表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
求める先に  作者: 星葡萄
27/55

第二十六話

 今、コワルスキー博士の真の目的は、自分が作り出したこの“空間”=“異界への扉”を自ら、破壊することだけに意識を集中していた。

 自分が作り出したのは、全てが“魔物”“魑魅魍魎”“混乱”“対立”に過ぎなかった。自分の類稀な能力は、結局はだれかれに利用されただけ。あのTDCは、「永遠の命」を得たいと望み、膨大な研究費を与えてくれた。そして、トーキョーの地下に巨大な研究施設と実験場を提供してくれた。

 けれどもそれは人類に貢献するのではなく、自分達企業の利益のために過ぎなかった。もしくは、自分自身の「永遠の命」……。


 本当はそんなもののために、自分は研究したのではない。

 研究と言う名目で、自分はジョシュアの目をつぶした。大勢の無辜の人々、特に子供達の命を奪った。その屍はるいるいとし、自分の夢の中に常に出てきて、自分を苦しめる。

 そのような犠牲の元やっと作り出したゼロは、自分のクローンでありながら、結果自分の“全て”ではない。肉体的にはクローンではあるが、精神構造はまったく別の“固体”に過ぎなかった……完全な失敗作。そう! 完璧なものは、この世には無いのだ。


 自分は“女”を捨て、“正義”を捨て、そして「永遠の命」という命題も捨てた。後に残るのは、復讐だけ。TDCに、そしてゼロに、自分自身に。それから、これが最も重要な事柄だが、もう一つの“絶対的なある物”に!

 それが出来たら、もう自分の命を捨てても惜しくは無い。ES細胞の成功など、最初からなかったのだ。あったのは、自分の“幻”だけだった。そう、それは幻影……。

 ゼロの所に行かなければ、ゼロを破壊し、そしてその背後にある物も破壊する。


 あの恐ろしさを教えてくれたのは、サマンサだった。あの、ウィルの妹。彼女を救いに、自分は今行くのだ! 後の者たちなど、もうどうでもいい。彼女さえ救えば。


「2014年ネット新聞配信か……。これでよしっ、と」 

「ってそこまで書いていいのかしら、ゼロ?」

「だって、それ、ほんとうだもん」

「あらあら」

と悟は、首をかしげながら、それでもフフフと意味ありげに、微笑んだ。

「狙いはなに? ゼロ? コワルスキーの抹殺? それとも」

「全部は言わないでよ、サトル」

 ゼロは優牙との口付けを微かに思い出しながら、舌をペロリと出した。

「あたしの目的は・・・・・・永遠の命を欲しているもの全てを滅ぼすこと。永遠の命は、ただあたしだけの物なのだから」

「ふふふ、嫌な子!」

「クローンはお黙りよ!」


 ふふふ、と悟はなおも笑う。

「ねぇ、もうすぐ『異界の扉』が開く頃よ、ゼロ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