4:セリア
少し短めですが・・・
日本第一魔法高等学校「資料室」、二人を窓から入る月明かりが照らす。
「大尉、今日の食堂での一件、耳にしましたよ」
「・・・・・・イノさん、もう知ってるんですか?」
「当たり前ですよ!私はこの学校の教員ですからね。それにしても目立たないと言っておきながら目立ちまくってるじゃないですか!」
「・・・なにも言えませんね。弁解させてもらうならヤナさんの息子があんなんだとは思わなかったんですよ」
「まぁそれは大尉の担任として申し訳ありません。私も柳中将のご子息だとは・・・」
「気にしてませんよ。それよりヤナさんの息子って知らなかったんですか?担任として調査書ぐらい読みますよね?」
「面目次第もありません」
「しょうがないですね、イノさんですからね。それより、昨日頼んだことはどうなっていますか?」
「現在、調査は続けていますが中々・・・」
「しょうがないですね・・・」
「それにしても大尉も日本に来たばかりですのにこんな小さな仕事を担当されなくても・・・」
「ははは、確かに小さな仕事ですね。ただ僕達、学生からしたら大きな問題ですよ。今回の件は・・・それにイノさんも自分が住む場所が汚れていたら掃除をするでしょ?ん?イノさんは掃除なんかしないか。まぁそれと一緒の事ですよ」
「私も掃除ぐらいしますけどね。確かに大尉は実際に住んでますしね」
「そうそう、2日目にしてとても居心地良いよ。あっそう言えばセリアさんは?どのクラスの担任になったんです?入学式の時、見なかったですし」
「あぁ・・・大尉それ聞いちゃいます?」
「えっもしかして、まだ来てないとか?予定ではイノさんと同じ一年の担任になってるはずじゃないですか」
「来てはいますしクラスに入ってますが・・・ただ生徒として入ってるんですよあいつ・・・」
「えっはぁー!?・・・まぁセリアさんならギリギリ1年生といっても通りますか・・・それに女子生徒の中に入れば情報の幅も広がりますしね。それでどのクラスに入ったんです?」
「Aクラスですね。もうすでにクラスメイトからは姉さんとか姉さんとかで呼ばれてます」
「セリアさん、面倒見が良いですもんねってはぁー!?」
ナギサはイノシカと別れ、寮に戻ると部屋の窓から見える満月を見上げる。
「・・・・・取り戻す・・・必ず・・・・・」
実技訓練が終わり、ナギサはいつもの二人と共に学校内食堂でコーヒーを飲みながら天井を見上げる。
入学して二週間か・・・イノさんからの連絡にも新しい情報はみられないし・・・まぁ焦っても仕方がないか・・・。そういえば、セリアさんに至っては姿が見えないけど、あの人、学校来てるのかな・・・。
「おい、ナギサ?何考えこんでんだ?」
「いやなんでもないよ。ただ何でも中々上手くいかないもんだなって思ってね」
「なんだそれ」
「まぁいいじゃない。人間、何かしら悩みはあるものなんだし・・・」
「お前にはないだろ?」
「失礼ね!私にだって悩みの一つや二つあるわよ!」
「ほー例えば?」
「例えばって、んー・・・・・最近、枝毛が気になる」
「聞くんじゃなかった」
「まぁまぁ本当に悩んでいる事はあまり人には言えないものだからね」
「そういえば最近、ナギサはいつも眠そうだけどあまり睡眠がとれてないほど何かに悩んでるの?本当に悩みがあるならあまり役に立たないかもしれないけど私たちで良ければ聞くよ」
「ははは、違う違う。寝不足気味は認めるけど、ただアビスの発現練習を夜にしているだけだよ」
「そうか、だから日に日にナギサの発現が上手くなってたのか。まだまだ戦闘は出来ないだろうが、うかうかしてたらナギサに追い抜かれてしまうな・・・」
「いえ、あなたはすでに追い抜かれていますから」
「何っ!?」
