第0話
ななてんが書き終わりを迎えてはいませんが新作を書かせていただきます。
楽しんで読んで頂ければ幸いです。
昔々、人間が生まれるより遥か昔。
今だ大地と大空の境界が曖昧だった頃、そこは神々が支配していた。
中でも3番目、4番目に生まれた神は力も体も大きかった。
その二人は兄妹だったが愛し合い、神の仕事もせず朝から晩までずっと一緒に居た。
そのため、彼らの親である大気の神シューが彼ら二人を引き離した。
兄であるゲブの体と権能は大地に、妹のヌトの体と権能は大空に。
こうして大地と大空が出来上がった。
その数百年後、大地に人々が生まれた。
それと時を同じくして神が多くなり、神々の争いが始まる。
その争いは数千年続いた。
そして、アトムと呼ばれる神が頂点に立った時、争いが終わる。
彼は神々の王となり新たな制度を設ける。
それは襲名制度。一定数の座と役職、そして名前を用意し、次の世代へと受け渡す。
この制度によって争いは起こらなくなった。
そして幾万の年月が流れる。
神々を任命する祭壇に多くの神とその親族が集まっていた。
「この者を第8代ホルスに任命する。」
その声に反応するように大きな歓声が上がる。
「すごいよな、歴代初の女神ホルスだ」
「昔あの子と付き合ってたんだよ!」
「嘘だろ!?」
などと歓声の片隅で話し声が聞こえた。
父が私と妹を抱き上げ語りかけてきた。
「あれがお前たちのお母さんだぞ!すごいだろ?」
その言葉に妹が返す。
「私、大きくなったらお母さんみたいな神様になる!!」
「そうか、そうか、サクルはお姉ちゃんを抜かして神様になれるかな?」
「なれるよ!だって、お姉ちゃんは大きくなったら人間になりたいんだもん」
その言葉に私は少し焦って取り繕うように言葉を紡ぐ。
「そんなことないよ。私もお母さんみたいになるんだもん!」
それを聞いて父は笑みをこぼす。
「はっはっはっは!なら、お前たち姉妹はこの先ライバル同士だな!!」
その後の事はあまり良く覚えてない。
でも、私は今も人間になりたいと思っている。
神の仕事なんてただ人間たちを見守るだけでつまらないから…
あれから何年たったか覚えていない。
だけど、数日前に母は死んだ。それは不自然な死だったが、歴代初の女神ホルスだったためか
事件ではなく、事故として処理されたのだ。
そして、新たなホルスの候補として、私たち姉妹が選出された。
私は面倒だったので行かないことにしようかと思ったのだけど、試験官を父が務めることを、当日になって知る。
もちろん、大遅刻で行くことになった…
この時の私はまだ、母の死をきっかけに起きる神々と人間を巻き込んだ大きな事件が起きることを、知る由もなかった。
次回からあとがきで人物紹介を書いて行こうかと思います。
どうぞお楽しみに!!