不本意な声
「ねえ、本当についてくるの?」
緋花は振り向かずに聞く。
夜のソーシュシティ、ビルの合間を縫うようにして伸びた裏路地。結界のログには出ない、“薄い場所”である。
「この辺で反応があった。今回だけだ」
「ふーん?」
後ろについてくる藍の声は相変わらず抑揚がない。
まったく…と緋花は思う。
「そういえば、隊の人に私のことは言わなかったんだ?」
「…なんで」
「あの日から数日経ったけど周りに怪しい人とかいなかったし。今だって宵野さん一人で来てるじゃん」
「……」
図星である。
「ふふ、ありがとね」
「別に、必要性を感じなかっただけだ。今更火守の生き残りなんて…」
緋花はそりゃそうか、と呟いた。
緋花も守護隊の厄介になるのはごめんなのだ。
すると、結果が揺れた。
それを合図に歪んだ姿の妖が現れた。
緋花は符を握りしめる。
「…また共闘?」
藍も短剣を握りしめた。
「………」
無言は肯定である。
いざ、戦闘……
が、何を思ったのか妖は地面の中へ潜っていった。
「「は?」」
お互いに不本意な声が重なった。
「何これ?逃げられた?なんで?」
「知らない。妖に言って」
緋花は「え〜…」と戸惑う。
とは言いつつ、藍にも現状は理解できていない。
なにしろ妖に関してはまだまだ情報が少ないのだ。
どこから現れたのか、知能はあるのか。
学者や守護隊でも研究は進めているが、いまだにわかっていない。
昔は神だかなんだか言われていたらしいが…
「追えないのか?」
「不可能では…」
ない…ともごもごして言った。
「………」
そこには静かな時だけが流れていた。
「………北の社」
「…そうか」
二人同時に駆け出した。




