表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-04『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』
165/374

第七章:少女は風に誘われて/08

 カランコロン、と来客を告げるベルが鳴る。

「いらっしゃいませ。……セラさん、また来てくれたんですね」

 いつものように接客をしていた遥が、ベルの鳴る店のドアの方に振り向くと。するとドアを潜って店に入って来たのは、遥にとっても待ち侘びていた彼女……セラだった。

 後ろには、一緒にバイクに乗せてきた美雪の姿もある。放課後を迎えて直接店に来たのだから当然だが、二人とも学園の制服姿だった。

 一八五センチの凄まじい長身なセラと、かたや一五六センチと少し小柄な美雪の組み合わせ。まして美雪が半分セラの身体に隠れているような形だから、身長差二九センチの二人は……まるで歳の離れた姉と妹、いいや母親と娘ぐらいの、そんな奇妙な雰囲気を漂わせている。

 遥はそんなセラと美雪の二人を見つめながら、柔らかな笑顔で二人を出迎えていた。

「昨日は色々アタシの話聞いてくれてありがとね。んで、こっちが風谷美雪。多分アンジェ辺りから聞いているでしょう?」

「はい。先程帰ってこられた戒斗さんと、それにアンジェさんからお話は伺っていますよ」

 美雪の肩を小さく叩きつつセラが言った言葉に、遥は笑顔を浮かべながらそう返す。

 ――――実を言うと、戒斗とアンジェはずっと前に帰ってきていた。

 あの後すぐに出発した戒斗たちと違い、セラと美雪のバイク組は、隠してあるバイクを取りに行く時間があったが故の時間差だ。だから、セラたちが来店するずっと前に二人はもう家に帰ってきていたのだった。

「かっ、風谷美雪ですっ。ええと、昨日は戒斗さんたちにお世話になって……!」

 セラに紹介された美雪が、初対面の遥に……少し緊張しているのか、微妙に上擦った声で自己紹介をする。

 そんな彼女に優しく微笑み返しながら、遥が「はい、伺っていますよ」と美雪に話しかける。

「お二人とも、とても楽しそうに話していましたから」

「楽しそう、ですか……?」

「美雪さんとの、楽しい思い出話ですよ」

 そう言って柔に微笑んでから、遥は改めて美雪に自己紹介をした。

「自己紹介が遅れてしまいましたね。私は間宮遥。戒斗さんの家に居候させて頂いている身です」

「よろしくお願いします、遥さんっ。というか、居候って……?」

「私、いわゆる記憶喪失ですから。この家の前で倒れていたところを戒斗さんに拾って頂いて、こうしてこの家に居候させて貰っているんです」

「そうでしたか……」

 遥の事情を聞いて、美雪が何とも言えない表情を浮かべる。

 きっと、というかまず間違いなく、記憶喪失の人間と直に話すのはこれが初めてのことなのだろう。しかも遥がサラッと言ってのけたものだから、美雪が微妙な顔を浮かべるのも当然といえば当然の話だ。

「さあ、立ち話も何ですから、お二人とも席にどうぞ」

 遥はそんな風に戸惑う美雪と、そして傍らに立つセラをカウンター席に(いざな)った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