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第07話 イマジナリーフレンド?

 一章のエピローグです

 なんで芦屋がイーヨンの寝具売り場のベットの上で寝てるんだ?

 本当に芦屋だよな?

 俺は携帯の電灯を点けて、照らして確かめる。


「やっぱり、芦屋か……なんでこんな所で寝てるんだ?」


 なんだか、服が若干はだけているがぐっすりと寝ている。

 いやいや、おかしいだろ……。


(とりあえず黒先輩を呼ぶか……)


 黒先輩の携帯に連絡を入れる。

 二回コールが鳴り、黒先輩は出た。


『もしもしー、どうしたのかね? 何かいたのかい?』

「はい、居ました」

『……ほ、ほほほ、本当かい!? つ、ついにオカルティックな物を!』


 めちゃめちゃテンションを上げる黒先輩。

 だが、俺が見つけたのは残念ながらそっちじゃない。


「芦屋が寝具売り場で寝ていました」

『へ……?』


 「何を言っているんだ君は」と言いたいのだろう。

 確かに、実際に現場を見ないと信じられないだろう。


『芦屋というのは、あの芦屋透香君かね?』

「はい、その芦屋です」

『が、寝具売り場で寝ていると?』

「ぐっすりですね。俺も眠いです」

『君の事はどうでもよいのだよ!! 芦屋君が寝具売り場にいるという事、それはつまり!』


 ん、黒先輩なんか分かったのか?

 この人、偶に勘が鋭いからな。


『彼女もやっぱり、鬼に興味があったのじゃないかい! 口ではオカ研に興味はないと言っていたが、一人で調査に来るとは、ツンデレという奴だね!』


 嬉しそうに話す黒先輩。

 芦屋が、そんな危ない事をするタイプには見えないのだが……。

 それに、俺達に注意をしておいて自分だけ来ているというのが、どうも解せない。


『まぁ、今は深夜だ。疲れて寝てしまったのだろう』

「なんか、違う気がしないでもないけど……このままじゃ危ないでしょう。今日は帰りましょう」

『そうだね。一階は一回りしたが鬼のおの字も無かったのだよ』

「俺の方もっすよ。んじゃ、俺は芦屋を連れて下に行きます」

『車を回しておくから、ゆっくり安全に来るのだよ』

「うす」


 俺は電話を切って、芦屋を抱きかかえる。

 電話中も揺さぶってみたりしたが起きる気配が無かった。

 恐らく、とても疲れているのだろう。

 ちょっと、危ないが芦屋は軽いから一階までだったら全然降りれる。


 しかし、本当に軽いな……ちゃんと飯食ってるのか?



 一階の水の広場入り口前に着くと、先に黒先輩が来ていた。


「おぉ、本当に芦屋君だね」

「本当に芦屋です。ベット売り場でぐっすりでした」


 ここに向かう途中も何度か声を掛けたが、目を覚ます事は無かった。


「……しかし君、こんなに可愛い女の子をよく平然とお姫様抱っこできるね」

「ん、別に重くないですよ?」


 むしろ軽すぎて心配になる。

 ちゃんと飯を食わないと倒れるぞ?

 ……もしかして、今回あそこに寝てたのも栄養が足りてなかったからとかじゃないのか……?


「そういう事ではないのだが……まぁ、君はそういう奴だから仕方ないのだろうね」

「なんか気になる言い方ですね」


 含みのある言い方で軽く笑う黒先輩。

 丸眼鏡キャラの癖に、上から目線だ。丸眼鏡キャラの癖に。


「気にしなくていいのだよ。それじゃ、車に乗せるから運んでくれたまえ」

「来る時も思ったんすけど、真夜中のイーヨンにリムジンって……」


 水の広場前では黒色の長い車が止まっていた。

 そう、かの有名な高級車リムジンだ。

 黒先輩は当たり前の様に乗っていたが、正直俺は来る時、驚きすぎてそこで目が覚めたと言ってもいい。


「仕方ないだろう。家にあるのがこれだけだったのだから」


 どんな家だ。


「まぁ、芦屋を寝かすには丁度いいですけど」

「生命君、君にはタクシーを呼ぶ事にするよ」

「なんでですか? スペースならまだありますけど」

「全く! デリカシーが無いね君は! 女の子というのは好きな男以外に寝顔を見せたくはないものなのだよ」

「……そうゆうもんすか」


 まぁ、黒先輩も一応女だし、女心と秋の空というからな、女心とは女性にしか分からん代物なのだろう。

 俺は芦屋をリムジンに寝かして、リムジンから出る。


「そういうもんす」

「……分かりました。タクシー呼びます」

「あ、ちゃんとタクシー代は払うからね」

「いいんすか?」

「いいのだよ。部費だから遠慮しなくてよいのだよ!」


 部費って……うちは部じゃなくて同好会なんだが……。

 黒先輩からお金が入っているであろう封筒を受け取る。


「……分かりました。それじゃ、芦屋をよろしくお願いいたします」

「任せたまえ! 君も気を付けて帰るのだよ」

「はい」


 俺と黒先輩はここで別れた。

 その後、すぐにタクシー会社に電話をしてタクシーを呼んだ。

 近くにあるベンチに座り、一息ついた。


「さて、んじゃタクシーが来るまで待っとくか……」

「……あッ、バレたッ!?」

「……」


 何となく、本当に何となく後ろを振り向いて見てみると赤い角を生やした金髪の幼女が立っていた。


「ご、ごご、ご主人様! こんな所で会うなんて奇遇っすねェ!」


 見た目と似つかわしくない男口調の幼女。

 彼女は【イバラ】といって、俺の"イマジナリーフレンド"というやつだ。


 小さい頃の俺には友達が居なかった。

 中村と友達になったのも小学校六年生の時だ。


 あまりに友達が出来ない俺は孤独だったのだろう。

 【イバラ】という年の近い幻覚を生み出し、イマジナリーフレンドとなった。


 友達が出来た今でも、イバラはたまに俺の前に現れる。


 ――しかし、金髪に幼女に角に男口調って……。


(小さい頃の俺はどんな頭してたんだ……)


