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01 きつねを拾った
私の名前はとよ。
風緑宿の看板娘だ。
営んでいる宿のまえに出ると、傷ついたきつねが倒れていた。
人が近づいても動けないほど弱り切っていたのを見て、さてどうしようかと考える。
宿では動物嫌いの客も泊まる。
さまざまな人が利用するので、動物を飼うのはあまり好ましくない。
けれど、このまま宿の前で弱らせておくと評判が悪くなる。
なにより夜ゆっくり眠れない。
自分から夢見を悪くしたいとは思えなかったし、仕方ないので、そのきつねを抱き上げて宿の中へ入れてやる事にした。
本当なら、きつめのためにも、人間のためにも、医者の所に担ぎ込むべきだった。
しかし、あいにくとがめつい医者につかまったら、払うお金の余裕がない。
出来る事しかできないが、最低限体をふいて、タオルでくるんでやれば良いだろう。
相手は、自然の中で生きてきた野生の動物。
ぬくぬくとした環境でなければ回復できないというなら、この先生きてはいけまい。