第二話
短めです。
かなり。
昔、猫を飼っていたことがあった。
両親が生きていたころ。
その猫と俺は出会った。
雨が降っていた。
傘を差していた。
段ボールの中で濡れていた。
性別はオスだと母親に聞いた。
彼とはよく遊んだ。
名前はリオ。
もちろん、俺が付けたものだ。
「........ん....」
息苦しさを感じる。
しかも、結構な重さを感じる。
顔に何かが被さっているようだ。
横にずらし、その姿を確認した時には驚きで言葉が出なかった。
「..........誰?」
それは小柄な女子生徒だった。
生徒であると思ったのは彼女が制服を着ているからであって、私服だったら小学生に間違えられるぐらい小柄だった。
良い夢でも見ているのであろう。
口からは今にも溢れそうな涎がたまっている。
幼い顔立ちのこの生徒とは面識もないはずなのだが、なぜか懐かしい気分になるのは何故だろうか?
「.......あ、起きたんですね」
「.....っ!」
後ろから声をかけられ、一瞬心臓が止まるかと思った。
「大丈夫ですか?」
「........あ、ああ」
彼女のことは知っている。
間宮綾子。
成績優秀、スポーツ万能、おまけに大金持ちのお嬢様。
そのくせ性格がよく、周りからかなり親しまれている学校のマドンナ。
それが間宮綾子だ。
「.........ま、間宮さんだよね」
声が裏返っているのは緊張のせいだろう。
なんせ、彼女の顔がすぐそこにあるのだから。
「は、はい。間宮綾子です。.......あの、隣のクラスの吉田君だよね?」
「あ、ああ。....吉田....蓮治」
間宮が頭を下げてきたので、反射的に俺も立ち上がって頭を下げて自己紹介。
俺のこと、知っているなんて。
もしかして、気があるのだろうか?
.........なんて昔の自分なら思えただろう。
学校のマドンナに顔を覚えてもらっているのは、別に嬉しいわけではないのだが。
知っているのは多分、俺が死神だからで。
みんなから恐れられているからだろう。
別に..........悲しくなんかないさ、今更だし。
「.......んんっ....綾?.....ここ何処?」
足元から声がする。
あの小柄な女子生徒が起きたようだった。
「..........!」
「あ、李音ちゃん!」
李音と呼ばれた彼女は俺を捕捉すると、まるでミサイルのように抱きついてきた。
「蓮ちゃーーーーーーーん!」
「うわ!」
「蓮ちゃん、蓮ちゃん、蓮ちゃん!」
「ぎ.......ギブ」
首に手を回され、呼吸が止めれれてしまう。
「李音ちゃん、早く、放さないと!」
間宮の慌てた声を聞きながら、俺は天に召されたのだった。
できれば、感想を。