第17話
はい、新章入ります。
ここからは紫乃歩とサクルのパートです。しばらくの間飛朗斗とニスルは出てきません。
少し時は遡り、ここからは飛朗斗達と別れた後の紫乃歩とサクル、2人のお話…
「ねぇ、サクル、これから回収に向かう武器って一体どんな武器なの?アヌビスの慌て方凄かったけど…」
「ん~?これから回収に行く武器はね、私達神ににとって伝説級の代物なの。それこそ、誰でも知ってる童話の中にも登場するぐらいなの。」
「えっ、じゃぁやっぱり勝手に手にしたりしたらそれこそダメなんじゃないの?」
「うん。だからこそのお父さんのあの慌てようだよね。本来は誰一人として触れちゃいけないって神界の決まりなんだけどね~。それでもその武具たちを手に入れないといけない程に私たちの戦力は絶望的って事だよね…そろそろ着くよ。」
ゲートを抜けるとそこは広大な森が広がっていた。
「凄い…こんな光景生まれて初めて見たかも…」
紫乃歩が一面に広がる森を眺めながらつぶやく。
しかし、サクルはこの森が不自然なことにすぐに気が付く。
「この森…生物がいない…」
「えっどういう事?」
「動く草木がないし、何より、声がしないでしょ?」
そう言われ紫乃歩は耳を澄ませる。確かに動物たちの鳴き声が一切しない。
「本当だ…何も音がしない…」
二人はその森に降りずに周囲を警戒しながら、周囲を調べることにした。
1時間ほど上空を西に東に、南に北に飛び回り、生命の存在しない森がとある場所を中心に直径10㎞の円形であることを突き止める。
「こうしてても仕方ないし、そろそろ森の中に入りましょうか。」
最初に言い出したのは紫乃歩紫乃歩だった。
「OK、じゃぁ森の中心目指して高度下げるね」
サクルはそう言うと、森の中心地点を目指し、高度を下げていく。そうして地表へと着陸した時、2人の頭の中に声が響いた。
≪私の名はカウス=プタハ。この森を訪れし者に試練を与える。達成者には褒美を差し上げましょう。≫
声が止むと、脳内に試験の内容が伝わってくる。
その内容は、この森の中を駆け回る黄金の兎を射止める事だった。
「ねぇ、サクル前に使った通信機持ってきてる?」
「ん?うん。あるよ?」
紫乃歩がサクルのバッグから木で出来た通信機を1対取り出し、自分の首とサクルの首へ掛ける。
「サクルが上空から兎を探して、私を案内する。そして私が弓で射止める。どう?」
「いいね!それでやってみよう。」
そう言うと、サクルは早速上空へと飛び立つ。紫乃歩の真上を旋回飛行しながら標的を探す。
『居た!!しっかり付いて来て』
上空のサクルから通信が飛んできた。どうやら見つけたようだ。サクルが旋回飛行をやめ、一定の方向へ進み始める。
地上の紫乃歩はそれを見ると、サクルが飛んでいく方向へと走り始める。
なんだかんだ言って紫乃歩の体力は大したものだった。
普段から歌いながらしっかり踊っているのだ。身体能力は同い年の女子より高い。
森の中を走る。ある程度走るとサクルから再び通信が入る。
『あと70メートル!方向は紫乃歩ちゃんから見て右斜め前』
紫乃歩は息を殺し、言われた方向に目を凝らす。
居た。黄金に光る兎である。こうして見るとかなり目立つ。
ゆっくり、ゆっくり、音を立てない様に進む。
紫乃歩がぎりぎり当てられる30メートルほどまで目標に近づく。
そして矢筒から1本矢を取り出し、弓に番える。狙いを絞り、放つ。
直撃コース。確実に当たった。そう思った。
しかし、兎は矢を避けるだけでは無かった。
完全に死角から飛んできた矢を、上に飛び避ける。そして刺さった矢の上に乗ったのだ。
「嘘でしょ…?」
紫乃歩は開いた口が塞がらなかった。
ウサギは此方を見つめていた。頭の中に再び声が響く。
≪惜しいわね…それではダメよ。≫
声が止むと、ウサギが走り出し、再び追いかける事となる。
「今のって…もしかして兎が声の主?」
カウス=プタハの詳しい紹介は次の機会にさせてもらいます。