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ユニークスキル『創造』の力が予想以上に使えなかった件  作者: ぐりとぐらとぐふとぐへ
第一章 不死者の王
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長靴を履いたトロイ

デービッドは早速準備を始める。


「伯爵領ってたしかに王都のすぐ近くだけど、伯爵の都合がすぐにつく程伯爵も暇じゃないと思うわよ。」

「あーそうだな。」

デービッドはトロイに指示をしてエクスカリバーにそっくりな贋作を持ってこさせる。

「…贋作だが分からない位に違和感が無いな。寧ろ俺はエクスカリバーよりもこっちがいい。」

オーウェンが剣を構えて言った。

「だろうよ。それは現代技術の粋を尽くしたエクスカリバーもどきだ。

しなるが硬く折れない、そして研ぐ必要が無いのいい事ずくめ。純粋な剣の性能としてエクスカリバーを超えたエクスカリバーのような剣、それがこのエクスカリバーもどき!」

デービッドとソルが胸を張る。相当の自信作のようだが…


「これとすり替えるんだ?勿体無くない?あの伯爵だと豚に真珠よ。」


「はッ!」


デービッドとソルの顔が絶望に染まる。

確かにエクスカリバーは必要だ。

だが。これをじゃがいも野郎にくれてやるには余りに惜しい。

アダマンタイトを素材に使ってはいないので正式にエクスカリバーとはならないし、アダマンタイトのように魔力を通さないからエクスカリバーたり得ない欠点はあるが…


剣聖など剣に命を託す者ならば、例え金貨を1000枚注ぎ込んでも惜しくないようなものだ。


「…なぁ、これ俺が貰っていい?」

オーウェンがこっそり懐に入れようとする。特殊効果のない物理攻撃のスペシャリストとなり得る剣…オーウェンが認めたとなると尚更惜しい。


が。


売り上げよりも先立つ物は依頼されたミッション。


「構わねぇ!じゃがいも野郎にくれてやらぁ!」

「そうじゃあ!作り方はアタマに入っとる!ワシらをなめるな!」


血涙を流しながらも二人は叫んだのであった。


ーー


「エクスカリバーもどき…エクスカリバーもどき…」

「…ネーミングセンス最悪ね。」

「ええネーミングじゃろ。…はぁ…エクスカリバーもどき…」

どんよりと空気を濁らせデービッドとソルは準備を続ける。

「で、あたしら何すればいいのよ。犯罪の片棒担がされるってんならお断りだからね。私もオーウェンもオベロン様にも立場はあるんだから。」

ミッシェルの言葉にデービッドは面倒くさそうに答えた。

「あー、お前らの名声を利用させては貰うがお前らに被害は出ねえよ。」

「無茶苦茶信用出来ない言葉だな、それ。」

オーウェンの言葉にデービッドはチチチと指を振る。


「あのじゃがいも野郎は勇者にも聖女にもお近づきになりたい。

お前らがお忍びでじゃがいも領に入ったと分かればすっ飛んで出てくるぜ。間違いなく。」


その言葉に顔をしかめるのはミッシェル。オーウェンは無感動。オベロンは…

「成る程。宴会の時に騙し討ちをするのだな。」

と頷きながら、至極物騒な事を言った。

「個人的には本当に殺してやってもいいが、あんな奴の為に前科を持ちたくない。」

デービッドは首を振る。

「旦那は前科はないでやすが、新聞の三面記事の常連で最早王国の名物人間になってやすしねぃ。」

「あ、デービッドって前科無いんだ?てっきり前科750犯位してるかと…」

「これまで犯した犯罪を出していけばその位行くんじゃないか?破壊神討伐の時も廃村で色々やらかしていたし…

あ、今回は寸借詐欺か?それとも窃盗か?」

「がっはっは!とんだアウトローじゃのう。こいつは豪気な事じゃ!」

「てめぇら…」

なまじ否定しづらい為に反論出来ず、ピクピクとこめかみに青筋を立てるデービッド。

「心配するな。いざ王国を追われる立場となれば我が妖精王国で身柄を引き受けてやろう。

デービッドが妖精に転生したら一体どのくらい力を持つ妖精になることか…」

「それ身柄引き受ける前に人としての生を終えろって言ってるじゃねぇか!

