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ユニークスキル『創造』の力が予想以上に使えなかった件  作者: ぐりとぐらとぐふとぐへ
第二章 ポティト農業祭
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祭りのあと

農業祭編完了。

翌日。

包帯だらけのデービッドはワイナリーの離れを掃除していた。

使う前より美しく。

それがここを自由に使わせてくれたワイナリーへの恩義だ、と考えている。

昨日ここに泊まったアンから手伝いを打診されたが、そこは丁重にお断りした。


特に昨日は…。


考えるだけで涙を禁じ得ない。


どさくさに紛れた民衆がオーウェンとミッシェルにセクハラを加え、それの怒りのフラストレーションは全てデービッドに向かった。

考えてみてほしい。人智を超える力を持つ者がリンチに加わるのだ。

あっという間に人だかりは二人に弾き飛ばされ、オーウェンとミッシェルが二人でデービッドにリンチを加えた。


ソルのように場合によっては勝てる相手と違い、勇者と聖女になど勝てはしないし反撃もままならない。


デービッドは瞬く間にボコボコにされた挙句、止めに来た憲兵隊…しかも憲兵総監自ら制裁に加わり…


勇者、聖女、憲兵総監という豪華過ぎる顔触れからボコボコにされ、怒ったデービッドは途中それぞれから頭を一発ずつ殴られ…


ワイナリーの離れに強制送還されたデービッドはアンに立てていた死亡フラグのおかげで無事昇天した。


アンの治癒魔法のおかげで動けはするが、それでも重傷という事に代わりはない。


あいつら覚えてやがれ。と思うも…率直な感想が王女をコケにするような事になるとは思いもしなかった。


オーウェンとミッシェルは昨日のうちにポティトを離れたという。トロイが預かったという手紙には二人の連名で

『またな。』

とだけあった。


ワイナリーの離れのドアがノックされる。誰か来客のようだな、と痛む身体を引き摺りデービッドはドアを開けた。


「おう。」

そこにいたのは…エドウィンとエマだった。

茶くらい淹れてやろうと台を出し、二人はそこに座る。

「全くあなたにはしてやられましたよ。」

エドウィンは脱帽です、といった風に手を上げる。

「目新しさに飛び付いてよく確認しねぇからそうなる。」

「ええ、その通りです。契約金の金貨500枚、こちらはよろず屋のほうにお送りしておきますので。」

にこやかに言うエドウィン。

なんとなく感じが変わったなぁ、とデービッドは思い…


「ま、仕事がありゃ言ってくれや。ウチは万年貧乏のよろず屋だ。条件さえ合えばどんな仕事でもやってやるぜ。」


と営業文句で返した。虚勢の塊のような男だし、嫌がって帰るだろうと思っていたが…返答は意外なものだった。

「そうですね。機会があれば是非。よろず屋の腕は一流と伺っております。施工の際には一度お話をさせて頂きますね。」

エドウィンはニコリと笑うとエマを見た。

「私の幼馴染、ロビーが大変お世話になりました。

彼はこの先迷う事はあれど自らの生き方に迷う事はないでしょう。」

エマもまたにこやかに言い、手を差し出した。

「(あー、見誤った。エドウィンは失敗をバネにするタイプだったか。)」

デービッドは苦笑し…エマの手を握った。


「受けた恩は倍返し、受けた仇は3倍返しがポティトの女の流儀でございます。今回の件について、いつか必ず恩返しを致しますね。」

「お手柔らかに。」


…なんとなく、エドウィンが変わったのはエマのおかげだろうな。と思いながら謙虚に微笑む男に微笑んだ。

待たせた馬車に乗り込む二人の後ろ姿を見てデービッドは…

「はぁ…今回の儲けは高くつきそうだな。」

と、頭を掻いた。


次の来客はロビーだった。

エドウィンとエマの店にワインを卸す事になり、これから忙しくなると彼は言い…


「ワイナリーポメラと技術交流する事になったんだ。

