第31話
大変お待たせしました。
掲載を再開します。
盾の神器を回収するため冥界を後にした紫乃歩とサクルは、天然の洞窟内を利用して作られた神殿の中を下へ下へと降りていた。
「しかし、この洞窟長いわね…かれこれ1時間近く歩いてるんじゃない?」
「そーだねー、ここには神器の中で最も力の強い盾の神器が保管されてるから、簡単に逃げられない様になってるのかも。」
「え、神器の中でも力の強弱ってあるの?」
「それがね、あるんですよ~」
そう言ってサクルは神器の強さに関して解説をする。
「神器の硬さや丈夫さは殆ど一緒なんだけどね、神器それぞれに権能が宿ってるの。例えば剣であれば切り裂くただそれだけに特化していたり、紫乃歩ちゃんの弓だったら、連射と属性付与がそれに当たるかな。」
「あ~言われてみれば、確かに普通に付与するより強く属性ついてる気がする。」
「でね、盾の神器の能力は攻撃の無力化。すべての攻撃を防ぎきる事の出来る鉄壁の防御。しかもその防御力で体当たりなんてされれば攻撃を無力化した上に、その堅さによるダメージも入って十分に攻撃にも使えるってわけ。」
「だから神器の中で最も力が強いって事?」
「半分はね。残りは、作った神様の神格を吸収しちゃった事による2重神格って物のせいかな。」
「2重神格って何?」
「2重神格ってのはね、本来物や人に宿る神格って1つなの。でも盾の神器には神格が二つ。神器本来の神格と、鍛冶の神プタハの神格、その両方を獲得して作られたのが盾の神器”デルゥ=プタハ”。2重神格を持ったことで莫大なエネルギーを放つ最強の神器だよ。」
「なるほどねー…」
その後も二人は色々と話しながら地下へ向かっていく。
ある程度進むと大きく開けた場所に出る。
まさしく大空洞である。
その大空洞の中央で揺らめく2つの炎。その中央には神々しく輝く巨大な一枚の黄金の盾。表面には非常に美しい細工が施されている。
「あれが…盾の神器”デルゥ=プタハ”…」
その神々しさに息を飲むサクルと紫乃歩。
二人はゆっくりと祭壇へ近づく。
その時だった。大空洞全体が大きく揺れる。
地震が起きたのだ。その地震は大きく、紫乃歩達が入って来た入り口が崩れた。
慌てて紫乃歩がカウス=プタハで崩れた岩を撃つ。
しかし狙った所には当たらない。それもそのはず。未だに揺れは収まっていないのだから。
「これって結構まずいんじゃない…?」
「うん…このまま天井が崩れてきたら私達生き埋めになっちゃうね…」
などと言ってると、目の前を細かい石がパラパラと降っていく。
紫乃歩達の顔は真っ蒼になっていた。
上を見上げる紫乃歩とサクル。
すでに天井にヒビが入っていた。
紫乃歩はカウスを天井へ向け構える。
そして氷の属性を付与した矢を放つ。天井へ届いたその矢の周辺は凍り、固まる。
ヒビの部分を狙い、次々に氷の矢を放つ。しかし、ヒビはどんどんと大きく、複雑になっていく。
ついに岩塊が落ちてくる。二人は近くにより、お互いにカバーしあいながら落下してくる岩塊を壊す。
そして一つの岩塊が紫乃歩の真上から落ちてくる。
破壊も不可能。紫乃歩は動けない。その場に固まってしまった。
「紫乃歩ちゃん!!」
サクルは紫乃歩を庇うように岩塊と紫乃歩の間に飛び込む。
「サクル!!」
その時であった。大空洞の中央から眩いばかりの光が放たれた。
≪大切な者を守りたいと強く願う想いを認識した。我は其方に力を貸そう。≫
低く、腹に響く声が大空洞に響く。
サクルの元へ飛来する黄金の塊。頭上に降って来ていた岩塊を受け止め、跳ね返す。
そしてサクルと融合する黄金に輝ける盾の神器デルゥ=プタハ。
サクルは自身の体に力が漲るのを感じる。
「紫乃歩ちゃん地上まで二人分の穴開けれる?」
サクルが紫乃歩に訊く。
紫乃歩はカウスに出来るか問いかける。
≪全力前例の一撃であれば可能ですが、それに見合うだけの魔力を消費します。≫
それがカウスの答えだった。
この窮地を抜けるにはしょうがないと、紫乃歩は了承し、サクルに伝える。
それを聞いたサクルは紫乃歩にとある陣を書いてほしいと頼む。
言われたとおりにその場に陣を描く紫乃歩。
その陣が出来るまではサクルがデルゥ=プタハの力を使い落石を跳ね返し、大空洞の外側へと積んでいく。
「できた!!サクル!」
「紫乃歩ちゃん、しばらくしのいでて!!」
紫乃歩はすぐさま落ちてくる岩石を打ち砕く。
サクルは陣に入り、呪文を唱える。
すると、サクルの体が光始め、魔術が発動し始めるのだった。
あと少しで完結になるかと思います。
どうか最後までお付き合いください。