あー話が進まない!今回の作戦の作戦名は…


『長靴を履いたトロイ』


だ!」


「至極安直だな、おい。」

「あっしは猫扱いでやすか?長靴よりも草鞋のほうが好みでやすがねぇ。」


デービッドの言葉に皆が突っ込んだのであった。


「うるせぇ!さっさと支度しやがれ!明日にはエクスカリバー持って帰るんだからよ!」

「はいはい。」

渋々といった感じで旅支度をするオーウェンとミッシェル。


オベロンは面白くなってきたとばかりに嬉々としてデービッドの肩に止まり、ソルは留守番だ。

本来トロイに留守番を頼みたいところだが、ソルはトロイと同じくらいに義理堅く信用出来るとデービッドは思っている。

彼は知らぬ事だが、妖精が名前を受け入れるという事は妖精が真名という呪縛を受け入れた事を意味する。

真名を受け入れた妖精は真名を与えた者に己の全てを捧げたも同然となる。

デービッドは名を与え、ケットシーとノームはその名を受け入れた。


その意味をデービッドは知らない。


「鍛治仕事があったらやっておくから倉の鍵は置いておくんじゃぞ。」

「今度お前の分の鍵も用意しとく。」

「おう。頼んだぞい。」

ソルはニカっと笑い店のカウンターに向かったのであった。


ーー


「旅支度はこいつに限りやすねぇ。」

三度笠を被り股旅姿になるトロイ。腰にキヨミツブレードを帯刀し、背中にデービッドとトロイの荷物を入れた渋張行李を背負う。

「え?トロイが荷物持つの?」

「へい。あっしは旦那の従者でやすし、旦那との旅で働くのはあっしの役割でやす。」

ミッシェルはトロイから渋張行李を奪いデービッドに持たせる。

「お、おい!なんだよ一体!」

「トロイに働かせないであんたが働きなさいよ。主のもとでは全てが平等であるべきです。」

なので荷物持ちはデービッド、とミッシェルが宣言する。

「何で!…しかもお前どさくさに紛れて自分の荷物も行李に入れるんじゃねぇよ!」

「え?か弱い聖女とケットシーに大荷物持たせるの?」

しなをつくるミッシェル。

「お前主の前では全てが平等であるべきと言ったよな?で、大体のステータスお前の方が上で肉体強化魔法も使えるよな?どこがか弱い聖女だ?寝言は寝て言え!」

言い合いに辟易したのであろう。オーウェンはデービッドから行李を取る。

「…貸せよ。俺が持ってやるから。」

オーウェンは行李を背負うとデービッドとミッシェルを見て溜息を吐いた。


「わがままばかり言いやがって!腹黒女が!」

「黙れ重犯罪者!」


「…破壊神討伐の時も同じようなものでやした?」

トロイの言葉にオーウェンは重く頷いたのであった…。

「ダンジョンではデービッドが斥候役をしてくれたし、荷物は後列のミッシェルが持ってくれていたんだがな。

平地になると大体文句の言い合い。仲がいいんだか悪いんだか。」

あいつらが揉めるのは平和の証拠。とオーウェンは言い…

「さっさと行くぞ、デービッド。ミッシェル。」

「ふん!」

デービッドとミッシェルがお互いそっぽを向く。


因みに。

ステータスはあくまでも目安であり武具や防具、魔法具の補正があれば当然大きく変化する。

ミッシェルの着る修道服や身につけているロザリオは魔法具の最高峰であり全ステータスにかなりの影響を及ぼす。

素のミッシェルはデービッドと比較しても精々どんぐりの背比べといったステータスであるが…

…ほんの少しミッシェルのほうが高いとだけ明記しておく。


ーー


ドルイド伯爵領に勇者と聖女が来るーー


その報せはあっという間にドルイド伯爵領を巡った。

ドルイド伯爵の居城ではドルイド伯爵が落ち着かない様子で動き回る。


年の頃はかなり若い。


先代の伯爵が早くに亡くなり、伯爵を継いだのが15の時。

その時に無礼な平民から罵倒され自分は無様な見た目と知り、それから節制に目覚め今では人並みのスタイルを手に入れている。

因みにローティーンの頃からメイドに手を出して御落胤が何人かいるなど非常に問題のある人物だが、小心者故に他の貴族の令嬢には手を出していない。

また幼少時の評判の悪さから他の貴族から娘を差し出したくないと思われており、婚約者もいない。

それ故に貴族としては珍しく未だに独身なのだ。


「我が領に一体何の用なのであろうか…」


領地の特産であるじゃがいもを食べにきたのであろうか?

そのような物見遊山に耽るタイプには思えないし、貴族の間で噂になっている勇者と聖女のインモラルな関係での旅行なのであろうか?

疑問は尽きないし何をしに来るのかも分からない。

だが。

もしも勇者と聖女が自分に会うために来たというならば、という淡い期待もある。


勇者オーウェンと聖女ミッシェルが会いに来る価値のある人物。


それがこのドルイド伯爵。


そうした肩書きというものは貴族社会ではかなり有効なものだ。


デービッドがこの伯爵を蛇蝎のように嫌うのは、このように『ありもしないものに執着し、価値のないものばかり集めたがる』所である。

デービッドにしてみれば、例えオーウェンやミッシェルが訪ねて来ても仕事の依頼なら会うし、私用であれば仕事の進捗次第では会わない。

一人の友人として力を貸してほしい、と言われたら万難を排して駆けつけてやるが、デービッドにとって伯爵が重要視する事柄はその位の事でしかないのだ。


ーー


「あいつの頭の中は腐ったじゃがいもで埋まってやがるのさ。」

忌々しい、とデービッドはエクスカリバーもどきを手に取る。

「こいつで頭を幹竹割りにしてやったら脳ミソじゃなくて腐ったマッシュポテトが出るだろうよ!」

ブツブツ文句を言いながら歩くデービッド。

「うるっさいわねぇ!そんな文句言いながら歩かれるとこっちまでイライラしてくるわ!」

至極もっともなミッシェルの意見にデービッドはオーウェンの背負う行李を見ると、盛大に溜息を吐いた。


「あー嫌だ嫌だ…」


「…デービッド、エクスカリバーもどきが惜しいのは分かるが、あんまりくさすな。聞いていて不愉快だ。」

「ちげぇよ、エクスカリバーもどきも惜しいがそんな事じゃねぇよ。

俺とじゃがいもが仲悪いの知ってるだろ?俺がいたら会ってくれねぇ可能性が出てくる。」

まぁ確かに…。とデービッドを見る二人。


「だから変装の必要があるんだけどよ…じゃがいもの野郎に俺だと絶対にバレない方法はこれしか思いつかなかった。

あと恥を忍んで言うが変装の時に力を貸せよ?ミッシェル。」


オーウェンの行李を開けるデービッド。

そこにあったものを見てオベロンは笑い転げ、ミッシェルとオーウェンは目を丸くし…


「確かにこれならバレないだろうけど…何考えてんの?アンタ…」


と、呆れ顔でデービッドを見つめたのであった。

次回デービッドが不幸な目に遭います。

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