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ユニークスキル『創造』の力が予想以上に使えなかった件  作者: ぐりとぐらとぐふとぐへ
第三章 霊峰アンナプル
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スチームくんZZ

工房ではデービッドがゴムに切り込みを入れている。

余程集中しているのか入ってきたソルにも気付かずに試行錯誤を繰り返していた。


ソルはゴムの切れ端を集めていく。

そして鉄を温め槌を打ち、ドーナツ型の金型を作っていった。


「…何やってんだ?ソル。」

「おかえりの一言もないのか?冷たい奴じゃ!」


ソルは憤慨しながらもデービッドを見る。デービッドはソルの作る金型を見て…


「あ!」


と声を上げた。

いちいちゴムを加工せずとも方法はある、と思い付いたのだ。

「ほんとお主は一つのことを考え出すとそれだけになるのう。」

若い若い、とソルは笑う。

「うるせぇよクソドワーフ。さっさと鉄よこせ。」

「ひっひっ。楽しくなってきたのう。」

ソルは鉄塊をデービッドに渡す。

「タム・リンに下働きさせようぜ。オーウェンは明日トロイと作業に出るし、ミッシェルに見つからないよう今からあいつ呼んでくるわ。」

「おう。」


一晩中、デービッドとソルは鉄を叩き続けた。

ゴムがそのまま地面に着いた時に滑るのなら滑り止めを使えばいい。

表面を荒く仕上げ、溝を作れるように金型を使えばいい。


「おーいタム・リン、ゴムを切ってくれ。」

「これは…刃が立たんぞ!硬すぎる!」

「オーウェンは豆腐みたいに切ってたぜ。」

「なんと…!」


「タム・リン、こちらにゴムを持って来るのじゃ。」

「…重いぞ!なんだこの重さは!」


そして。試作品が完成した。


雪国用の靴の下に厚いゴムのソールを付け、中敷に藁を敷く。

ソールには滑り止めのグリップと水捌け用の段をつける。

ソルのタイヤも似たものである。ただ。

重さによるゴムのヘタリを防ぐ為に中にワイヤー等を入れて更に硬くした。が。


「デービッドのは良いが、ワシのはあまりに重くなり過ぎるのう。」


ソルは出来上がったタイヤを見て首を傾げる。

「ならよ、これもっと薄くして中空の構造にして、中にチューブ入れるか。」

「それしかないのう。今のところは。」

ソルは仕方ない、とばかりに頷く。


「これで今日は終わりか?」

「「は?まだまだ詰めてやらんと終わらんわ」」


二人の回答にタム・リンの顔が青くなる。

そして。


デービッドとソルはスチームくんの改良に取り組み始めた。

サスペンションの動きやカバーにもゴムが使える。その間に起動実験。タイヤの型やチューブ、空気漏れの対策…


「…疲れたなら帰っていてもいいんだぜ?」

工具片手にデービッドは汗を拭う。

「なんのこれしき!妖精の騎士をなめるな!」

タム・リンは必死に食らいついていく。

「(根性は一人前じゃの。)」

ソルは細かい所の作業をし、デービッドは設計図を片手に手直しをする。タム・リンは力仕事担当だ。


そして。不眠不休の仕事が三日が過ぎ…


「完成だ…。スチームくんZZ(ダブルゼータ)…。」

「なんでじゃろ…今までで一番輝いて見えるわ…」


Zのアップグレードと呼ぶには不適切かも知れない、と思い二人はZZと呼んだが…

ゴムのおかげで細部まで整備が行き届くようになり、細かい所の保護にもゴムが利用出来るようになった。

代わりに重量が上がった為、エンジンであるボイラーを大型化せずに二つにし、出力を稼ぐ。

その分パワーも上がったので、足回りも再度強化する。


ごうごうと音を立てるボイラー。

そして出力の増加に伴い増やした荷室。

現代でいう蒸気機関車に酷似した形状だが、足回りは車のそれに近い。

回頭性はハンドル頼りになるが、それもゴムタイヤのおかげで大分楽になった、とデービッドは御満悦である。


「なるほど、すごい発明だ。

しかし、肝心の商品開発はどうするんだ?靴だけか?」


タム・リンは首を傾げる。

登山靴というのは新しい発想の賜物だろう。だが、あとはひたすらスチームくんの改良に取り組んでいたような、とデービッドとソルを見るタム・リン。


「「はッ!」」


絶望の表情を浮かべ打ち拉がれる二人…。


「…私は帰るぞ。」

もう付き合いきれん、とタム・リンは妖精王国へと戻っていく。

「私の力が必要な時はまた呼べ。」

と一言残して。


ーー


「…成る程。登山靴を作った後、気分良くスチームくんの改良に取り掛かり、それに熱中するあまりほかの新商品を作れなかった、と。」


トロイの前で土下座をする二人…。

トロイは耳を後ろに立て、毛を逆立て尻尾をブンブン振っている。


「しかもまる三日。その間の仕事はオーウェン殿頼りで、よろず屋の主人と技術者の二人が仕事ほっぽり出して遊んでいたとは剛毅な事でやすなぁ。」


言い訳など出来ない、とデービッドもソルも知っている。言い訳したらトロイの怒りに油を注ぐだけだ。


「…まぁ今日一日休まれてはいかがでやすかね?疲れたでしょうから風呂にでも入ってゆっくりと。」

まさかの優しい言葉に顔を上げる二人だが…トロイの瞳は縦になっており、その言葉が優しいものでないと理解するのに一秒も掛からなかった。


「明日から仕事と新商品開発を並行してやってもらいやすから、体調は整えておかないといけやせんからねぇ。」


嫌ならご飯と酒抜き、と言われ、デービッドとソルは小さく「ヒィ!」と悲鳴を上げた。


…それからいくつも新商品を開発し、それらを売るためにエドウィンの所に持って行く。その中でも特に水回りの漏れを解消するゴムは評判が良く…


技術を売る代わりに漏れ解消のゴムの売上の5%を得る事となり、トロイはホクホク顔となるが…


「ねー、デービッド。今月の出動費の要請が教会から…」

「デービッド、俺は無料奉仕か?それはそれで構わないが。」


これら人件費。


「…ちと使い過ぎたの、鉱物。あと燃料も。」


材料費、光熱費。


それら全ての額を見たトロイが不機嫌な表情に戻るまで数時間も掛からないのであった。


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