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Horus~2神の復活~  作者: Syuteu
第4章 神器セイフ=プタハ
29/34

第28話

ここからは回想編です。

飛朗斗の身に起きた過去の話になります。

楽しんで頂ければ幸いです。

 これはまだ飛朗斗が幼かった頃の話。

 その日は久しぶりの家族そろっての旅行だった。目的地は建設中のダム。

 水が張られていない珍しい姿のダムを見ることができると、その当時話題になっていたらしい


「おぉすごいな!普通のダムは一度だけ見たことがあるが、ここまで景色が違う物か…」


 と飛朗斗の父。天沼あまぬま 飛鷹ひよう


「そうね。家族そろって来られたのは、いい思い出になりそうね。」


 と飛朗斗の母。朱葉あげは

 そして鼻水をすすりながら、母の朱葉に手を繋がれて居るのが飛朗斗である。

 もちろんこの周りは少なくない人数の人間が並んで歩いている。

 柵はそこまでしっかりした物ではないが、子供も落ちることが無いように作られている。

 天沼一家は人の波にもまれながらも家族3人楽しい時間を過ごしていた。

 ふと飛朗斗の目の前を1匹の綺麗な蝶が通り抜ける。

 

「ちょうちょ!」


 飛朗斗は母から手を離し、蝶を追いかけ人ごみの中へと消えてしまう。

 

「飛朗斗!!」


 父と母は必死に人ごみをかき分け、飛朗斗を追いかけるが、この人ごみの中では圧倒的に子供の方が早い。

 親の心配なんて物はこの歳の飛朗斗には分からい。どんどんと蝶を追いかける。

 蝶が人ごみから柵の方へ出ていく。そこは丁度柵の継ぎ目。通常より隙間が大きかった。

 飛朗斗は蝶を捕まえたさにその隙間へ体をねじ込む。柵の反対側へ出ることが出来た。

 蝶は飛朗斗の目の前を再び通りまた遠くへ行く。

 飛朗斗の事へ気が付いている人はいない。

 

「飛朗斗!!!」


 母があと一歩のところまで追いつく。

 だが遅かった。飛朗斗は蝶目掛け、跳ぶ。勿論その下は断崖絶壁。しかも下には完成前で水もほぼ溜まっていない。(薄く底が見える程度には張ってあるが、クッションになるほどではない。)

 飛朗斗の手は蝶には届かない。 そのまま下へ落ちていく。

 母は飛朗斗が居た場所まで辿り着き飛朗斗へと手を伸ばすが、もう手遅れ。飛朗斗の体は下へ下へと落ちていく。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 母の悲鳴が辺りにこだまするのみだった。

 真下は柵のせいで見えない。

 飛朗斗の姿は見えなくなっていた。

 飛朗斗は怖さのあまり気絶するのであった。



 飛朗斗は周囲から聞こえる声で目を覚ます。

 目覚めた場所はダムからそこまで遠くない林の中。優しい木漏れ日が漏れていた。


「お姉ちゃん凄ーい!私も負けないよ!!」


 姉妹が仲良く遊ぶ嬉々とした声であった。


「ん…ここは何処?」


 背中には優しく手が添えられている感覚があり、人の気配がある。その人物から声を掛けられる。


「僕、怪我はないかしら?」


 優しいく包み込む木漏れ日のような声だった。

 その人物は綺麗なオレンジの髪は縮れ、天然パーマのようだ。そして見慣れない服を着ていた。見た目は30代手前程。


「おばさん…誰…?」


 女性の眉がピクリと吊り上がる。周囲で遊んでいたはずの姉妹の嬉々とした声が一瞬にして止んだ。


「僕?お姉さんでしょ?」


 少し威圧するような声で笑顔の圧力を掛けてくる。


「ご、ごめんなさい…」


 飛朗斗の目には涙が浮かんでいた。


「しっかり謝れて偉いわね~、よしよし、僕の名前を教えてくれる?」

「う、うん…飛朗斗…おば、お姉さんは誰なの?」


 そう聞かれて若干戸惑う女性。


「え、えっとぉ…私は……隼瀬はやせ 風音かざね。よろしくね、飛朗斗君。飛朗斗君は何処から来たのかな?」


 聞かれた飛朗斗は周囲を見回し、ダムを見つけ、指をさし、


「あそこ。」


 風音と名乗った女性は顎に手を当てやっぱりかといった顔をしていた。


「飛朗斗君、何処か痛いところとかないかな?」

「んっとねー…大丈夫。」

「そっかじゃぁお姉さんとお迎えが来るまで待ってよっか?」

「うん。」


 風音は飛朗斗の頭を撫でる。二人で話していると鳥(隼なのだが)が2羽近づいてくる。

 

「私達のお母さんだから取らないでよ!」


 突然2羽の鳥がそんな風に喋るのである。飛朗斗は目を丸くしていたが…


「鳥さん喋ったぁぁぁぁぁ!!えぇすごい!ねぇねぇもっと喋って!!喋って!!」


 飛朗斗は予想外の出来事に大興奮。隼に近づき、もっと喋ってとせがむ。


「ニスル、サクル。この子と遊んであげて。くれぐれも怪我させない様にね。」


 風音は丁度いいところに来たと2人に飛朗斗の相手を押し付ける。


「えぇなんで私達がこの子の相手しなきゃいけないの?」

「お姉ちゃん、これもきっと立派な神様になるための修行だよ!」

「んんんん~…しょうがないか!ほら遊ぶよ。」

「飛朗斗君だっけ?何してあそぼっか?」

「んっとねー…じゃぁ鬼ごっこ!!」


 風音はそんな微笑ましいやり取りを、木を背もたれにして座って見ている。その顔には優しい笑みが浮かんでいた。

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