 小さい子の想像力というのは常識にとどまらないという事なんだろう。


「そうだな……なぁ、なんでそんな汗かいてるんだ?」


 イバラは汗を流していた。

 今日は比較的涼しいのに……いや、幻覚に気温なんて関係ないだろうけども。


「い、いや、別にご主人様の友人に、オレの元配下が手を出した事がバレたら怒られる! だなんて考えて汗かいてる訳じゃないっすからねェ!」

「いや、全部言ってんじゃねぇか」

「――鬼の正直さが裏目に出たァ!」


 イバラは頭を抱えて蹲った。

 ……そうか、俺が芦屋に不自然さを感じたから勝手に辻褄を合わせようとしてイバラを呼んだのか……。


「……まぁ、お前が本当に何か出来る訳ないだろうし怒んねぇよ」


 そう、どれだけイバラの言った事に辻褄があったとしても、イバラは幻覚だ。

 実際に手を出せる訳がない。


「ご、ご主人様……優しいっすゥ!」


 涙を流しながら笑顔になるイバラ。


「イマジナリーフレンドとはいえ、俺の友達だからな……」


 自分の納得の為に罪を被せる事なんて出来ない。

 幻覚に対して何を思ってるんだと思われるだろうが、イバラは10年以上の付き合いなんだ。

 たとえ、俺の悲しみから生まれた幻影であっても関係ない。


「オ、オレ、感動して涙が出てきやしたァ!」


 ……周りからみたら、俺は盛大に独り言を言っている変人なんだろうな。


「へへへェ……こんな所に人間がいるじゃねぇか」


 涙を流すイバラを見ていると、イバラの後ろから声が聞こえた。


「あん……? オレとご主人様の甘い空間に入って来てんじゃ……」


 イバラは振り向く、するとそこには体調3メートルは超えるであろう真っ赤なおっさんが立っていた。


「ん、なんで子供の鬼がこんな所に居るんだぁ? へへへ、お嬢ちゃんもそいつを食おうとしてんのかい?」


 イバラは後ろに立っていたデカいおっさんを見て驚いていた。

 おっさんは訳の分からない事を言っている。


「なんて恐ろしい事を言うんだテメェ!」

「イバラ、知り合いか?」

「しらねェすよ!」


 まぁ、幻覚達に知り合い関係とかあったら俺の想像力が豊か過ぎる事になるからな。


「へへェ……お前、俺が見えるのか?」


 なに、幽霊や妖怪みたいな事言ってんだ。

 俺が生み出した幻覚なんだから、見えるに決まってるだろ。


「なァテメェ、わりィ事は言わねェからこの人には手を出すなよ」

「へへへ、大丈夫だぜお嬢ちゃん。ちゃんとお前にも分けてやっからよ」

「いや、だからちげェって」


 呆れた表情でおっさんを見るイバラ。


「俺は波の鬼! 波とは音を聞く、色を見る、それらにすら影響する!! 今日は弟分に挨拶に来たつもりだったんだ。丁度いい手土産だぜぇハハハ――」

「――夜遅くにうるさい」

「――なァッ!!?」


 眠たくて叫び声が頭に響いたから、手で払って消した。

 おっさんは霧になり消える。


「……………………」


 おっさんを消した俺を見てイバラは驚いた顔をしていた。


「ん、どうしたんだイバラ。ポカンとして」

「いや、あはは……ご主人様の技はいつ見ても圧倒だなァと思いましてェ……」

「技って……幻覚を消しただけだろ」


 まぁ、幻覚のこいつからしたら自分と同じ幻覚が湯煙の様に消されるというのは恐怖かも知れない。

 少し悪い事をしてしまったか?


「あ、アハハ……はぁ………………」


 乾いた笑い声を出した後、一度ため息を吐いて、イバラは黙った。

 なんだか、声をかけれる感じでもなかったから無視して俺は迎えに来たタクシーに乗り一人で帰った。

 帰りついたら倒れるようにベットにダイブし、眠ったのだった。

【おまけ】

――茨木の鬼SIDE――


 な、なんだあの霊力の量!?

 昔より上がってるんですけど!?


 力が完全に復活するまでアイツを隠れ蓑にしようと思ってたのに、隠れ蓑が強すぎて私までやられそうなんだがァ!?

 もし、オレの力が完全に復活したとして勝てるかアイツに……


「しねェ!」

「うるさい」

「うげェ!?」


 駄目だァ! イメージしてみたが三行で終わったァ!

 くそ、まだしばらくはアイツに憑いておくしかねェ……バレたら消されるから、バレねェように気を付けないとな……。

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