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初恋の妹は縁石に立つ作家志望

作者: 歩謝
掲載日:2026/06/04

「梅雨に入ったんだってねー」

唐突に『隣の』少女が言ってくる。

僕は「そうだね」と微笑んで返す。


梅雨に入ったらしい。

だから雨が降っている。

土砂降りではない。


でも、その『梅雨の雨』という状況が、今の僕たちを作っている。


「2人きりの図書館だったらいいなぁ」

とろけるような笑顔。

僕はひきつった笑みで返す。


赤色を点滅させる信号機、

ポツンポツンと立つ街灯と僕の持つ懐中電灯だけが僕らの光、

相合傘をしながら夜の図書館へ向かう。




「おぉ…! 貸し切り状態…!」

キラキラと目を輝かせる幼なじみの少女。


『梅雨で雨の日は3時間延長!』

出入り口にポスターがはられていた。

いつもは6時までだけど、今日は雨だから9時まで。

太っ腹すぎないか?


8時20分くらいの図書館。

利用者は僕と、この子だけ。


「ソファーで横になりながら読める…!」

「ルールは守ろうね?」

「えー。私たちしかないのに」

「ルールだからさ。ね?」

「デートなんだからもう少しはしゃいでもいいのに」

「デート!?」

つい大きな声を出してしまう。


バッ、と職員に顔を向ける。

迷惑そうな顔はしてなかった、ホッと安堵。


「私じゃイヤ?」

カクッ、と可愛らしく首を傾ける。

「お姉ちゃんとが良かった?」

「嫌じゃないよ、全く」

「そ。よかった」

ニパッ、と無邪気に笑顔の幼なじみ。


「よしっ、デート楽しもっと」


…。

そっか、これデートになるのか。

図書館デートか。

夜の、2人きり。


これ以上意識するのは、やめよう。




閉館までいたけど、外に出ても雨は降っていなかった。

梅雨に入ったばかりの6月。


「ふふふっ」


相合傘を断り、少女は縁石の上を笑顔で歩く。

下に落ちたらワニに食べられちゃう、そんなゲームをしているのかもしれない。


僕はさりげなく、


「中学校の図書室もいいよ?」

「学校はイヤ」

「あう」

即察する。


そして、

「私の恋人になるんだったら学校行ってもいいよ?」

小悪魔の笑み。

いつものセリフ。


初恋だったあの人、の妹。


危ない作家志望、

止め方が分からない。






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