第22話
ここから新章突入です。
そして敵との本格的な接触も…?
物語はここから終幕へと向けて加速していきます!!
剣の神器を回収に向った飛朗斗とニスルだが、例のごとく目的地にはつかなかった。
到着した場所は荒廃した世界。天を衝くかのように伸びたビル群は斜めになり、大量の砂に半分以上が埋もれている。生物の気配は感じる事が出来ず、ニスルに聞いたところ、ロムフでも生命反応は確認できないとの事だった。
「なぁ、お前ホントに方向音痴だよな…」
「う、うるさいわね…それよりどうするの?」
「どうするって探索するしかないんじゃないか?何かあるかもしれないし」
それもそうね。とニスル。2人は周囲の探索を開始する。
2時間ほど歩き回り、とあるビルの陰に入った時ニスルが警戒するように言ってくる。ロムフが敵意を感知したらしい。
「おや?誰かと思ったらこの肉体の”元”持ち主でしたか…この体はもう私の物ですがまぁ良いでしょう。ここで殺しておきましょう。それに相方の鳥さんはどうやら神器を持っても居そうですしね」
二人の目の前に現れたのは飛朗斗だった。(正確には飛朗斗の体を乗っ取り操っている何者かなのだが)
2人は武器を構える。ニスルは操作権をロムフへと移行する。するとロムフから報告を受ける。
「あの方の体を攻撃すると飛朗斗さんにもダメージが入ります。」
「ちょっとなんで先にバラしちゃうわけ?まぁ良いか。じゃぁ行くわねッ」
敵が手を少し振る。その手から複数の魔法弾が生成され、2人へと襲い掛かる。
(ロムフ、ダメージは与えないで!!ガードだけ!!)
「了承しましたマスター。なお、撤退を推奨します。現状の戦力では勝ち目がありません。」
飛朗斗の顔が引きつる。ロムフが撤退を推奨する敵?そんなのバケモンじゃないか。と内心思うが、口に出す余裕がない。
魔法弾が行きつく暇なく飛んでくる。ロムフが多少多く弾いてくれてるおかげで飛朗斗も自身を守る事でぎりぎり耐えていた。
「いいわよぉ。二人ともいいわぁ。それじゃぁもっと激しく行こうかしら!」
大興奮である。魔法弾がさらに早く多くなる。
そんな時だった。二人と敵の間に何者かが落ちてくる。砂埃が巻き上げられ、姿を確認できない。
「あなた…私の配下だったわよねぇ?謀反かしら?だとしたら許さないわよ?」
「何を馬鹿げた事を言っている。俺はもともとこいつらの側だ。お前ら、今の内に遠くへ逃げろ。くれぐれも影の中に入るなよ?行け」
「お前はッ!」
そこに立っていたのはトトの塔で出会った物凄く強い槍使いの男だった。
「撤退します。飛朗斗さんお掴まり下さい。」
ロムフが手を差し出す。男を睨みながらも差し出された手を握る。握られるのを確認するとロムフは空へ向けて飛び空中で隼へと姿を変え、飛朗斗を背中へ乗せ、飛び去る。
「ふーん、スパイだったんだぁ…それなら私の落ち度だけど、まぁ殺すわ。」
そう言うと複雑な印を高速で組む。
魔法弾が先ほどの数倍の数が展開される。そして一斉に放たれる。全弾命中する。男の体はボロボロになるが口元は緩み笑っていた。
「ありがとよ。お前らの情報はしっかり渡させてもらうわ。」
男は前へ膝から倒れる。飛朗斗の体を操ってる敵は首を捻るがまぁいっかとその場を後にする。男の顔を踏みつぶしながら…
敵が去った後には男の死体。その死体から右目の眼球が零れ落ちていた。
「戦線からの離脱完了しました。操作権をマスターへ返還します。」
「あいつ…俺らの味方だって言ってた…でも俺はあいつを許せる気がしない…」
「そうだね…トトさんは大丈夫だったけど、それでも簡単には許せないよね…」
そんな事を言いつつもあの男に言われたように日陰に入らない様に、比較的倒壊の恐れがないビルの上で座り込んでいた。
会話をしていた二人の所へ光る玉が飛んでくる。その玉はニスルの左目へ吸い込まれるように吸収される。
「目の中に何か入ったぁぁぁ!!!あれ?…痛く…ない…?」
「大丈夫か?今の何だったんだ?」
飛朗斗は心配そうにニスルの目を覗き込む。
ニスルの顔が若干赤くなる。
「だ、大丈夫だからっ…」
「いいから、見せてみろって」
「い、いいからっ」
そう言ってニスルは槍形態へ変身してしまった。
「そ、それよりこれからどうする?」
「うーん…下手に動くとあいつに見つかりそうだしな。夕方までここで待機するしかないんじゃないか?」
「やっぱりそうだよねー…仕方ないか…」
そうして二人はこの場所を移動せずに夕方まで待機する。
「そろそろ、時間だな。帰るか。」
「そうだね、さぁ乗って。今度は落ちないでよ?」
「それを言うなよ」
二人は仲良く冥界へと帰っていくのだった。