表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-04『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』
163/374

第七章:少女は風に誘われて/06

 CQB訓練終了後、隔壁を潜って元の部屋に戻ってきた戒斗は、身に着けていたVシステムをやはり手作業で外していた。

「お疲れ様だ」

 丸椅子に腰掛けた戒斗が右腕の装甲を傍らのテーブルに置く中、横から紙コップに入った珈琲を彼に差し出しつつ、有紀がそう言って労ってくれる。

 戒斗は彼女の差し出してくれた紙コップを「ああ」と頷きつつ受け取り、中途半端にVシステムを身に着けた格好のまま、温かい珈琲に口を付けた。

「それにしても――――」

 珈琲をちびちびと飲みながら、横で一緒になって珈琲を飲む有紀の顔を小さく見上げつつ、戒斗は彼女にこんな言葉を投げ掛けてみる。

「今にしろ、トラックに積んであるフルオート・ハンガーにしろ。イチイチひとつずつ着けたり外したりせにゃならんのは、どうにも面倒だな」

 そんなことを言ってみると、有紀は「はっはっは」とおかしそうに乾いた高笑いを上げ。続いて「確かにね」と頷き、今の戒斗の言葉に同意の意を示す。

「でも、今はこれが精いっぱいなんだ。君や私の好きな特撮のように、アイテムひとつで簡単にシステムを着装……というのは、少なくとも今日の時点では無理だね」

「主任もホントに好きッスよねえ、そういうヒーロー番組っていうの? 俺にはちんぷんかんぷんッスよ」

 続いて有紀が呟けば、少し離れた場所にあるデスクで忙しなくキーボードを叩いていた南がボソリとそんなことを口走っていて。それに有紀は「だろうね」と肩を竦めて返す。

「君はそういうの、あんまり得意じゃなさそうだ」

「そうッスよー。だから主任に話振られてもよく分かんないんスよ。子供の頃は観てたっちゃ観てたんですけどね……内容なんか殆ど覚えてないッスよ」

「……ま、無理強いはしないさ。気が向いたときにでも観てみるといい。その時になったらオススメを教えてあげようじゃあないか」

「期待せずに待っててくださいッスよ」

 二人がそんな会話を交わす傍ら、戒斗は身に着けていた残りの装甲も全て外し終えていて。ふぅ、と息をつきながら左手首に巻いた腕時計、銀色に光るステンレス製のそれにチラリと視線を落としてみる。

 三本の針が刻む時刻は、何だかんだと良い頃合いになってしまっていた。もう少ししたら……一息ついたぐらいのタイミングで、また学園に行かなきゃならない。

「悪いな先生、それに南も。もう少ししたらアンジェを迎えに行かなきゃならないんだ。悪いが、今日は焼肉には付き合えそうにない」

「なあに、構わないさ」

 戒斗の言葉に、有紀はフッと笑んで答える。

「それにしても、君も本当に律儀な男だね…………」

 続いて有紀はそうも言うから、戒斗も戒斗で小さく肩を竦めつつ。ただ一言「違いない」とだけ返していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