真っ黒な孤独
とあるグループで「15分チャレンジ」なるものを行なっていたので便乗してみました。
私の15分の世界は少しちっぽけでした。
それは、キャンパスに絵が描かれた真っ黒な孤独。
夏美は一枚の絵画を目の当たりにしてそう推測した。いや、間違ってはいないのだろう。
なぜならこ絵のタイトルこそ「孤独」なのだから。
身の丈ほどのキャンパスには広大な海とそこに住まう生き物たちの姿が自由に、かつ大胆に描かれていた。
その中心にいるのは真っ黒い小さな魚。
これが孤独を描いていることは間違いなく、夏美は幼い頃に読んだ絵本を思い出した。赤い魚の群れに生まれた一匹の黒い魚。蔑まれ疎まれ孤独を味わっていた彼(彼女?)がとある敵の襲来に赤い魚たちと共闘し大きな魚を描きそれを退治する。黒い魚は目の役を担った。そんな話だったと記憶している。名前は、忘れた。
今目の前にある絵は赤い魚こそいなかったがそれによく似ている。
「こいつが孤独なんて、誰が決めたんだろうな」
ふと、そんな言葉が耳に飛び込んだ。
それは美術館にはまるで縁遠そうな髪の毛を真っ赤に染めた学生服の少年の言葉だった。彼は、真っ黒な髪の友人に語っていた。
「この中に黒い魚がこいつしかいないってだけでそれの何が孤独だっていうんだ。ほら、ピューなんとかって賞とった禿鷲と子供の写真だって鷲に狙われた子供のヤバイ写真かと思ったら写ってないすぐ側に親がいたらしいじゃん。結局そこにあるもの全部が現実じゃないんだ。むしろ長方形の世界に惑わされてる。そうだ俺たちは世界の断片しか見せられてない。仮にこの絵が現実ならこの絵を描いてる奴の真後ろには赤い魚が大きな魚を描いて今にも襲いかかろうとしてるぜ」
友人は赤毛の彼がまるで何を言っているのかわからないというように首をひねるがそれでも話は止まなかった。
夏美はもう一度絵に一瞥くれる。
確かに、この黒い魚は「目」なのかもしれない。
少年たちが学生服の集団に呼ばれて紛れていく。その中でも彼の赤い髪は一際異彩を放ち目立っていた。
なるほど。
彼は孤独ではないのだろう。




