第3話
果てしない砂漠で神殿を見つけ、そこへ向かった飛朗斗とニスルはそこで衝撃の光景を目にする。
門番であろう人物は肉片へと姿を変え、至る所に散らばっている。まるで、体の内側から爆発したかのようだった。
武器を取る暇もなく、殺されたのだろうか、槍は入り口に立てかけられていた。
2人とも精神的にダメージを受け、吐き気を催す。
しかし、
「た、助けて、助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
神殿の中から叫び声がする。
飛朗斗は吐き気を抑えて、たてかけてある槍を手に持ち神殿の中へと進む。
その姿をみてニスルも付いていく。
神殿内部はなぜかアヌビスの神殿に酷似していた。
神殿の通路を進んでいくと、先ほどの叫び声の主だろうか?
通路の壁が血液により赤黒く染まり、肉片が飛び散っている。
どうやら、犯人はさらに奥へと進んだようだ。
追いかけて飛朗斗達も奥へと向かう。
そして、大広間のような場所にたどり着くと、一人の女性とアヌビスによく似た人物が武器を手に戦っていた。
女性は短剣を二振り持ち、素早い動きで相手を斬りつけていく。
一方アヌビスによく似ている人物はシャムシールだろうか?綺麗な曲線を描いた剣を一振り手にして応戦する。
しかし、相手の動きに確実についていけていない。
すると、ニスルが飛朗斗に話しかける。
「飛朗斗!あの男の人私の伯父さんなの!!助けないと!!」
しかし、おそらく神であろう二人の戦いに飛朗斗は踏み入れない。
隙を伺い、しばらく傍観する。
すると、ニスルの伯父が膝をつく。
そして女性が歩み寄り、とどめを刺そうとする。
飛朗斗は今しかないと一気に距離を詰め、女性の胸部へ向け鋭い一刺しを繰り出す。
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
女性は寸でのところで飛朗斗に気が付き、飛朗斗の槍を避け、手に持っていた双剣で飛朗斗へ反撃しようとする。
すると、膝をついていたニスルの伯父が、飛朗斗の作った一瞬の隙を逃さず女性の両手を素早く切り落とす。
そこへすかさずニスルが追撃をかける。女性はたまらず広間から抜け出していった。
「おい、あんた大丈夫か!?」
緊張の糸が切れたのか、ニスルの伯父が倒れこむ。
飛朗斗はとっさに受け止め、自身の膝の上へと頭を乗せ、仰向けに寝かせる。
ニスルがすぐに駆け寄る。
「おじさん!大丈夫!?」
落ち着いてよく見ると、出血がひどい。
伯父が掠れた声をあげる。
「ニスル…お前か…」
「そうだよ!どうして?何がどうなってるの!?」
飛朗斗はニスルの伯父を介抱しながら会話を聞くことにした。
「私は、お前の母の死をアヌビスに頼まれ、調べていた。そして、何人かの神が殺しに関わっている事実にたどり着いた。
しかし、たどり着いた途端に命を狙われるようになり、ここに身を隠していたのだが…このザマだ…」
すると、懐から石板を取り出す。
「ここに調べ上げた情報が入っている。これをアヌビスへ届けてくれ。」
手で持てないニスルの代わりに飛朗斗が受け取った。
「君は…そうかニスルのパートナーか…少年、ニスルの事どうか試験が終わるまで頼む。」
そう言い終わると、彼は息を引き取った。
「え?伯父さん?嘘でしょ?」
飛朗斗が首を振り、そっと彼を床へ置き、その場から離れる。
ニスルが近寄り、涙を流す。
しばらく経ってから彼を2人で埋葬し、2人は冥界へと急ぐのだった。
ニスルの伯父
アヌビスの兄で、闇にまぎれる権能を持つ。そのため、弟のアヌビスにとっての情報屋のような役割を担っていた。
ニスル、サクルの母の死に不自然な点を感じたアヌビスの依頼により、調査を行っていた。
しかし、敵に勘繰られ、刺客が放たれていたのだった。