突如、後から声が掛かり、テツは急いで振り返る。そこに居たのは肩まで届くような長い金髪、モデルのような体型をした美しい女性が立っていた。
「ちょっといきなり話しに入ってこないでよ!ナギサはアビスが最近使えるようになった素人同然なのよ、長年赤岩家で訓練をしてきたテツに負けるわけないじゃない!」
「失礼しました。言葉が足りませんでした正確に言うならあなた方とナギサ様でははじめから天と地ほどの差がありますので追い抜かれるなんて言葉は最初から存在すらしてい・・・」
「はぁー・・・セリアさん、その辺にしておいてもらえますか?」
ナギサは頭を抱えながらセリアの言動を止める。
「ナギサ様、失礼しました」
「俺への謝罪はいいですから、二人に謝罪してもらえますか」
「お二人とも、いきなり失礼な事を申しました」
セリアは二人の方を向き頭を下げる。
「い、いえ」
「ナギサ、この方は一体誰なんだ?先輩か?」
「違う違う。彼女は・・・」
「ナギサ様、ここは私から・・・私はセリア=ベルトレイと申します。皆さまと同じ1年生でクラスはAです。ナギサ様とは幼馴染のような関係です」
「・・・そうそう、セリアさんとは幼馴染みたいなものかな」
「そうなのか。俺はお前が「セリアさん」とか敬語とか使うから先輩かと思ったよ」
「あぁ昔は俺より年上だと思ってからね。同じ歳ってわかってもつい敬語になるんだよ」
「でも、幼馴染のわりに『ナギサ様』っておかしくない?」
「確かにそうだよなー、なんかメイドさんって感じだな」
「ん?えっ?」
「それはわたくしから説明しましょう。・・・・・ナギサ様は私の婚約者ですから」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「「「えぇぇぇぇーーーー!!!!!!」」」
「そ、それは仕方がないな」
「そ、そうね。貴族でもこの年齢で婚約者を決めているのはおかしな話しじゃないわ・・・」
「・・・・・セリアさん?今日はなんか用事があるから付き合ってと言ってましたよね?だったら暗くなる前に行きましょう!早く行きましょう!」
「ナギサ様?」
「早く!」
ナギサはセリアの手を引き、足早にテツとシズクの元から姿を消す。
「なんか・・・ナギサがはじめて焦ってるの見たよ」
「そうね・・・」
残された二人は呆然と立ち尽くしながら呟く。
ナギサとセリアは学校の屋上に上がり人気がない事を確認し話し始める。
「セリアさん・・・色々とやってくましたね」
「ナギサ様、色々とは?」
「まずそれですよ!同級生に『様』はマズいですよ!」
「それは先程、説明致しましたが・・・」
「はっ!婚約者って言ってましたよね?婚約者はマズいですって!!」
「そうでしょうか?咄嗟に思いついたのですが、私ながらよく思いついたと私自身、自分を褒めてあげたいと思っているほどですが」
「・・・その理由を伺っても?」
「婚約者なら、ナギサ様のことを『ナギサ様』と呼んでも違和感もありませんし、今後、一緒に行動をしても何も問題は起こりませんから」
「・・・わかりませんがわかりました。もうすでに手遅れですからね・・・。あと、なぜ生徒なんですか!?予定では教員として学校に入ってるはずじゃなかったんですか!?」
「それは・・・楽しそうじゃないですか、学校生活」
「セリアさん・・・もういいです。それより、急に接触をするという事は、例の件で何かつかめましたか?」
「ええ、詳細データはナギサ様の携帯端末に送りましたので後で確認してください。データの解除コードは『α1058』です」
「わかりました。確認後、指示を出します」
「それと・・・ナギサ様の家に落ちてる『ゴミ』は少し大きいです」
「少し大きめのゴミ箱でも用意しておきますよ」




