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ドルフィンリング  作者: 春野 桜
7/9

進路~涙~

 次の日の学校の帰り道。

 拓海は私の顔を見て何かを感じとった。


「なあ、楓。家で何かあったんか?」

「ううん。別に」

 拓海に心配かけさせたくなかった。

「いいや。その顔は何かあったな。楓の事くらい解るで。言うてみ」

 拓海と別れろと言われているなんて言えるはずがない。

 私は黙り込んでしまった。

「んー! 何やー! 気になる! こんなん俺、勉強どころやないで」

 拓海は頭を掻きむしり、その手を止めた。

「引っ越しするんか?」

 私は首を大きく横に振った。


「お義母さん、病気になったんか?」

 私はまた首を横に振る。

 心配してくれている。

 拓海の事なんて言えない。



「・・・・・・俺のことか?」


 私はふと顔を上げた。

「そうかー」

 また俯いてしまった。


「俺、何かしたかなー。最近、親に顔見せに行ってないなー。楓がこんな顔してるって事はいいことじゃないなー」

 その言葉に、あの日の夜のことを思い出した。

 

 アホとは縁を切れ。

 

 再び悔しさがあふれた。 

 涙が零れた。

「楓? 何で泣くん?」

「俺に言うてみ」

 心配している拓海に話してみようと思った。

 だけど言えない。

 堅く閉ざしてしまった口。

 返事すらできない。

 妙に力が入り、震えて余計に口が開けにくくなっていた。

 涙だけがぽろぽろと零れていた。

 

「楓」


 拓海は優しい口調で私が言うのを待っている。

 

 2人は公園のベンチに座った。





 どれだけ時間が経ったのか、公園の外灯が点いた。

 

 私は震えながら、途切れ途切れ、小さな声で、親が拓海の手紙を勝手に見たこと。

 公務員じゃないと別れろと言われたこと。

 やっと拓海に話せた。


 拓海は黙って聞いていた。

 そしてそっと立ち上がり、私の正面に立った。


「・・・・・・で、楓はどうしたいん?」


 拓海がまっすぐな目で静かに言った。


「・・・・・・別れたくない。」


 泣きながら、やっと出た小さな声で答えた。


 拓海が私を抱え込み、引き上げ、力強く抱きしめた。


 何も言わず。


 私の涙が止まるまでずっと。





 やがて、涙が止まってきた。

 拓海は抱きしめた手をそっと解いて、静かに話し出した。


「楓、俺はなんと言われようが大丈夫」

 拓海は話し続ける。

「楓の家柄を考えると、須藤家はみんな公務員やしな。でも、俺は学歴だけですべてが決まるとは思ってない。それに、俺が好きなのは楓や。親じゃない。親だけでなく、周りが何と言おうと俺は楓が好きや。楓が別れてって言うまではずっとそばに居る」


 再び涙が溢れた。

 今度は嬉し涙だった。


 今度は私が拓海に抱きつきたかったけど、恥ずかしくてできなかった。

 拓海の両手をギュッと握った。

  

 拓海はその手をグイっと引き寄せ、優しく抱きしめてくれた。


 公園の木の陰から静かに様子を伺っている人が居た。

 私はもちろん、拓海も全く気付いていなかった。


 薄暗くなった道。

 拓海は家まで送ると自宅が見える所まで送ってくれた。

 繋いだ手。拓海のその手はいつもより力が入っていた。

 別れ際、拓海はもう一度私に言った。


「俺は楓が別れてというまでは絶対別れないから」


 車のライトが通り、拓海の真剣な顔が一瞬照らされた。

 まだ涙目になりながらまっすぐ拓海を見つめていた。


 もう1台、車が通り過ぎた。

 その時、拓海は私の肩を抱き口づけをした。

 私は静かに目を閉じた。


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