第27話
ヌトが飛朗斗達の元を後にしてから20時間が経過していた。
飛朗斗達に掛けられた封印術は時間の流れを止める物だった。
その止まった時間の中でも活動が可能なのは時の権能を持つ神。それとそれに近い能力を有する物のみである。
たとえ神器であったとしても持ち主の思考を止めない様に守る事で精いっぱいである。
≪現在この空間に囚われてから20時間が経過しました。外部への連絡は依然取れません。≫
≪こっちも同じだ。全く連絡が取れない。この空間は隔絶されている。≫
何度目の報告だろうか…5時間ごとに報告を頼んだのは飛朗斗だったが、少しうっとおしく感じてきた。
あれから色々な事を試した。
神器を大きくしてこれを割るという案が一番良かったと思ったが、神器ですら行動不可能だった。
たとえ出来たとしても外へ出た部分が切断され、地面へ落ちるだけと神器2本による演算で裏付けられた。
それが10時間前の出来事。それ以降いい案が浮かばないまま寝たり、ロムフとセイフの力で精神世界を作り、2人でイメトレという名の模擬戦をしたりしていた。
「あ、いいこと思いついた。」
ふとニスルが念話にて言ってきた。
「なにを思いついたんだ?」
どうせ上手くいかない。そう思ってた。
「神器同士がぶつかるとすっごい衝撃波出るじゃん。あれ利用できないかな?」
精神世界での模擬戦時、ロムフとセイフがお互いの攻撃で接触した際にとんでもない衝撃波が出たのだ。説明を求めたところ、神器同士の神格がぶつかり合い出てきたのだとか。
「お前さぁ…この状態で神器動かせないだろ?」
「あーそっか…じゃぁ無理か…」
≪いいえ、可能かもしれません。≫
ロムフがいきなり会話に参加してきた。
≪現在マスターたちへ精神防御支援をしております。それを遮断、そしてぶつかる様にお互いに形状を変化させれば衝撃波を出すことが可能です。≫
≪だが、その間飛朗斗達の精神は無防備になる。下手をすれば、この空間の特殊効果によって廃人になる可能性がある。一か八かにしては分が悪すぎる。≫
ロムフの案にセイフが反対する。
「だけど、それで脱出可能なのだとするなら試す価値はある。だろ?ニスル。」
「うん。やるだけやってみようよ。一刻も早く脱出する方が先決だもんね。」
二人はロムフの案に賛成した。やれやれといったため息をつくセイフ。(本当はつかないのだがそこは感覚だろう。)
≪では精神防御支援を遮断します。成功し空間から脱出できるのは30秒後と予測されます。マスターおよび飛朗斗さんは飲み込まれないようお気を付けください。≫
≪気合入れろよ飛朗斗。結構きついからな。≫
≪開始します。≫≪やるぞ!≫
精神防御が遮断される。途端にとてつもない憎悪、悲痛、怒り。マイナスの思念が飛朗斗とニスルへ襲い掛かる。
飲まれそうになりながらも必死に抵抗する。
その間神器たちはお互いの形状を変化させながら触れるように最適な形へ変形していく。
そうして精神防御が解除されて29秒が経過し神器同士が接触。
≪神格を最大解放します。≫≪応!≫
その空間内は時間が止まっている。しかし神格同士のぶつかり合いで発生する衝撃に時間や、物理といった物は関係ない。
激しい衝撃がその空間を襲う。そして。
≪封印術の解除完了しました。≫
ニスルは気絶しかけていたが、ロムフの声に意識を取り戻す。
飛朗斗は完全に意識を失っている。ニスルの背中から滑り落ちる。
「飛朗斗!!」
ニスルはとっさに人間形態になる。そして飛朗斗に抱き着き、飛朗斗の名前を呼ぶ。
「飛朗斗!!飛朗斗起きて!!」
(この感覚前にもどこかで…)
飛朗斗は過去の出来事を走馬灯のように思い出していた。
それは飛朗斗がまだ幼かった頃の話。自身の記憶にはなく、後に父と母より聞いた話である。
飛朗斗は家族で行った建設中のダム。そのダムの柵は子供が通り抜けられる程の隙間があり、幼い飛朗斗は蝶を追いかけその隙間を通ってしまった。
その先には貯水された水が少量溜まっていた。もちろん落下して助かるレベルではなかった。
しかし、飛朗斗は幸運にも少し離れた場所で発見され、衣服は濡れていなかったらしい。
当時は不自然だが事故として処理された。世論では奇跡が起きたとか妖怪が助けた。河童が出たのでは?などなど色々な意見が飛び交ったものだった。
しばらく噂になっていたが、時と共に誰も話さなくなっていった。
その時の記憶は飛朗斗にはない。しかし体は覚えている。あの時救ってくれたのは妖怪や河童ではない。何しろ水になど入っていなかったのだから…
次回から回想編に入ります。
本編から少し離れますが、非常に重要な話になる…はず!!
お楽しみに!!




