第4話
少し時は遡り、紫乃歩とサクルが飛朗斗達と別れてからしばらく後の話…
「ねぇ、サクル、どうやって私の住んでたところまで行くの?」
紫乃歩がサクルに尋ねる。
「んー?それはね~、紫乃歩からだと見えないんだけど、まだ死んでない人の魂とって体と紐?みたいので繋がってるのね?私にはそれが見えるから、それを辿るだけなんだよね~(お姉ちゃんに出来るかはわからないけど…(小声))」
「最後何か言った?」
「ううん、何でもないよ~。さてと、じゃぁそろそろゲートに入るよ~結構眩しいから注意ね。」
完全に油断していた紫乃歩だった。
「うわっ!まっぶしい!!」
少しでも光を和らげようと、腕を目の前に持ってくる。
「あははっ、だから言ったじゃん。慣れるまでは結構大変なんだよね~、とりあえず落ちない様にだけ気を付けてね。」
そう言われた紫乃歩はサクルにしがみ付く。
しばらくすると光が弱まる。
「オッケーもう抜けたから眩しくないよ~。ここが紫乃歩の住んでた所で間違いない?」
恐る恐る目を開ける紫乃歩。
眼下には住み慣れた街が広がっていた。
「えぇ。間違いないわ。何処か適当な場所に降りましょう。」
サクルは着陸できそうな場所を探す。
しかし、ビルが立ち並ぶ都会はなかなか着陸する場所が難しい。
ましてや、人を一人乗せて飛ぶことのできる程の大きさとなれば尚更だった。
「ねぇ紫乃歩、ちょっと外れの方でもいい?」
「問題ないわ。あなたが無理なく着陸出来る場所でいいわよ。」
そう言われたサクルは、周囲を見渡す。すると、丁度良さそうな場所を見つけたのか、コースを変え街の外れにある林へと入っていく。
無事に着陸する。紫乃歩がサクルの背から降りる。
「さて、このままだと私は目立っちゃうから…」
そう言うと、爪で器用に地面に陣を描き始める。
「何してるの?」
「まぁ、見てて!」
陣を書き終え、中心へと移動する。
「先祖よ、我が祈りを聞き届たまえ。」
すると、サクルの体がみるみると小さくなっていく。
スズメほどの大きさになると羽ばたき、紫乃歩の肩へと止まる。
「これなら目立たたないでしょ?さっ、行きましょっ!」
「え、えぇ…ねぇ、今のって…」
紫乃歩は歩き始める。
「今のはね~魔術って事になるのかな?簡易的な物だから効果時間や耐久性も弱いけどね~」
「ふーん…私も使えるようになったりする?」
「どうだろう…?私に教えてくれた人は、適性が無いと使えないって言ってたけど人間と私達じゃまた話が違うだろうけど…」
「ふむふむ。もしかしたら使えるかもって事ね。また会うことがあったら教えてくれない?」
「うーん、まぁいいけど。たぶんこの試験が終わったらもう会うことないよ?」
「えぇ、それでもいいわ。直観だけど、私あなたとこのまま離れる気がしないのよね。」
そんな会話をしながら歩いていると前方から誰かが近づいてくるのが見えた。
初めは遠くてわからなかったが、徐々にはっきりと見えるようになり、2人の顔は青ざめた。
前方から歩いてきたその人物は…
「嘘でしょ…?なんで動いてるの…?」
最初にそう言ったのはサクルだった。
「あれって…私の体?」
そう、まさしくそれは紫乃歩だった。
そして近くまで来ると、邪悪な笑みをこぼし、話しかけてくる。
「ククク、この体が妙に反応すると思い来てみれば、本来の持ち主か。悪いな貴様の体は私が貰い受ける。
まぁ精々冥界で楽しく暮らすと良い。それも残り数日だろうがな…ククク、アーッハッハッハッハ!!」
そう言ってそのまま歩いて2人の横を通り、後ろへと抜けていく。
2人はすぐさま振り返るが、もう居ない。
「えっ…一体どうなってるの?」
紫乃歩は状況が呑み込めていなかった。しかし、肩に止まっていたサクルが異常な程に怯えていた。
「い、今の今まで感じたことのないくらい、物凄く不気味な気配がした…それに、魂が抜けてる体が動くなんてありえない!」
サクルを肩から掌へ移動させ、声を掛ける。
「サクル、落ち着いて…いい?私の質問に答えて?」
サクルが頷く。
「あの体は私の物で間違いない。そうね?」
「えぇ。間違いないわ。紐も確かにあの体に繋がっていたわ。」
「私はあの体に戻れる?」
「わからない…でも、今は…」
サクルが言葉を濁した。
「今は…?」
「紫乃歩、落ち着いて聞いてね…?」
紫乃歩が頷く。
「あなたの体からさっきまで伸びてた紐が無くなってるわ…」
「それってつまり…」
「紫乃歩、あなたは完全に死んだ事になるわ…」
紫乃歩は膝から崩れ落ちる。
「あいつ…私の体に入ってる奴…絶対殺してやる…」
「紫乃歩!ストップストップ!そのままじゃ悪霊になっちゃう!」
サクルが制止する。
「もうすぐかな?」
サクルがそう言うと、何かが走ってくる音が聞こえた。
「おとーさーんここー」
なんと走ってきたのはアヌビスだった。
「む?何故紫乃歩さんとサクルがここに?それに紫乃歩さんの紐が途切れている?何かあったのか?」
「とりあえず、ここに居ると紫乃歩ちゃんが悪霊に成りかねないから、お父さん私達を冥界へ連れて行って?」
アヌビスは頷き、2人を抱え冥界へと向かうのだった。
道下 紫乃歩
人気アイドルグループのEZP10の人気メンバーの一人。愛称は"しののん"
努力家で、完璧主義の一面がある。武道の心得は全くないが、目はとてもいい。あくまで噂だが、視力は4.0あるとまで言われている。
幼い頃からアイドルになるべく、ダンスなどのレッスンを受けていたため、体の動かし方は熟知している。