予告
ーー誰か。
遠くから建物の崩れる音が響き、街を燃やす炎が天を焦がす。人類最後の砦であるハルパリウス王国の王城は、静かに崩壊へと歩みを進めている。
ーー誰か。
精強を誇った王国騎士団は、敵の圧倒的物量にすり潰された。遊撃弓兵隊は矢が尽きても尚敵と立ち向かい、無惨にも貪り食われていった。宮廷魔術省は最後の一人まで魔術を使い敵を打ち倒すも精神が限界を迎え、動けぬまま踏み砕かれていった。
ーーどうか、この声をお聞き届け下さい。
既に戦える者はなく、残った民はいずれ来たる死に怯えている。あの忌まわしき虐殺者、人を餌としか見ていない怪物、何も生み出さぬイナゴの如き群れ。『バトス』が王城の門を打ち破るその瞬間を、座して待つ事しか出来なかった。
ーーどうか、どうか。私たちの国を、この世界を。
そのハルパリウス王国、王城の奥深く。最早侍る者すら居なくなった玉座で、純白の姫君は静かに祈りを捧げていた。戦う為の剣はなく、唱えるべき魔術もなく、逃げるだけの無責任さも、民を鼓舞するだけの勇気もなく。一人のか弱き少女となった幼き姫君は、ただ祈り続けていた。
ーーここに生きる人々を、御救い下さい。
それは、無力な祈りであった。誰にも聞き届けられる事無く消える、無意味な慰撫であった。
…………そのはず、だった。
「アメリカ海兵隊の恐ろしさをあのバケモノどもに知らしめろ! ここじゃお前らがハリウッドスターだ、思う存分暴れてこい!」
『U・S・A! U・S・A!』
これは、本来交わる筈のない世界が重なった結果。
「おうおう、派手だねアメリカさんも」
「我々も続きますか?」
「いんや、必要ないよ。攻撃はあちらさんに任せてここの防衛に専念だ。こと防御に関しちゃ、アメリカどころか世界にだって負けんよ……何たってウチは自衛隊なんだからね」
絶望の淵に立たされた世界へと降り立った、不条理をねじ伏せる理不尽。
「あの怪物を叩き潰せ。我らの祖国へ忠義を示せ。全ては我がロシアの利益の為に……突撃を開始せよ」
『Ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!』
音速の戦闘機と勇壮なる竜騎兵が宙を舞い、重装騎兵と二輪バイクが併走し、騎士と戦車が戦列を組んで突撃を行い、溜弾砲が大地を耕し、魔法の斉射が爆発する。
「膨大な数が武器ぃ? 馬鹿が、数で我々中華人民軍に勝てると思っているのか。早々に奴らを蹴散らし、中華人民共和国の旗を突き立てるのだ! 安心しろ、兵士など五万といるわぁ!」
様々な思惑を孕んだ上層部の意志に翻弄されながらも、己が役目を果たさんとする兵士達。異界の軍勢に警戒を抱きながらも、一縷の望みを掛ける戦士達。そして、自らの進むべき道を模索する幼き姫君。
「諸君、あの場所では本物の騎士達が剣を手に取り戦っている。死が待ち受けて居るとも、その背にいる無辜の民を護る為に。騎士の末裔たる英国軍兵士諸君、我らは彼らの勇姿にどう動くべきだ!?」
『我らが忠義は女王陛下に! 我らが切っ先は忌まわしきバトスに!』
小銃と重砲を携えし兵士達、鉄の鎧と鋼剣を構えし戦士達。彼らが共に戦ったこの物語を、後の人々はこう名付けたという。
銃砲と鋼剣の戦い……『砲鋼戦記』と。
ノリと勢いと思いつきだけで書いた予告。
色々考えているけれど、どうなっていくかは未定。
暇な時にでも読んでやるか、という感じでどうかひとつ。