第二章:もっと君を知れば/04
「んもー、セラってば何で僕を置いていくのさー」
先に行ってしまったセラにどうにかこうにかアンジェは追いつくと、スタスタと歩く彼女と横並びになって校舎へと歩きながら、不満そうに頬を膨らませていた。
「……別に、待つ理由もないでしょう?」
だがアンジェが追いついても、やっぱりセラの調子は何処か素っ気なくて。アンジェはそんな彼女に対し、わざとらしい感じに「酷いなあ」なんて言ってみる。
「…………」
しかし、セラは今の彼女の言葉にも反応せず。一瞥もくれないまま、無言のままセラは歩き続ける。
「あ、ところで今日の数学の宿題ってやってきた? 今日のは珍しく難しかったよねー」
「……ええ、そうね」
「でさ、セラはどうだったの――――」
と、アンジェがそこまで言い掛けた時だ。セラがチラリと横目の視線を……冷えた視線を金色の瞳から注ぎながら、アンジェに対してこう言ったのは。
「…………アンジェ、ごめんなさい。今は……ちょっと、誰かと話したい気分じゃないの」
そんなセラの拒絶する言葉に、アンジェはただ一言「……そっか」とだけ薄い笑顔で頷くと、それきり何も口にしないまま。ただ彼女と一緒に校舎まで歩いて行く。二人とも何も話さないまま、ただ黙ったままで。
そうして歩きながら、アンジェは胸の内で思う。
(……やっぱりセラ、昨日遥さんに言われたこと、気にしてるのかな)
俯き気味なセラの横顔を、何処か暗い色を浮かべた、そんな横顔をチラリと見上げながら。