第15話
すいません更新遅れました!!
実質今回で第2章は終了です!!
それではお楽しみください!
獣人の雄叫びが渓谷に響き渡る。
しかし、その様子を見てもニスルの表情は変わらない。
「オ前ラ、絶対殺ス!!」
獣人がニスルへ狙いを定める。
『敵対対象の危険度上昇。対処を開始します。』
ニスルの声とは思えないほど冷酷な機械のような声だった。
両者は睨みあう。2人の間に一陣の風が吹き抜ける。
止んだ瞬間…両者が同時に踏み込む。
勝負は一瞬だった。
ニスルは槍を振りぬく、獣人はこれまで見せなかった抜き手である。
両者振り抜いた状態での静止…そして…
「グフッ」
獣人は胸から血を吹き出し前へと倒れこむ。
『敵対者の排除を完了。マスターへと体の操作権限を変換…』
ニスルの表情が、無感情のそれから変わっていく。
「わ、私…簡単に他の人を…」
ニスルは顔を両手で覆い膝をつき、すすり泣く。
飛朗斗はニスルに近寄り、正面からそっと抱きしめる。
ニスルが泣く止むまで二人はその場でしばらくの間そうしているのだった。
辺りは暗くなり、すでに夜を迎えていた。二人は渓谷を登り、森の開けたところで火をおこし野宿の準備をしていた。
「飛朗斗…さっきはありがとね…」
「ん?あぁ…」
会話は続かない。二人とも敵だとは言え、他人を殺してしまったことを気に病んでいるのだ。
「えっと…ニスルが戻って来てくれて助かったよ…あのままだと俺死んでたから…」
切り出したのは飛朗斗だった。
「ううん…飛朗斗が私を信じて待っててくれたから、私もこの子を持って戻れたんだよ…」
そう言ってニスルは手の上に槍を出す。
「しかし、便利だな…どこからでも出せるんだろ?」
「うん…この子が言うには私と融合したから、私の体の一部になったって言ってる。私が人間の姿になれるのもこの子と融合したからみたい。」
「一応そいつにも自己紹介しておいた方がいいかな?」
「かもね…さっきの戦闘の時、一瞬だけど飛朗斗の事も殺そうとしてたし…」
そう言ってニスルは体の操作権をロムフに移行する。
『操作権の移行を確認、周囲に敵対反応は確認できません。マスターへ操作権を返還します。』
すぐに操作権を戻そうとするロムフ。
「ちょっと待ってくれ、一応これから一緒に旅をすることになるんだから、自己紹介させてくれ。」
飛朗斗に視線を向けるロムフ。
「俺は飛朗斗。ニスルのパートナーって事でいいのかな?よろしく頼むよ」
飛朗斗は握手をしようと手を差し出す。
『自己紹介を確認。対応します。私はロムフ=プタハ。真神鉄にて作られた神器の一振りです。宜しくお願いします。』
軽く手を握り、離す。そして操作権がすぐにニスルに戻される。
2人はお互いの精神を癒すかのように、しばらくの間他愛のない会話を楽しみ、その日は体を休めるのだった。