赤と青
ソーシュシティーー近代的な高層ビルと古風な街並みが混在する都市。
夜の街は淡い光に包まれ、四方位に位置する社に守られていた。
そのうちの一つ、東の社にゆらりとひかる人影がある。
符術師、火守緋花。赤の符の継承者である。
街のはずれだけあって暗く、ようやく見えるのは緋花が持つ、赤い符がゆらゆらと光を放つだけであった。
「なんか、空気重いなぁ…」
ポツリと呟く。
ふと足元に結界の波動を感じて符を力を込めた。
その波動を感じたのか、木の影から妖が現れる。
ノータイムで妖めがけて符を投げると、妖はハラハラと消えていった。
妖ーー昔は神様のかけらと考えられていたが、今は人間に害しかない。つまりは討伐対象である。
まさか、この結界の揺れの原因はこんなに小さな妖なのだろうか…?
「ここは立ち入り禁止だ」
冷徹な声が背後で響く。
「……えーと、どちら様で?」
緋花は戸惑いながらも目を見た。
冷たい目。今の自分は不審人物なのだろう。視線が痛い。
だが、こちらも警戒するのは変わらない。
緋花の目が赤くひかる。
「都市部守護隊、宵野藍。あなたは?結界の関係者?」
警戒しているのは向こうも同じらしい。
てか、守護隊って…。めんどくさいものに目をつけられてしまったようだ。
守護隊ーー街を妖や脅威から守る隊。政府公式。
緋花とは馬が合わない。
仕方ない、腹を括ろう。面倒ごとは起こしたくない。
「火守緋花、符術師だよ…で、自営業」
彼女は顔を顰める。「自営業の符術師」。怪しい以外何もない。そんなやつが結界周辺を彷徨いていたら尚更。
「なんで民間の術師がここに?」
「なんでって、それが仕事だし?」
お互い一歩も引かない。その意思は感じられる。
でも、嘘は言ってない。本当のことだ。
緋花は符に力を込め、藍は短剣を握りしめる。
そんな膠着状態の割るような地響きがした。
二人の意識が森の奥に集中する。
そこには、先ほどの妖より大きく歪んだ力を持つ妖がいた。
ああ、この結界の揺れはこいつのせいか。
ほぼ同じタイミングで同じ考えに辿り着く。
緋花はいつものように符を展開し、藍もいつものように短剣で切り裂く。
ナイスコンビネーションとは言い難いそれは結果的に妖を倒すことはできた。
……が、警戒心は消えていなかった。




