかりではなかったんだな、と。

 楽しそうに話す皆を間近で見つめながら、美雪は何気なく、純粋な気持ちで思っていた。こんな風に楽しい時間が、永遠に続けば良いのにな――――と。





(第七章『少女は風に誘われて』了)

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