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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-04『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』
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第七章:少女は風に誘われて/03

「戒斗くん、着心地はどうだい?」

「悪くない。手作業でも着られるとは思わなかったがな」

「元はそういう前提で開発していたからね。便利なフルオート・ハンガーは助手くんの発想だ」

「そうなのか?」

「はいッス。車の工場にロボットアームがあるッスよね? それ見てたら思いついたんスよ」

 そうしてアンジェを学園に送り届け、美雪と別れてから数時間後。所変わって都市部にあるP.C.C.S本部ビルの地下施設の一角。そこで戒斗は有紀と南の補助を受けつつ、Vシステムを手動で身体に装着している最中だった。

 普段なら支援用トラックに搭載されているフルオート・ハンガーを使って手軽に全自動で装着できるのだが、今日はトラックを使えない事情があった。であるが故に、こうして漆黒の装甲をひとつずつ手作業で身体に装着していっているというワケだ。

「それにしても……改めてマニュアルを読み返してみたんだが、このVシステムってのは本当にとんでもない代物なんだな」

 右の前腕部分の装甲パーツを装着しながら、何気なしに戒斗が言うと。すると傍で様子を見守っていた有紀が「当然だよ」としたり顔で頷く。

「何せ、あんな化け物連中と真っ正面から切った張ったしなきゃならないからね。それ相応のスペックは必要なのさ」

「この装甲……確かNXハイパーチタニウムだったか」

「正確に言えば、我々P.C.C.Sが開発した超硬度の特殊合金、NXハイパーチタニウム合金とセラミックを組み合わせた複合装甲だ」

「そうそう、それだよ。見た目より軽い癖にあんだけの強度、一体どうなってるんだ?」

 戒斗は今まさに右腕に嵌めた装甲パーツに視線を落としながら、怪訝そうな顔で問うが。しかし有紀は澄まし顔で「企業秘密だ」と言うだけで、肝心なところをはぐらかしてしまう。

 実際――――ヴァルキュリア・システムは異常なまでの性能を有していた。

 漆黒の装甲は今まさに有紀が説明した通り、P.C.C.Sが開発したNXハイパーチタニウム合金とセラミックを組み合わせた、頑丈にして軽量な複合装甲。それ以外にも高度な弾道計算が可能なFCS……火器管制装置も備えているし、何より使える重火器類が生身では考えられないほどに強力な物ばかりだ。

 例えば、初戦闘時に使った六銃身の大型ガトリング機関砲、MV‐300E2レッドアイ。あのガトリング機関砲が使う二〇ミリ砲弾だって、本来は戦闘機が積むバルカン砲が用いるような、巨大で強力な砲弾だ。

 それ以外には、少し前の戦闘で使ったSV‐X2レギュラス大型狙撃ライフル。アレが使う三〇ミリに至っては、頑丈な戦車ですら平気で破壊するレベルの代物だ。薬莢を鷲づかみにして、ちょっとしたハンマー代わりにも出来そうなぐらいに巨大なカートリッジ。本来なら人間が撃てるような代物でないことは、その巨大な弾を見れば自然と分かることだろう。

 他にもVシステム用の装備は色々とあるらしいが、戒斗がマニュアルを眺めていた中で一番印象に残っていたのは……一二〇ミリの戦車砲をそのまんま持ち運ぶ、凄まじい兵装か。

 CVX‐1グリムリーパー大型滑腔砲というらしいが、マニュアルを読む限りだと、それは比喩抜きで戦車の主砲をまんま担ぐような馬鹿げた代物らしい。

 そんな物を担いで、安全にブッ放せるだけのパワーを有している超兵器。それこそが今まさに戒斗が身に纏う漆黒の重騎士、ヴァルキュリア・システムなのだ。

 それこそ、冗談抜きにたった独りで街ひとつを壊滅させられるレベルの能力を秘めた代物。それを装着していると思えば……戒斗は自然と、身が引き締まる思いだった。

「よし、これで着装完了だ。どうだね、戒斗くん?」

「問題なしだ」

 最後に有紀の手でヘルメットを頭に装着して貰った後、戒斗はVシステムに包まれた身体を軽く動かして動作テストをする。

 動きに問題はなさそうだ。全ての関節が違和感無く動いてくれている。一応はサーボモーターや人工筋肉を使ってパワーアシストが入っているらしいが、それを感じさせないぐらいに軽やかな動きだ。感覚としては、生身の時とそこまで差異はない。

「結構。だったらキルハウスに移動してくれ。早速訓練開始といこう」

「了解」

 戒斗は有紀に頷くと、そのまま両脚を動かし。すぐ傍にあった分厚い隔壁、独りでに開き始めたそれの奥へと歩いていった。

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