あちらからはピノが来るそうでよ、一か月ごとに俺とピノが行き来していくんだよ。」

向こうの親御さんもウチの親父も乗り気でな、と嬉しそうに言うロビー。もっと技術を高めて色んなワインを生み出したいと熱っぽく語るロビーだが…


「…ロビー。お前は少し人を疑うという事も覚えておけ。据え膳と思って食ったら即詰むぞ。」

「?おう。」


首を傾げるロビーにデービッドは溜息を吐いた。


ーー


片付けもあらかた完了し、デービッドは最後にポティトワイナリーの敷地を歩く。

半年にも満たない間だったが、実に濃密な時間だった。

遠くでピノとロビーの激論の声がする。お互い切磋琢磨し、これからのワイン界を牽引していくのだろう。


ロイは楽隠居なんて柄ではないし、当面の二人の目標はロイか。

ロビーの言うように自分もここにいてワイナリーの仕事を覚えてロビーと一緒に馬鹿らしい夢を見るのも良かったが、それは同時に自分の両親の面影を消してしまう事も意味する。


両親がデービッドに遺したもの。それはデービッドと今はよろず屋になっている店だ。


子孫を残すつもりは一切無いが、せめて自分が死ぬまではその面影を守りたい。

柄になくセンチメンタルになったデービッドは、すっかり寂しくなったぶどうの木を見ながら少し溜息をついた。


長期の仕事だったし少しゆっくりしてからこれからを考えるのもいいし、休み無く仕事を入れてもいい。

これから自分はどうするかな、と考えるデービッドにトロイとソルが声を掛けてきた。


「そろそろお暇いたしやしょうか、旦那。」

「ワインもええがそろそろ飲み飽きたわい。帰って濁酒でも飲むかのう!」


ああ、そうだ。

俺には戻るべき所がある。


「あぁ、今いく。」


デービッドはトロイとソルの元へと向かい…ポティトを後にした。


「また来いよ、赤毛。」

「次は揉め事起こすなよー赤毛ー」

「赤毛ー!俺たちの事忘れんなよー!」


ワイナリーの皆が手を振る。


「今回の依頼は大成功だな。」

「報酬は金貨500枚でやすがねぇ。」


タンカートのよろず屋に着き、デービッドは客間に横たわる。

「あー、我が家は落ち着く。」

かぽーん、と響くししおどしの音。

「さぁて明日からバリバリ仕事してもらいやすぜ。」

トロイは鰤大根を持ってきながら言った。

「…はい?」


「へい、エドウィン様から仕事の依頼が山のようにありやしてね。

主には工務でやすが。」


エドウィン?!とデービッドの顔が歪む。

『受けた恩は倍返し、受けた仇は3倍返し』

エマの言葉を思い出すデービッド。


「あ、あいつら…!」


金貨500枚の分をよろず屋への依頼手数料で賄うつもりだ、とデービッドは気付き青くなる。


「トロイ!断れ!そうしないと業務が立ち行かなくな…」

「もう全部予定入れちまいやしたよ。」

「」


…やられた。

大学生と思って甘く見た。

いや、甘く見たというよりは侮った。


「…恩返し兼仕返しか。

てめぇらからの引き出物、確かに受け取ったぜくそったれ。」


デービッドは屈辱に震えながら言った。


「ソル、トロイ!よろず屋は顧客満足度100%が自慢だ!

今回の依頼も100%満足させるぞ!」


「おう!」


ー王都タンカートには不思議なよろず屋があります。


そこはどんな依頼も引き受け、どんな困難なミッションも解決する街のなんでも屋ー


「工務とプラスで王室の依頼でドラゴンキラー制作だと?!」


「王女直々の依頼でやすから、断る権利はございやせんぜ。」


「ということは、まさかドラゴン討伐もミッションのうちか?」


「御明察。」


トロイの言葉にデービッドは青くなる。


「クソッタレ共がぁーーーーッ!」


デービッドの叫び声は虚空に虚しく響き渡り…

新年も慌ただしく迎えそうだと溜息をつくのであった…。


ポティト農業祭編完了。


次回もお楽しみに。

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