第9話
先日カミソリで指先を切りました…
かなり痛い(´;ω;`)
トトを守れなかった飛朗斗達は、奥の部屋から忽然と姿を消していたニスルを探していた。
飛朗斗が奥の部屋、紫乃歩が入ってすぐの本棚がある部屋をそれぞれ探す。
しばらく闇雲に探す飛朗斗。
「おーい、ニスル~何処だー」
などと言っていると、目の前を羽虫が飛び回る。
うざったく感じた飛朗斗は両手で潰そうと勢いよく掌を叩き合わせる。
羽虫は逃げる。
逃げた羽虫を追い立てるように次々に掌を叩き合わせる。
そんな事をしているとニスルの声が聞こえる。
「ちょっ!危ない!!やめて!!飛朗斗ストップ!!」
飛朗斗は一度虫を叩くのをやめる。
周囲にニスルの姿はない。
再び羽虫が視界に入った。叩いて駆除しようとする。
またニスルの声が聞こえる。
「だからっ…やめてってば!!」
飛朗斗はまさかと思い掌を上に向けそっと前へ差し出す。
すると、潰そうとしていた羽虫がその手に止まった。
顔に近づけ、よーく見る。
ニスルだ。
「お前、一体どうしたんだ!?」
ニスルの体は羽虫サイズまで縮んでいた。
急いで紫乃歩達と合流する。
ニスルから事情を聴くとこうだった。
あの男が襲撃してきて奥の部屋へ逃げ込むと、トトが自分に魔法をかけてこう言ったそうだ。
自分が死んだら塔の一番上まで登ってくるように。ただし飛んで行っては行けない。必ず登るように。と
「塔を登る?まさか外壁をよじ登れって事なのか?」
飛朗斗はニスルに聞く。
ニスルの体はまだ縮んだままだった。もちろん合流してからサクルが解除を試みたが無理だった。
サクル曰く、私の魔術より数段上で術を掛けた人物が解除しなければ解除できないだろうとの事。
「どうやら上るしかないようね。」
紫乃歩がしぶしぶ言う。
「本気か?中に階段とかなかったのか?」
飛朗斗が紫乃歩に問いかける。
「えぇ。本棚の後ろとかも一応見たけど何もなかったわ。サクル、裏口とかも無いのよね?」
「ここでしばらく生活したことあったけど裏口なんてなかったよ。」
「ここで考えていても仕方ない。外に出て周りを見てみよう。」
一行は外へ出て塔の周辺を回る。壁面をよーく観察しながら周りを歩いていると、一か所だけ不自然な場所を見つける。
明らかに手をかける棒やら、溝が彫ってある。
すぐ横には鉄板に“上を目指す者ここを登らん。”などと書いてある。
「サクル、お前が生活してた時にこんなのあったか?」
「ううん。なかった。もしかしたらトトさんが死ぬのがトリガーで隠遁の魔術がかけてあったのかも」
飛朗斗はそうかと一つため息をこぼし、早速登り始める。
「ちょ、ちょっと!!本気で登るつもりなの?」
紫乃歩が制止する。
「登らなきゃニスルが元に戻らないんだ。上るしかないだろ。」
「それもそうだけど…」
などと言い合いをしているとサクルが紫乃歩の肩をつついた。
どうしたのと紫乃歩がサクルに尋ねる。
「私のバッグに木の人形が1セット入ってるからそれ取り出してくれる?」
紫乃歩は言われたとおりにバッグから木の人形を見つけ、取り出す。
「これは何なの?」
紫乃歩が不思議そうに木の人形を色々な角度から見る。人形には紐が通してあった。
「これはね~優れもので、同じ木から掘り出した人形なんだけど、中に魔力が込められていて、通信機として使えるの!紫乃歩と飛朗斗君それぞれ1個づつ首から下げてね。そして、飛朗斗君私のバッグの中に水色の薬があるんだけど取ってくれる?」
飛朗斗は言われた通りサクルのバッグから水色の液体が入った小瓶を取り出した。
「これは?」
「それはねーなんとビックリ!マジックポーションですっ。それを飲むと、高いところから落ちても平気になります。」
私ってば準備良い~♪などと言ってるサクル。
そして一通りの通信のやり方を教わり、地上には何か起こった場合に対処できるように、紫乃歩とサクルが待機することになった。
飛朗斗とニスルはトトの残した伝言に従い塔の上を目指し上る。
この時の飛朗斗には上で何が待っているのかはまだわからないのであった…
8代目ホルス(ニスル、サクルの母)
歴代初の女性ホルス。人間をこよなく愛し、見守った。
3か月ほど前に不自然な死を迎えたが、女性初のホルスだったから何かあったのだろうという事になり、事件ではなく、事故として処理されたのだった。