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第14話 告白と思わせて思わせて

三章スタート!

 翌日。

 昨日は光が寝てしまい解散になった。

 黒先輩はもう少し探したそうにしていたが、「寝ている光君を置いて行動はできないよ」と言ってくれた。

 いい人だ。


 結局、女の子の霊は見つからず、黒先輩の言っていた男の子の手がかりもなかった。


 芦屋が眠った光を連れて来てくれたのだが、なぜ寝たのか聞いたら無表情ながら震えた声で「電柱に頭をぶつけた」と言われたが、あそこまで嘘とわかる嘘も珍しいと思った。


 芦屋は無表情だが、そんな素直な一面がある。

 素直で嘘をつくのが苦手で、自分が思っていることに実直になる。


 俺が何かを隠していると思った日から俺の後をつけたりするのがその証拠だ。


 まぁ、俺が何を言いたいかというとーー


「――川畑君、放課後屋上で待ってる」


 芦屋はひやかしや冗談でこんなことを言わないという事だ。


 昼休み、俺と芦屋と蒼とついでに中村は一緒に昼飯を食っていた。

 昼休みも終わりに差し掛かり、次の授業の準備を始めようとした時、その言葉が放たれた。


 教室の片隅で言われたその言葉で、クラスの全員がこちらを向き。

 一瞬にしてこの場所はクラスの中心となった。


「あ、あ、あ、ああああ芦屋さんが、せせせせいめえええいいを」

「落ち着け蒼、落ち着け落ち着け、落ち着けば落ち着くだろ。生命馬鹿野郎お前死ねが俺より先にリア充になるなんてありえないだろ落ち着けそうだろ落ち着け」


 何故か蒼と中村が俺よりも取り乱している。

 蒼は片付け途中の弁当箱を床に落とし、中村はメガネを「クイッ」とさせるキメポーズを永遠と繰り返している。


 俺も多少は取り乱しているが、こういうのは大抵勘違いで終わる。

 そもそも、俺と芦屋は知り合い以上友達未満という微妙な距離感だ。


 それがいきなり、友達以上になるなんていうのは遊び人が賢者になるくらいありえない。

 もっというと、普通の高校生が異世界でハーレム無双するくらいありえないのだ。


「待ってるから……」

「あぁ、放課後な」


 という訳で、これも何かの勘違いだろうと俺は思う。

 さて、さっさと弁当を片付けて次の授業の準備をするか。


「せ、生命に……彼女……そんな……そんな……うぅ」

「生命は鈍感だ。付き合ってくれと言われてもきっと「どこに?」とか言ってフラグを粉砕してくれるに違いない。俺は信じてるぞ生命。じゃないと殺すぞ生命」


 おい、仮に告白だったとしてなんで蒼はそんなにへこむんだ。

 もっと祝福してくれよ。


 おい、中村。もしお前が俺を殺しに来たら半殺しの二乗にしてやるからかかってこい。

 そして、俺は鈍感じゃない。むしろ鋭い方だ。

 恋愛ドラマのオチとか結構わかる。






 そして、放課後。

 俺は屋上に来た。

 蒼も中村もついてこようとしていたが、蒼は部活のエース候補で部長自らのお出迎えをくらい。

 中村は近所の野球クラブで助っ人の約束があり、そちらに向かった。


 つまり、屋上には今、俺と芦屋だけだ。


「で、話ってなんなんだ」

「……川畑君、一つ聞きたい」

「なんだ?」


 桜島が綺麗に見える屋上で、芦屋はポケットから小さい狐の人形を取り出した。


「これ、見える?」

「……何言ってるんだ芦屋。その狐の人形がどうしたんだ?」

「やっぱり」


 芦屋は一人で納得してしまう。

 説明を求める。

 本当になんなんだ。


 芦屋がポケットから出した黄色い狐の人形。

 かわいいとは思う。

 芦屋がそんな少女趣味なものを持っているとは予想外だった。


 人は見かけによらないな。


「ねぇ、川畑君……」


 風が吹き、彼女の綺麗な髪が風に靡いた。

 綺麗だ、と声を漏らしそうになってしまうほどに。


「……付き合って――」


 告白された。


 ――ファッ!?


 心の中で某秋の魚の人的な声を出してしまう。


 告白される雰囲気を漂わせておいて、勘違いというオチだと思ったのに、告白される雰囲気を漂わせて告白された!?

 放課後の屋上に呼び出して告白なんておかしいだろ!?


 俺の頭は混乱していた。


「遊園地に一緒に行って」

「えっ、あ、あぁ!」


 いきなりデートまで申し込んできやがった。

 まだ俺は告白の処理すら追いついてないのに!

 つい、了解してしまったじゃないか!


「――だ、だめー!!」


 屋上に一人の少女の声が響いた。

 少女の名前は光、俺の妹だ。


「え、光」

「光ちゃん……なんでいるの?」

「えっ、あっ、つい……だ、だめ! 兄貴は私の……」


 なんなんだ。なんで光まで来るんだ。

 訳がわからない。


「私のなんだから!!」


 おい、光……それって……


 下僕的な意味でか!?



「……何を言ってるの?」

「こ、告白とか……こ、告白とか……!」


 光の言葉に、何故か芦屋がフリーズした。

 そして、目を見開いた。


「ち、ちがっ、告白じゃない。そんなんじゃない。ただ、遊園地に一緒に行こうって誘っただけ、だけだから……!!」

「え、そうなのか……?」


 なんだか少しだけ残念なような。

 安心したような。


 光は、それを聞いて顔を真っ赤にしていた。


「か、勘違いさせるなあほーーーーーー!!!!」

「うぐっ!? なぜ俺ッ!?」


 光は俺のみぞおちを一殴りして走り去ってしまった。


「大丈夫?」

「妹強い……」

「うん、いい攻撃だった」


 お前は格闘家か、と突っ込みそうになったが、痛みで声が出ない。


 少し待っていたら痛みが引いた。

 しかし、妹に本気のボディーブローされるとは思わなかった。

 なんだったんだ?


「それで……その、遊園地に付き合ってくれる? さっき、おぉって言った」


 そんな涙目で見るなよ。

 もしかして、さっきの光の告白という言葉に照れているのか。

 こいつは表情を変えない。

 いつも白い肌で白い顔で、涼しげだが感情は読みとれる。


 だが、それでも普通の人間の何倍も感情は読みにくい。


 そんな彼女がここまで読みやすい顔をするなんて珍しい。

 これで断ったら本当に泣かれてしまうかもしれない。


 俺は彼女の誘いを不意にとはいえ、了解した。

 それを断るのは男としてダメな行為な気もする。


 なら、俺はこう返事するしかないだろ。


「あぁ……いつ行くんだ?」


 俺がそう答えると、芦屋は嬉しそうな顔を……した気がした。


「明日」


 明日は土曜日で休みである。

 なるほど、明日ね……明日ッ!? 早ッ!?

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