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幻想神姫ヴァルキュリア・ミラージュ  作者: 黒陽 光
Chapter-04『復讐の神姫、疾風の戦士ジェイド・タイフーン』
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第四章:君との幸せな日々が、永遠に続きますように――――。/04

 そうして電車に揺れること、およそ一時間。無事に都市部の繁華街に着いた戒斗は、手を引くアンジェに連れられるがまま、繁華街の中をあっちこっち連れ回されていった。

 着いて最初に行った先は、服飾店が建ち並ぶ一帯。まずはお決まりのウィンドウ・ショッピングという奴だ。

 とはいえ、最初に入った数件はどれもメンズ向けの店で。目をきらきらさせるアンジェに、例によって戒斗が着せ替え人形にさせられてしまっていた。数件回った中で、アンジェがチョイスした服をどれだけ試着させられたのか……記憶にないぐらいだ。多分、何十着と着させられている。

 当然、自分だけでなく彼女の服も見て回る。目に付いたレディース向けの服飾店に全て入るぐらいの勢いで連れ込んでは、さっきのお返しと言わんばかりにアンジェに取っ替え引っ替え試着して貰ったりした。

 その中で実際に購入したのは……アンジェのものを数着ぐらいか。殆どは本当に見て回るだけ、試着するだけといった具合だったのだが。最後に入った店で、最後に着せた服がアンジェ自身とても気に入ったらしく、気付けば彼女が自分で買ってしまっていた。

 P.C.C.Sの給金が思ったより弾んでくれているということもあり、戒斗としてはそれぐらいアンジェに買ってあげても良かったのだが……知らない内に自分で買ってしまっていたのだから仕方ない。

 ちなみに――――これは余談だが。二人とも店に入るたびに、接客に来た店員にこんなことを言われていた。

「とても素敵な方ですね。もしかして彼氏さんですか?」

「凄く可愛い……! ひょっとしてお兄さんの彼女さんだったりします?」

 とまあ、こんな感じのことを入る店全てで二人とも言われていた。

 前者がメンズ向けの店に入った際、アンジェが言われたこと。後者がレディース向けの店で戒斗が言われたことだ。どちらも互いが試着室で着替えている間に店員に囁かれたことで、それに対する二人の答えといえば――――。

「当然だよっ。カイトは僕の……えへへ……」

「……ま、そうかもな。君のご想像にお任せするよ」

 ――――こんな具合だ。

 即答しつつも顔を緩めてしまうアンジェと、いつものように斜に構えた感じに透かす戒斗。どちらもらしい(・・・)反応で店員に返していたとか。

 ――――閑話休題。

 そうしてウィンドウ・ショッピングを一通り堪能した後は、ちょっと食べ歩きみたいなこともしてみた。

 この一帯は都市部でも特に賑やかな繁華街ということもあってか、普通の食事処の他にもちょっとした軽食を提供する店が多かったりする。

 例を挙げるなら唐揚げだとか、タコスだとか。他にも奇妙なチョイスが多かったりするのだが、とにかくそんな感じの軽食類を二人で食べ歩きしてみたりなんかもした。

 そんな風に繁華街を歩き回った後は、ちょっとした休憩がてらにカラオケボックスに入ってみたりなんかもする。

 そこでどれぐらい過ごしたかといえば……ざっくり二時間ぐらいだ。

 歌う曲のチョイスは、アンジェの方は十代の女の子だけに今時なチョイスが多い……と思いきや、ちょっと古いポップスだったり洋楽だったり、後はアニメの主題歌だとか特撮ソングだとかが多かった。

 まあ、最後の二つに関しては彼女の趣味が趣味だけに納得だ。他は戒斗の趣味が影響しているというか、普段送り迎えの時にZ33のカーステレオで何気なく流していた曲に、いつの間にか彼女がハマっていたという節も多い。

 ちなみに、戒斗の方はといえば……もう今までの話で大体察せられているとは思うが、大概がかなり古い曲ばかりを選んでいた。

 邦楽なら一九八〇年代から、新しくても九〇年代。他は洋楽だとか、アンジェ同様にアニメの主題歌に特撮ソングなど諸々。最後の二つに関しても、戒斗の場合はアンジェよりもずっと古い……それこそ八〇年代とか九〇年代の作品で使われていた主題歌が特に多かった。

 基本、音楽に関しては戒斗の趣味はかなり古い。

 その辺りは彼自身、半分レトロ趣味が入ってしまっているから仕方ない節がある。

 なにせ車なら本当に好きなのは七〇年代のアメ車、いわゆるオールド・マッスルだし、他にもゲーム機なら八〇年代から九〇年代、黎明期のハードを集めていたりする。

 後者に関してはどちらかといえばハードマニアな節があるから、ソフトの方は言うほど集めていないのだが。とにかく戒斗は意外にレトロな趣味があるが故に、カラオケで選ぶ曲も古いものが多いという話だ。

 ――――少し、話が逸れたか。

 そうしてカラオケボックスで過ごすこと、大体二時間弱。満足して店を出た頃にはもう外は真っ暗になっていて、夜闇に支配された空の下……しかし明かりが煌々と輝く不夜の街の中、繁華街を歩いた二人は最後に夕飯を食べようと、また適当な店に入っていく。

 そこまで格調高くない、気兼ねのない店だ。殆どファミレス……というか完全にファミリーレストランな店に入り、いつしか腹の虫が鳴る程度には空いていた腹を満たすべく、戒斗とアンジェは二人で夕飯を食べることにした。

 こういう時、本当なら洒落たレストラン……それこそフランス料理とかの店に連れて行くべきなのだろうが、今更そう気を遣うような間柄でもない。寧ろこれぐらいの方が、お互い気兼ねなくて良いというものだ。そうして無理に着飾る領域を、二人はとうの昔に通り越しているのだから。

 …………そうした時間、何気ない幸せの中で、ふとアンジェはこんなことを思っていた。何処か祈りにも似たことを、彼と二人きりの時間を過ごす中で……アンジェは、何気なく思っていたのだ。

 こんな風に幸せな日々が、彼との幸せな日々が――――――どうか、永遠に続きますように……と。





(第四章『君との幸せな日々が、永遠に続きますように――――。』了)

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