プロローグ
この作品は、交換小説グループ「星葡萄」の第二作目となります。
順番も変更され、世界観なども新たに交換小説が始まりました。
前作を読んで下さった方も、そうでない方も、楽しんで貰えると嬉しいです。
前作とはまた少し違った雰囲気の交換小説をお楽しみ下さい。
地図に存在しない、絶海の孤島。三日月のような、湾曲した半円四つを四方から組み合わせたような島だ。ぶつかり合うように接触した四つの円によって、菱型に近い奇妙な湖が島の中央には存在している。その島の中央には、別の島があり、高い山がある。
島の全長は、一つの先端から対になる先端までが五十キロメートル程度だ。島中央の湖に囲まれた山の土地は直径が約十キロメートルぐらいだろうか。
島は暗雲に包まれ、今にも雨が降りそうな天候だ。だが、雨が降る事はほとんどない。その島は発見された当時からずっとその天候が続いている。山は途中から暗雲に覆われ、山頂は見えない。
その島へと、一隻の船が向かっていた。
船に乗っているのは、島へと集められる百人の人間達。
国籍も人種も性別も年齢も関係のなく、ただ掻き集めたかのような人達だ。
下は十二歳、上は七十歳ぐらいだろうか。
ただ一つ共通点があるとすれば、そこにいる全員が一つの目的のために集められたというだけだ。
島の中央の山頂に存在する『あるもの』を手にした者は、望みが叶うと言われている。何故願いが叶うのか、どう願いが叶うのかなど、誰一人として知らない。
それを手にしたものはいないのだから。
航空機などで上空から山頂に近付いた者は、暗雲から放たれた雷を浴びて全員が命を落とした。
地上には奇妙な生命体が存在し、侵入者を阻んでいる。
ただ、その島に関して残されているのは古い伝承だ。
――資格ある者がそれを手にした時、全てを得る事ができる。
古過ぎる古文書は腐食が進み、山頂に存在するものに関してようやく判別できたのはその一文だけだったのである。
その古文書を解析し、『資格ある者』が探し出された。中には、古文書の内容に興味を示さず、拒否した者もいた。
集められた百人は、古文書を信じた者達である。
誰が古文書を調べたのか、誰が百人もの人を集めたのか、誰一人として知るものはいない。
ただ、一つだけはっきりしているのは、百人それぞれが各々の目的を持ってそこにいるという事だけだ。
島に着いた時点で、全てが始まる。
ルールなど存在せず、周りの全てが競争相手となる。
たとえ何をしようとも、構わない。ただ、『あるもの』を手に入れた者が勝者である。
それが最初に交わされた百人の誓いだった。
――異界の扉。
古文書は、『あるもの』の名を、そう記していた。